冬の贄−夢姫(ゆうき)の受難−

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1 悪い遊び

 午後 11 時。塾から戻り、軽い夕食と入浴を済ませ、祖母に挨拶をして自室に入る。宿題は学校で済ませてきているので後は就寝まで自由だ。待ちに待った時間が今日もやってきた。ノート PC を立ち上げ、まずは両親あてにメールを書く。

   こんばんは。ふたりともお元気ですか?
   吹奏楽部の 3 年生が今日で引退して、
   私はフルートパートの新しいリーダーになりました。
   それから、夏休みに書いた作文が県のコンクールで入選して、
   2 学期の終業式の後で全校生徒の前で朗読することになりました。
   毎日忙しくて寝不足気味だけど、元気にしていますのでご心配なく。

 1 行でも 2 行でもいいからその日あったことを報告するように、と与えられた PC である。毎日のメールさえ書けば、あとは自由に使ってよいことになっている。おかげで、部活やクラスで配るプリントを自分のワープロで作れるようになって、とても助かる。
 だが、最も重要なのはインターネット上で思う存分動き回れることだ−−
 高梨夢姫の父は著名な建築家、母はドイツ文学の研究者である。ふたりがちょうど同時にドイツの大学から招聘を受け、 1 年間の予定で日本を離れてから 2 か月。ひとり娘の夢姫は隣町に住む母方の祖母のもとへ下宿し、そこから中学に通うことになったのだった。 80 歳になる祖母はおおむね元気だが、足が少し弱ってきているので、若い夢姫が同居してくれるのを大層喜んだ。
「さて、と…」
 インターネットのブラウザを立ち上げる。祖母はもう就寝しているはずだから、自室で少しごそごそやっていても平気だ。
 いつものように「美少女戦士 VS 淫獣」のサイトに入ると、セクシーな衣装に身を包んだ美少女−−巨大な化け物の群れを前に剣を構えている−−の 3DCG が現れる。
「今日も、来ちゃった…」
 アダルトサイトであり、 18 歳未満は利用できないことになっているが、年齢を偽って入室するのに何の問題もなかった。こんな過激なサイトに子どもがフリーで入れてしまうのは、
「…良くないと思います。ほんとに」
 良い子のフリをして口走ってみるが、もちろん本心ではない。
 このサイトでは夢姫は 18 歳の女子大生ということにしてある。ハンドルネームは「希( NOZOMI )」。ログインすると、

   戦士「希( NOZOMI )」さんが入場しました
   現在の入場者は 戦士 6 名 淫獣 305 匹
*********************************************************************
  戦士 サクラさん(21)…戦闘終了(敗北)。陵辱されています(28匹中15匹目)
  戦士 アイさん(22)…戦闘終了(敗北)。陵辱されています(16匹中9匹目)
  戦士 麻由美さん(23)…戦闘終了(敗北)。陵辱されています(31匹中22匹目)
  戦士 サリーさん(26)…戦闘終了(敗北)。陵辱されています(18匹中10匹目)
  戦士 ユイさん(19)…戦闘終了(敗北)。陵辱されています(44匹中3匹目)
  戦士 希さん(18)…待機中
  168匹の淫獣が待機中
*********************************************************************

「ああ…みんな、倒されてしまってる…」
 戦士の名はよく見かけるものばかりだ。画面の下のほうに戦士それぞれのアイコンがあり、クリックすると彼女たちの「フィールド」を観戦できる。戦闘中であっても陵辱されていても。ここに来たばかりのころは陵辱シーンを“見学”してみたこともあったが、最近はすっかり見なくなった。夢姫の官能が最も高まるのは、自分の分身「希」が陵辱されているシーンだからだ。
 今日も夥しい数の淫獣。見ている間にも淫獣の数は少しずつ増えている。
 夢姫=「希」以外の 5 人の戦士を陵辱できるのは対戦した淫獣だけだから、「待機中」の淫獣のターゲットは「希」だけということになる。「希」が戦闘のフィールドに入ればすぐに襲いかかってくるはずだ。

   希さんに対戦のリクエストが来ました(1):ZETTON
   希さんに対戦のリクエストが来ました(2):GOMMORA
   希さんに対戦のリクエストが来ました(3):TWINTAIL
   希さんに対戦のリクエストが来ました(4):KING-GIDOLA
   希さんに対戦のリクエストが来ました(5):REDKING
   希さんに対戦のリクエストが来ました(6):KING-KONG
   希さんに対戦のリクエストが来ました(7):GUDON

 夢姫がログインするや否や、リクエストが殺到し始める。初めて見るハンドル名もあるが、多くは何度も対戦した淫獣たちである。夢姫がいつもこの時刻にログインするのを待ち構えているようだ。もう何度も「希」を陵辱しているのに、飽きる気配もない。
「私が、ほしいのね?…」

   希さんに対戦のリクエストが来ました(88):TELESDON
   希さんに対戦のリクエストが来ました(89):KELONIA
   希さんに対戦のリクエストが来ました(90):GOMES
   希さんに対戦のリクエストが来ました(91):KEERA
   希さんに対戦のリクエストが来ました(92):NAMEGON
   希さんに対戦のリクエストが来ました(93):DORACO
   希さんに対戦のリクエストが来ました(94):KING-JOE

 画面を見ているだけで眩暈がしそうだ。
「そんな…私ひとりに、いったい何人がかりで襲いかかろうというの?…」
 そんな風に呟いているだけで、欲望が高まってくる−−
 これだけリクエストが来たのに対戦せず返事もしないでは、失礼というもの。
 メッセージボックスを開けて、書き込む。

   ごめんなさい。今夜は様子を見に来ただけです。
   明日早いので、戦闘する余裕がないのです。
   次の土曜にはきっとフィールドに出ますので、今夜は遠慮させてください。
   希より

 こんなことを書けば、ログインしたのはオナニーのためだとばれてしまうのだけれど−−
 美少女戦士たちの使命は、某国の王族ただひとりの末裔である王女を守るため、襲い来る淫獣を撃退すること、となっている。戦士として登録するのは、淫獣と戦い、力尽きて陵辱されることを妄想する女性だ。女性と偽って戦士の方に登録している男もいるようだが、それはまあ本人の勝手である。男性はもっぱら淫獣として、美少女戦士を倒し陵辱する側に登録する。
 数の上では淫獣が圧倒的でも、戦士にも淫獣にも戦績によって格付けがあり、戦力は必ずしも数どおりではない。そして、夢姫=「希」は短い期間にめきめきと戦績を上げ、格付けは既に最上から2番目の「 B 」となっていた。
 美少女戦士にはマイページがある。「希」のページを見てみよう−−
 メイン画像として、バーチャル世界での美少女戦士「希」がポーズを決めている 3D 画像がある。身長やスリーサイズ、股下や足のサイズ、髪の長さや色などを細かく入力すると、サイト運営者がほぼ寸分違わぬアバターを作成してくれるのだ。顔だけは手描きアニメ風だが、似ているとよく言われる某アイドルの名を申告した結果、見ようによっては夢姫自身が戦士のコスチュームを身に纏った姿にも見える。戦闘服は白でまとめてある。
 こうした美少女戦士の 3DCG が戦闘シーンで、そして陵辱シーンでリアルな動きをし、各シーンでの状況に応じて表情まで変化するのだ。残念ながら、まだ声を出す機能はない。いっぽう淫獣の側は、筋肉の塊のようなやつ、全身から触手を発するもの、メカニックなスーツを装着したやつ、等々…とバリエ−ションが事実上無数で、どれもこれも凶暴かつグロテスク。美少女戦士がずっと登録女性との等身大であるのに対し、淫獣は登録男性との等身大から戦績に応じて身体を拡大していき、強者は 3 m 〜 4 m にもなっている。体格的には美少女戦士が絶対に不利なわけだが、それは女性の欲求に沿ってもいるのだから構わないのだ。
 「美少女戦士 VS 淫獣」は立ち上げられて 1 年足らずでアダルト系ではダントツの人気サイトとなっていた。戦闘はキーボードで行うので、 PC の売り上げの復調に貢献したとさえ言われている。
 「希」のページには延べ閲覧者数 368099 と出ており、今もカウンタはじわじわと増えていく。人気者なのだ。
 美少女戦士「希」のプロフィール。

   変身前: 大学生
   年齢: 18 歳  星座: 山羊座  血液型: A 型
   身長: 158 cm  体重: 42 kg  サイズ: B 80 (B) ・ W 56 ・ H 82
   弱点: クリ・太腿・脹ら脛・尻・乳房・乳首・耳・うなじ
   M度: ★★★★★
   アピール: 身体が柔らかいので、異常なポーズを取らされても堪えます
   戦闘能力: 剣★★★★☆/銃★★★☆☆/空手★☆☆☆☆
   戦績: 290 勝 16 敗
   現在のランク: B+

 戦績の「勝」は倒した淫獣の延べの数、「敗」は敗北した回数だ。フィールドに赴けば敗北するまで戦わねばならず、またそのまま陵辱されるので、 16 というのはこれまでに淫獣の群れに陵辱された回数に等しい。
 淫獣は戦士を倒すとポイントが増えて戦闘能力が増し、人気の戦士に優先的に挑戦、倒せば陵辱する機会を得るが、倒されればポイントを失い戦闘能力を減退させられるので、それなりに必死だ。一方、戦士は戦士でその日倒した数が多いほど、倒した淫獣どもからも「報復」としてより過酷な陵辱を受けることになっているが、そもそも彼女らの目的はそこにあるので、やはり戦闘に手を抜くことはない。お互い真剣勝負なのだ。
 人気の高い戦士には、強力な淫獣が先んじて襲いかかってくる。同時に複数と戦うことはないが淫獣は数の上で圧倒的であり、倒しても倒しても次が来る。戦士の武器は無制限に能力を発揮するわけではなく、使ううちに剣は血糊がついて切れ味を落とし、銃はエネルギーを消耗する。使用可能時間は戦士がチャージするポイント数に応じており、有限だ。剣を拭う間、あるいは銃にエネルギーを充填する間は空手で応じるのだが、こちらは戦士の身体のフィジカルなボリュームに依存する。つまり小柄だったり細身だったりすると極めて非力ということになる。
 夢姫=「希」は剣と銃の扱いには短期間で熟達したが、その華奢な体格のせいもあって空手のほうはまだまだだった。おまけに戦闘中にも戦士は淫獣の身体から伸びる触手や毒針で弱点、すなわち性感帯を攻撃され、戦意を喪失させられていくのだが、「希」はわざわざ弱点を多めに設定してある。そのため、剣と銃で何十もの淫獣を倒したあと、空手で防戦を始めるとたちまち戦況不利に陥り、あえなく敗北するのが常である。一瞬のうちに拘束され、複数の淫獣による陵辱が始まる。
 陵辱を受けている間は戦士は自身をコントロールできない。その日そのログインで倒した淫獣のすべての相手をさせられて、やっと解放されるのだ。
 そんな戦闘から陵辱までの一部始終が、随時ログインすれば動画として提供されているのだから、凄い時代になったものである。過去の陵辱シーンの動画も一定量は保存でき、お気に入りのカットを画像として切り取ることもできる。
 夢姫は今日は戦闘をしない。一度フィールドに出たら戦闘と陵辱で何時間も費やしてしまうからだ。ログインしたのは過去の陵辱シーンを見ながらオナニーをするためだった。
 陵辱シーンでの主導権は淫獣にあるので、その時対戦した淫獣の顔ぶれによって毎回変化する。性器の挿入ひとつとっても前から・後ろから、またはアナルファックから選ぶことができるほか、様々な姿勢で戦士の身体を拘束したうえ、舐めることも噛みつくことも自在だ。
 今の夢姫のお気に入りは、先々週の週末に“制作”されたもので、 ZETTON と名乗る淫獣を中心に総勢 28 匹で「希」を犯しているもの。 ZETTON は身長 3 m 。「希」がこのサイトに登場した頃からの「希」のファンで、「希」に対しては 16 戦全勝。毎回機能を強化しては「希」を徹底的に痛めつけている。この動画の再生回数は 120569 回と、サイト内でダントツの 1 位なのだった。
 「希」はすでに体力が尽き、太腿や乳房などの全身の弱点を触手や毒針に狙われた結果、性感を高ぶらせる淫毒の作用に苦しんでいる。身を捩って堪えようとする全身に触手が絡みつき、両腕と両脚は鋼鉄の腕で拘束される。そして左右の脚は 180 度にまで引き裂かれたあげく、股関節を外されてしまった。淫獣たちが戦士を犯すのは自分の性欲を満たすと同時に倒されたことへの報復だから、情け容赦がない。

   希: きゃああああああーーっ!…痛いっ!…いたいいっ!…

 音声は無理だが文字で台詞を付けることはできる。動画を見るたびに“効果的”な台詞を考えては書き込んできた。今日も気持ちの昂ぶるのに任せ、台詞を直したり増やしたりする。淫獣たちの欲情を刺激しているのを承知で−−
 「希」の全身に絡みつき、肌を犯す無数の触手。細いやつが数本クリトリスをしごき、秘裂に侵入して内壁を掻き立てる。

   希: いやっ!…そんなことされたらっ…

 夢姫自身も指で太腿を擦り、クリトリスを摘む。秘裂に指を挿れてみたくなるのだが、怖くてまだしたことはない。

   希: ああっ、だめっ…いくっ!…

 「希」の股間から激しくしぶく潮。
「…あ、むっ…」
 同時に夢姫も達した。声が出てしまった。
 ドクッ、ドクッ…と熱い液体が溢れるのをタオルで受け止める。
 疲れているからだろうか。今日は早かった−−
 やがて「希」の秘部に ZETTON の巨大なペニスが突き立てられる。

   希: あああーーーーーっ!…大きいっ…大き…すぎるっ!…

 そして、背後からは身長 4 m の GOMORRA という淫獣がアヌスを犯しにくる。

   希: やめてっ!…前後から同時になんて、無理っ!…

 ZETTON と GOMORRA が、その巨体に比してあまりに小柄な「希」をサンドイッチにし、太腿をがっしりと掴んでピストンを開始した。

   希: きゃああっ!…裂けるっ…裂けちゃうっ!…

 一度昇り詰めたあともクリへの刺激を止められない。たちまち次の波が来る。
 「希」が上半身をぐんと仰け反らせて絶頂し、また潮を吹く。
「…くっ…」
 歯を食い縛って声を堪える。夢姫もまた達した。
 ドクッ…
 絶頂のときには液体が溢れる。潮を吹いているのだ−−
 「希」のように激しく出してみたいと夢姫は思う。だが、今の拙いオナニーでは駄目なのだろう。
 ZETTON と GOMORRA が射精すると、次の奴らが「希」に襲いかかる−−

 夢姫は小学生の頃から評判の美少女だった。成績優秀、運動神経も抜群で特にダンスが得意。中学進学後は吹奏楽部でフルートを吹き、 3 年生引退とともにパートリーダーを任された。学級対抗の合唱コンクールでは毎年指揮者を頼まれる。教師たちの信頼も厚く、しばしば学級委員に選ばれ、今は学級委員で構成される風紀委員会の委員長まで押しつけられている。普段は吹奏楽部の練習が週に 7 日あり、落ち着いて勉強する暇もないのに、何か行事があれば責任のある仕事が回ってくる。「先生たちより忙しい」と言われているが、どんなに疲れていても笑顔を絶やさない。
 唯一苦手だった英語の成績を上げるため、多忙なスケジュールの合間を縫って塾に通うようになると、英語をはじめ各教科の成績がめきめきと向上。最近の定期試験では数十人をゴボウ抜きにして上位 10 位にランクインした。塾の模試では地域トップの県立東高で A 判定を得ている。
 まさに順風だったが、そんな自分の状況に夢姫はうんざりしていた。「良い子」でいるのに疲れていたのである。
 学級委員などしているために、最近は不愉快なことが多かった。そんな時には精神のバランスを取ろうとするのか、「悪い遊び」をして自分をめちゃめちゃに汚してみたくなる。
 小 6 の時、性欲の高まりに任せてオナニーを覚えた。
 ただでさえ女子の中で目立つ夢姫は、全校生徒の前にひとりで立つ機会が多いため有名だ。写真が男子生徒の間で流通し、夢姫をネタにした卑猥かつ低俗な落書きも校内のそこかしこにあるらしい。そういったことに小学生のころから慣れている夢姫も、自分より身長の高い男子の視線は怖いと思うことがある。その一方で、自分を犯す妄想をしながら大勢の男子がマスターベーションをしていると考えると、夢姫の性欲も刺激されてしまうのだ。
 PC を与えられ、両親の目がなくなれば、「悪い遊び」の場を求めたくなるのも無理はなかった。年齢を偽ってアダルトサイトを物色するうち、このゲームに辿り着いた。自分の分身「希」を淫獣の生贄に供することで夢姫は願望を満たし、かろうじて日々をつないでいるようなものだった。

 動画を追い、新しい台詞をいくつか書き込み、クリトリスを刺激しながら 3 回達した。
 まだ、したい。クリトリスは充血したまま、もっと強い刺激を求めている。秘裂の中も熱く火照り、ねっとりとした愛液が滴っている。
 夢姫の分身「希」は、 9 匹目の GUDON と 10 匹目の TELESDON に貫かれようとしているところだ。

   希: うう…お願い。もう、許して…せめて、少し休ませて…

 このまま続ければ、何度でもいけそうな気がする。いや、何度でもいきたい。本当は、気を失うほどいってみたい。
「…だけど、だめ…」
 動画を止め、ログアウトした。明日も 5 時に起きて朝の練習に行かなくてはならないし、そのあとも帰宅するまで一睡もできない。このところ慢性の睡眠不足がたたって目の下が腫れぼったい。それでなくても最近は朝の冷え込みで起きるのが辛いのだ。眠らなくては。
 ベッドに横たわると心地よい疲労が全身を包み、睡魔が襲ってくる。目覚めればまた、一日が始まる−−

2 依頼

「寒ーい。風つめたーい」
 西園真夕はそう言って、叔父の車に乗り込んだ。午後 10 時、塾が終わるときにはたいてい叔父が迎えに来ている。 11 月も下旬となり、夜の空気は冷え込んでいるが、車内は暖房が効いている。
「もっと暖かいカッコをして来ればいいだろうに」
 真夕は中学 2 年。身長は 153 cm と小柄なうえ、痩せていて胸も未発達だが、肩までの黒髪が自慢の美少女だ。ダッフルコートの下はピンクのセーターにグレーのミニスカート、黒のオーバーニーソックスにローファー。
「コート、着てるけど?」
「脚のことだ。寒いならそんなに露出しなければいいだろ」
「いいじゃん。見せたいんだから」
 真夕の脚は綺麗な曲線を見せてはいるが、まだ子どもの脚だ。筋肉が貧弱なうえ脂も乗っておらず、太腿と脹ら脛の太さがあまり変わらない。だが、孝介にはそれがかえってエロチックに見え、つい指で触れたくなる。
「女の子の脚、好きなんでしょ。触ってもいいよ」
「ガキのくせに、色気づきやがって」
 叔父の魚住孝介は 42 歳、独身。真夕の母の弟だが、両親が再婚したときの連れ子どうしで、真夕とは血縁がない。真夕の父が経営する医院の隣で調剤薬局を営んでいる。
「そのガキに夢中なのはどこのオヤジ?」
「夢中とは失礼だな。ヒマだから構ってやってるだけだ」
 孝介と真夕は半年前から肉体関係にある。幼いころから孝介になついていた真夕は、中学に上がるころ、孝介と血縁がないことを理解すると、両親の目を盗んでいっそう積極的になった。オナニーは 9 歳のころからしているが、中 2 の夏には性欲を持て余し始め、オナニーでは治まらなくなったのである。
『どこかの変な男に犯られる前に、叔父さんにしてほしいの』
 中学生になり、女性らしさを増してゆく姪を眩しく思っていたのは確かだった。請われるままに真夕を抱き、幼い身体には強烈すぎる技巧を凝らして処女喪失の前に 3 度絶頂させた。以来、月に 2 、 3 度のペースで真夕を抱いている。
「そう言えば、女の子たち、みんなお洒落だよな」
 めいめいに迎えの車に乗り込む少女たち。学校帰りで制服姿の娘もいるが、この寒空にミニスカートやショートパンツを履いている子が珍しくない。黒タイツが多いが、赤や青のカラータイツを楽しんでいる子もいる。
 中高生は部活などしていると私服で出かける機会が少ない。少女たちにとって、塾というのは束の間でもお洒落を楽しむ貴重な場であるようだ。
「脚を見せてるほうが、塾の先生もなんとなく優しいんだよ」
「それで授業が円滑に進むなら、結構なことだがな」
 真夕を含め、まだまだ幼い体型の子が多い。そんな少女らが背伸びをして脚線を強調していると、中には痛々しい感じのもいるが、多くは微笑ましいものである。
「おっ…」
 そんな中に、ひときわ目立つ美少女がいた。
 身長は周囲の少女と同じくらいだが、腰の位置が高く、なかなかのプロポーション。ジャケットの下はショートパンツで、この時期にしては薄手の黒ストッキングで脚を包んでいる。その脚は全体に細めだが、太腿や脹ら脛にはほどよく脂が乗って、大人の女の脚線を見せている。顔はやはり幼いながら、少し疲れたような、憂いを湛えた目許が、どきりとするほど美しい。
「綺麗な子だな。中学生の集団にひとりだけ高校生がいるみたいだ」
 そう言うと、
「どの子」
「いま看板の下にいる、ショートヘアでショーパンの子」
「ああ、あれね…」
 真夕の口調が不機嫌になった。
「知ってる子か」
 この塾には複数の中学から生徒が集まって来ている。同じ中学の生徒が集まる所を嫌って来ている子も多いという。
「同じ中学。ていうか、同じクラス。で、小学校から同じ」
「ほう、真夕の同級生にあんな子がいたとはな。名前は?」
 姓は高梨。孝介も名前は知っている、有名な建築家とドイツ文学者の夫婦のひとり娘で、名は夢姫という。
「うちの中学からここに来てるのは私だけだったのに、 2 学期から入ってきた」
「真夕が紹介したわけじゃないのか」
「するわけないじゃん。せっかくひとりで気楽にやってたのに、さ」
 夢姫を 1 秒でも長く見ていたい。脚の動きを追っているとムラムラしてきた。
「目つき、いやらしいんだって。エロオヤジ」
「いや、いい脚だ。きっと自分でも自覚して見せてるんだろう」
「脚のせいかどうかは知らないけど、塾の先生たちのお気に入りだよ」
「だろうな。可愛いし、プロポーションもいい。性格も良さそうだ」
「どうせ私は性格悪いわよ」
 真夕がふてくされている。見ると、涙ぐんでいた。
「どうした」
「…イヤなの」
「何が」
「勉強だけは私が勝ってたんだけど、それも追いつかれそう」
 開業医のひとり娘なので真夕は医学部志望だ。親の押しつけではなく本人が自覚して目指している。地元の公立中では成績上位一桁で、高校は県下トップの県立東高を目指している。
 真夕がプレッシャーと戦いながら寝る間も惜しんで勉強に励んでいる一方、夢姫はそこそこの努力でそれなりの成績を上げているらしい。そこが真夕には許せないのだろうか。
「真夕も可愛いし、よくできるんだから、いいじゃないか」
 機嫌を取るつもりはないのだが、やけに深刻そうなのが気になった。
「学校でも塾でも、何かにつけて比べられるの、イヤなんだってば」
 ふたりとも美少女で、成績もいいから−−そんなところだろう。
 一口に美少女といっても、見栄えは随分と違う。真夕は年齢不相応に性体験はあっても、見かけはまだまだ幼い。だが夢姫は、何か男を虜にしてしまうオーラのようなものを発している。今の真夕では分が悪い。
「小学校からの付き合いなんだろう。美少女どうし、うまくやれないのか」
「無理」
 こういうとき、真夕は何を言っても反発する。
「あんな良い子ぶりっこ、私とは絶対に合わない」
「対照的な性格というわけだな。プラスとマイナスか、 N と S か」
 そう言うと、
「それって、フォローしてくれてるの?」
 恨めしそうな顔を向けてきた。
「面白くない」
「真夕のそういう良い子ぶらないところが、俺は好きだけどな」
「比べられるのよ。夢姫はこうなのに、真夕はこうだ…って」
 不意に孝介の胸に顔を埋め、泣き出した。人目につくと面倒だ。真夕の髪を撫でてやりながら、車を発進する。
 真夕が泣いて憤っている直接の理由は、男だった。真夕が密かに恋焦がれていた男子が夢姫にアタックしたのだという。背の高い、バスケ部のキャプテンだそうだ。
「お前、俺とヤッてるくせに好きな男子もいたわけ」
「叔父さんにはセックスを教わってるだけじゃん。恋愛は恋愛よ」
 そんなものか。だが、医者を目指すならこのくらいしたたかなほうが良い。
「あの女と一緒に学級委員やってるの。返事は『ごめんなさい』だったらしいんだけど」
 そうだろうと思う。美少女であるうえ、精神年齢が高そうだ。その辺の中学生では相手にならないに違いない。
 それにしても、ついに「あの女」呼ばわりとは。
「良かったじゃないか。今その彼に告ったら落とせるんじゃないか?」
「イヤよ。それじゃ、あの女のお下がりを貰うみたいじゃない」
 そうこうするうちに真夕の家に着く。両親とも不在らしく、灯りは消えている。
「叔父さん…後で行くから、して」
 セックスのことだ。漸く泣き止んだと思ったら−−
 どうやら、厭なことがあると性欲が高まるようだ。
「ふたりとも、留守なのか」
「お父さんは学会で出張、お母さんは同窓会で帰省。いくら叔父さんが隣に住んでるからって、ひとり娘を放ってさ。ひどいよね」

 思いがけず、真夕は“正装”して現れた。
 最初は中学の制服のように思ったが、もっと洗練されている。自分でアレンジしたのだろう。濃紺のブレザーにグレーのミニスカート。純白のブラウスにワインレッドのネクタイ。脚は黒ストッキングに包んでいる。
「コスプレか?」
「うん…叔父さん、好きでしょ。制服も、黒ストも」
 何かおねだりしたいことでもあるのだろうか。妙にかしこまっている。
「俺に抱かれるために可愛くして来たわけか。良い子だ」
「ありがと」
 隣に座って身を預けてきた真夕に軽くキスをし、髪を撫でる。入浴を済ませてきたらしく、石鹸の香りがする。それが真夕の甘い体臭と混ざって情欲を煽る。
 真夕は顔立ちも身体も幼いが、孝介にとっては宝石のように愛しい。この姪が自分に抱かれたがっているうちは、恋人は要らないと思う。
「叔父さん…」
「何か頼み事でもあるのか?」
 顔を上げた。図星のようだ。
「…あいつ…夢姫を、犯してくれないかな」
「え」
「そういうの、やってるって言ってたじゃない」
 依頼を受けて女を陵辱する「犯し屋」。孝介と仲間の副業だった。
 仲間というのは、普段はインディーズのアダルトビデオを制作している。男優兼スタッフというわけだ。孝介はその社長・猪狩と親しかったのと、薬剤の扱いで相談に乗ったりするため、いつの間にかメンバーになったのだった。
 ビデオ会社の HP で「女優募集中。素人歓迎。自薦・他薦を問わず」と、それとなく受け付けてはいるが、依頼はほとんどない。あっても普通は女のほうからで、陵辱される願望があり、そのビデオを撮ってほしいという「自薦」だ。費用は依頼者の負担だが、引き受けるかどうかは女優しだい。いくら積まれても勃たないものは無理なのだ。
 男からの依頼では、女がそれを承知していることは少ない。フラれたり捨てられたりした腹癒せというのがほとんどだ。そちらは無理なく実行することが可能で、かつ女が告訴する心配のない場合しか引き受けない。
「それはそうだが、親と一緒に住んでる娘は無理だな」
「いま両親ともドイツに行ってるんだって。それで隣町のお祖母ちゃんのところにステイしてるって」
「同じことだ。行方不明になったらすぐ警察が動くからな」
「それがね」
 早く話したくてたまらないという様子だ。
「そのお祖母ちゃんは毎週週末だけ入院するそうなの。そのとき夢姫は自分の家にひとりで帰ってるんだって。家の地下には広ーい防音ルームがあるらしくってね、そこで吹奏楽の子たちと練習したりすることもあるんだって。吹奏楽の知り合いが教えてくれた」
 高梨夢姫は吹奏楽部の部員らしい。言われてみれば、楽器のひとつくらいはこなしそうである。
「つまり、家にひとりでいるタイミングを狙って侵入すればいいってのか」
「日が暮れてからなら大丈夫だと思うの。どう?」
「友達が泊まりに来てたりするんじゃないか」
「それはないらしいの。土曜の夕方までは誰か遊びに来ていることはあっても、そのあとはひとりで閉じ籠もるんだって。自分では『引き籠もる』って言ってるそうよ。学校ではいろいろ忙しいから、ひとりきりになりたいんじゃないか…って、知り合いは言ってたけど」
「ふうん。食事とか、どうしてるんだろう」
「簡単なものなら料理も自分でするんだって。遊びに来た子には作ってあげたりもするんだって。いちいち癪に触るわよ、ほんと」
 真夕は料理も裁縫も全くだめなクチである。
「引き籠もるって言ったが、何をしてるんだろうな。実は猛勉強してたり、な」
「それなんだけど…私だったら…」
 真夕は少し言い淀んだが、
「オナニー…すると思う。思いっ切り」
「ほう」
 確かに、“引き籠もる”という表現に、ある種淫靡なものを感じないではない。
「中 2 くらいの女子ってのは、そんなに溜まってるもんなのか」
「私は毎日しないとダメ」
 真夕は別格のような気もするが−−夢姫のあの見事な脚線を思い浮かべると、確かに性欲も旺盛であるような気がしてくる。
「お祖母ちゃん家では、気が済むまでとはいかないだろうしな」
「あいつがどんなオナニーをしてるのか、ちょっと興味ある」
 孝介も同感だ。高校生だと言われても疑う気にならない、セックスアピール十分の、中 2 の美少女のオナニー。もしかしたら、真夕も真っ青の濃厚なやつをしているのかも−−
「話が逸れた…で、あの子が家にひとりでいるところを襲えというが、建築家の父親が設計した自宅だろう。セキュリティ万全だろうな。下手にピッキングしたり窓を破ったりはできないぞ。けっこう難度が高い」
「だよね。だから、私が動く」
「お前が?」
「あいつ、吹奏楽でフルートを吹いてるの。だから、私も買ってもらう。フルート」
 真夕の計略がわかってきた。
「で、一度誰にも聞かれないところで教えてほしい、って頼むつもり」
「ははあ…」
 子供ながら考えたものだ。
「途中でトイレを借りる。そのとき 1 階のどこかの窓を開けるから、入って。少し時間が空くけど、私が帰って夢姫ひとりになるまで隠れててくれれば。どう?」
「お前、あの子にそうやって接近できる関係なのか」
「表面上はうまくやってるの。小学校から一緒だから」
 奈落の底に落としたいほど憎んでいるのに、そんな立ち回りができるというわけか。末恐ろしいことだ。いや、女の子というのはこんなものなのか。
 真夕が目を輝かせて孝介を見ている。
「…できるかも知れんが、だめだ。中学生を犯るわけにはいかんよ。 18 歳未満お断りだ」
「どうして。私は良かったわけ」
「お前は自分で求めてきただろう。俺にされただけだし、ビデオも撮ってない」
「叔父さんだって、あいつを犯してみたいんじゃないの?」
「そんな気にもなりかけたが、俺はお前がいれば十分だよ」
 真夕はしばらく黙っていたが、
「お願い…私、何でも言うことを聞くから」
 カーペットの上に降りて、しおらしく正座する真夕。
 諦める気はないようだ。思えば幼い頃から、こうと決めたら頑固な子だった。
 高梨夢姫は孝介としても食指が動く標的ではある。全く、真夕といい、夢姫といい、 13 歳とか 14 歳の子どもを相手にどうしてしまったのかと思う。
 そして今、目の前でかしこまっている可愛い姪を見るうち、無性に情欲が高まってきた。
 真夕は、セックスに慣れてきたとはいっても、まだ指折り数えるほどしか経験はない。華奢で幼さの残る肢体は息を吹きかけるだけで声を漏らすほど敏感で、そんな全身の肌を隈無く味わったあとでクンニリングスを施せば悲鳴を上げながらたちまち絶頂する。このごろは挿入された状態でも−−つまり、中でもいけるようになった。セックスの味を覚え、以前は十分に知らなかった自身の性感帯を把握するにつれ、日ごとのオナニーでも深い快楽を求めるようになったのだろう。短ければ数日、長くても 2 週間と開けずに交われば、毎回新鮮な反応を見せる。孝介が夢中だと真夕は言ったが、その通りだった。
「真夕」
 真夕が本気なら、その本気のほどを試してやろうか。
「きちんとお願いしてみろ。お前次第では検討してみてもいい」
 真夕は両手をつき、頭を下げた。この我儘娘にしては上出来だ。
「…お願いします。高梨夢姫をレイプしてください」
「俺がひとりで犯せばいいのか?」
 はっと顔を上げ、また伏せた。核心に触れたようだ。
「できれば、大勢で…めちゃめちゃにしてやって。ビデオも撮って」
 声が震えているのは、それがどんなに酷いことかを承知しているからだろう。
「『犯し屋』が総勢で、 AV 制作もコミで襲うとなると、 SM 輪姦だ。わかるか」
 真夕のおとがいに手を掛けて視線を重ねた。 輪姦はもちろん、 SM もわかるはずだ。瞳に怯えが浮かんでいる。
「縛り上げて身体の自由を奪い、お前には想像もつかない性の拷問を加える。悲鳴と愛液を絞り取ったあげく、全員で犯す。一晩じゅう、一瞬たりとも休ませずに、何十回も犯し続ける」
 真夕の呼吸が乱れている。こんな言葉で昂奮するのだから、やはり幼い。
「しかも、夢姫は間違いなく処女だろう。初体験が SM 輪姦ということになる」
 次の言葉を待っているかのように、真夕は無言だ。
「真夕、自分の処女喪失のときを憶えているな」
「…はい…」
「お前が苦しまないように、丁寧にしてやったつもりだが、どうだった」
「…叔父さんは…上手にしてくれたと思うけど…痛くて死にそうだったわ…」
「俺のものは日本人としては並のサイズだが、それでも死ぬほど痛かったんだろう。『犯し屋』にはもっとでかいのを持ってる奴が多い。処女喪失の相手がそんな奴で、しかも大勢いたとしたら、どうなんだ」
 絶句している真夕。
「それだけじゃないぞ」
 真夕のか細い両手首を後ろに回して、ひと纏めにつかみ、ねじり上げる。
「あうっ」
「縛り上げられる自分を想像してみろ。こんな具合に腕の自由を奪われ、両脚は酷いほどに引き裂かれている。男たちは代わる代わるではなく、一斉に襲いかかってくる。お前は全身が敏感だが、その全身の性感帯を一度に貪られる。オイルを塗られ、電気振動のオモチャで責め立てられる。快楽を通り越して、性の拷問そのものだ」
 耳に息を吹きかけるように言うと、真夕の全身がびくびくと跳ねる。
「…あっ…あっ…」
「お前は夢姫をめちゃめちゃにしてくれと言った。いま俺が言ったようなことを考えてのことか」
「…そこまでは…」
「具体的には何も考えていなかった?」
「…はい…そうです…」
「嘘をつけ」
 真夕の両腕を後ろ手に戒めたまま、縄で手首を縛り上げた。
「…あっ!…い、いやっ…」
 こんな風に乱暴にするのは初めてだ。真夕の呼吸が乱れている。
「どんな気分だ、真夕」
「…く、苦しくて…恥ずかしい…」
「俺たちを夢姫にけしかけようとしているが、それは自分の願望でもあるんじゃないのか、真夕」
 かっと目を見開く。
「図星か」
「…そ、そんなこと…」
 残酷な企みをするやつに、残酷な仕打ちをしてやるのも一興だ。
「同級生を奈落の底に落とす前に、まず自分が地獄を味わってみろ。幸いにして、お前はもう処女喪失を済ませているしな」
 孝介が携帯を取り出すと、
「…まっ…待ってっ!…まさか、これから?…」
「そうだ。パパもママも明日の夜まで留守なんだろう」
「…だめっ…私、心の準備が…」
「心の準備なんぞ、されたらつまらないんだよ」
 後ろ手に縛った縄尻を掴んで、立ち上がらせる。
「何でも言うことを聞くと言ったよな」
「…でっ…でも…」
「往生際が悪いぞ。みんながお前を気に入れば、夢姫の件も検討するし、その費用は負けてやる。この世のものとは思えない苦しみだろうが、まあ、お前はそれを楽しむだろうぜ」

3 同級生

「ねえ、音楽室を使える日って今日が最後なのよ。練習に来て」
 大柄な男子生徒 3 名を前に、説得にかかった。
「うるせえな」
 5 分後に最後の全体練習を始めなくてはならない。参加する様子のないこの連中をいつまでも放っておくことはできず、ピアノ伴奏の子に発声練習を頼んで校内を探していたら、やっと見つけた。
「お歌の練習なんざ、馬鹿馬鹿しくてやってられねえよ」
「歌いたいやつで勝手にやってろや」
 口々に荒っぽい台詞を吐いて威嚇してくる。やがて取り囲まれた。
「…ちょ…何?…」
 へへへ…と下卑た笑いを漏らし、にやつきながら見下ろしてくる。
 体育館裏の、人気のない場所。 3 人と夢姫のほかには誰もいない。
「ちょっと、何するの?」
 夢姫の声色を真似て、反復する奴。それを聞いて笑う奴。
「何もしねえよ、ばーか」
「ガッコの中では、さすがにまずいだろ」
 学校の中でなければ、何だというの−−
「ああ?…それとも、何か期待してんのかよ。高梨」
 怖い。暴力を振るわれないとも限らないのはもちろん、それ以上の仕打ちを受けそうな気もする。脚が震える。
 淫獣に取り囲まれたら、こんな感じかしら−−
 そんな思いがふと脳裏をかすめたが、すぐ現実に戻った。
 どうして、私は−−
 こんな連中と同じクラスなんだろう。どうして学級委員など任され、あまつさえ合唱コンクールの指揮者まで押しつけられているのだろう。
 公立中学には、こんな奴は必ずいるものだろう。入学後の緊張が解け、高校受験までも間がある中 2 に多いと聞く。そんな連中でも、小学校が同じだった者は夢姫に辛く当たったりはしない。中学で初めて一緒になった、別の小学校の出身者が問題だった。
「お願い。本番ではみんなと一緒に歌うのよ。少しでも曲に慣れてほしいの」
 “お願い”する筋合いではないが、やむを得ない。
 ところが−−
「ホンバンだってよ」
「俺は高梨とホンバンしたいねえ」
 何を言われているのかわかって、顔が熱くなった。
「おおい、赤くなったぞ。ホンバンって何だか知ってんだな」
「ばーか。こういうことは女子のほうが進んでるんだって」
「それじゃ、教えてもらおうぜ」
 どうしたらいいの−−
 怖くて、情けなくて、悔しくて、つい涙が滲んだ。
「おい、泣いちゃったぞ。だめだろ、からかったら」
「どこか暗いところへ行こうか、高梨。たっぷり慰めてやるから」
「お歌の練習なんぞよりずっとイイことをしようぜ」
 物のはずみということもあるだろう。女子を取り囲んで淫猥な雰囲気になったせいもあるだろう。ひとりが夢姫の手首を掴んだ。
 どこかに連れ込まれる予感がして、思わず振り払った。
「やめてよ!」
 そして、そいつの頬を思い切りひっぱたいた。
「なんだよ」
 こんどは 3 人が手を伸ばしてきた。あまりのことに声も出ない。
 そのときだ。
「何やってんのよ」
 聞き憶えのある、よく通る声がその場を鎮めた。西園真夕だった。
「なんだ、西園じゃねえか。邪魔すんな、チビ」
 真夕がつかつかと近づいてくる。手にはソフトボールの金属バット。
「頭を割られたくなかったら、夢姫から離れなさい」
 信じられないものを見ている気がしていた。夢姫が知っている大人しい真夕とは別人のような、凄い迫力。
 先端を顎に突きつけられた少年が離れると、残り全員が続いた。
「今のは写真に撮ったからね。今度夢姫に変な真似をしたら、警察に届ける」
 持ち込み不可のはずのスマホを見せつける。 3 人が 3 人とも夢姫の腕を掴んでいる証拠写真。
「わかった?お馬鹿さんたち」
「あ、ああ…わかったよ」
「この場で先生にメール送信してもいいんだよ」
「わかったって」
「じゃ、夢姫に謝りなさい。はい、土下座して」
 顔を見合わせている 3 人。真夕がバットを振るい、全員の尻を打った。
「うわ」
「早くしろって言ってんのよ。次はアタマ、いこうか」
 3 人が地面に膝を下ろす。
「はい、両手をつく。お前ら、頭が高いんだよ。早く!」
 バットで頭を小突かれて、全員額を土につける。
 真夕はひとりの頭を上靴で踏みつけながら、
「何を黙ってんの!すみませんでした、お許しください、だよ」
 怒鳴られて、言われるがままに復唱する 3 人。
 これがバットでなくて鞭だったら、女王さまだわ−−
 感心して見ているうち、涙も乾いていた。
「随分時間を無駄にしたけど、合唱の練習にも来るんだよ。立って」
 真夕が連中を後ろから追い立てる。続いて歩いていくと、
「大丈夫だった?」
 夢姫の顔を少し見上げる恰好で、真夕が気遣ってくれる。
「うん…ありがとう」
「こいつらの相手をまともにしたらダメだって」
「…でも」
「学級委員だもんねぇ。こんな連中の面倒も見させられて。ほんと、先生たちも夢姫に頼りすぎだと思うわ」
 ふだん重荷に感じていることをさらっと言われて、また涙が出てきた。
 長い付き合いなのに、こんなに強くて優しい子だったなんて、知らなかった。
 美少女どうし、などと周囲に言われてお互い牽制し合っているところがあったはずだけど、夢姫のほうが真夕を遠ざけていたのかも知れなかった。
「そういえば、もう片方の学級委員の男は、肝腎なときに何をやってんのかしらね…ああ、欠席してるのか。女の子に振られたんだって?それで?…あはは。馬鹿よねー、もしかしたら夢姫にいいとこ見せられたのにね」
 そいつを夢姫が振った件は学年中が知るところとなっている。その気まずさも真夕が吹き飛ばしてくれたような気がした。
「真夕、ありがとう」
「いいのよ」
「それから、これまで、なんだか遠ざけていたみたいで、ごめん」
「お互い様よ。塾でも一緒になったもんね、仲良くしようよ。高校も東高、一緒に行こうよ」
「ありがとう。私もできることがあったら、するから」
「いいよ、夢姫は先生たちより忙しいじゃない」
 20 分もロスをしたが、おかげで合唱の練習は上出来だった。学級委員としても、指揮者としても、夢姫は面目を保った。

 放課後−−
「ご苦労さま。なかなか良い味出してたよね。ああいうの、慣れてるの?」
 真夕が 3 人に“報酬”を渡している。入手至難のアイドルグループのコンサートのチケットだ。
「まさか」
「俺ら、そんな不良じゃないしな。問題児だろうけど」
「でもさ、 3 人で取り囲んだとき、本気で犯っちまいたくなったよ」
「俺もだ」
「普段は高梨に話しかけることもないしな」
「話しかけられることは、もっとないな」
 ぎゃははは…と無邪気に笑う少年たちを、真夕は冷ややかに見ている。
「でもさ、西園。なんでこんなことをしたんだ」
「うん?夢姫と仲直りしたかっただけ。深く考えないで」
「それだけ?」
「他に何かあると思う?私が男だったらありふれた手口だけどね」
 そうか…と、あまりにも捌けた真夕の口調に少年たちは納得させられる。
「あんたたちも今日ので夢姫と話しやすくなったでしょ。同じクラスなんだから、仲良くしてもらえばいいじゃん。あんな可愛い子と知り合う機会なんて、この学校に来てなかったらないでしょ」
 こんな姉御肌の女子だっただろうか−−と少年たちも訝しく思っていた。
 美少女だし、勉強はできるが、特にほかのことで目立つ存在ではなく、まさに夢姫とは対照的だったのだ。
 この少年たち、そして夢姫、そして同じクラスの者、そして教師たち−−
 皆が皆、このところの真夕の変貌ぶりに目を見張っていた。
 何か、性格を変えてしまうような大きな出来事があったのだろうかと。
 誰が知るよしもないのだが−−その通りだった。
 孝介を訪ねたあの夜、後ろ手に縛られたままコートを着せられ、『犯し屋』のアジト、つまり AV 制作会社のスタジオに、真夕は連れ込まれた。
 急なこととあって、到着したときに待ち構えていたのは 2 人。だが、 14 歳の美少女が生贄というのは彼らとしても初めてのことである。社員たちが用事を中断して続々駆けつけ、最終的には 15 名にもなってしまった。
 孝介は、訳あって自分が開発中だとは伝えたが、姪とは言わなかった。年齢を考慮しての手加減はあるとしても、それ以外の遠慮は一切なしとするためである。無論、真夕の口からも孝介の姪だとは言わなかった。言ったところで、 SM 輪姦を望んだと思われている以上、無駄だと思ったのである。
 小柄で華奢ながら脚が長くバランスの良い真夕の肢体は、手練れの男たちを十分に魅了した。そして、消え入りそうな悲鳴と、堪えきれない快楽に喘ぐ声は、成人の女にはないものだった。 14 歳の小娘など弄んでもつまらないだろうと初めは高をくくっていた者たちも、技巧の限りを尽くして真夕に泣き声を上げさせることに熱中していった。
 連れ込まれたときの“制服”姿のまま、後ろ手に縛られた状態で天井から吊るされ、全身をまさぐられた。首筋に、胸に、脇腹に、そして脚に、何十本もの指が這い、揉み込んでくる。それだけで敏感な真夕は呼吸困難に陥った。ほんのウォーミングアップに過ぎないその責めで、 30 分間に真夕は早くも 3 回絶頂し、足許を愛液で洪水にして男たちを狂喜させたのだった。
 やがてスカートを落とされ、黒ストッキングを引き裂かれ、ショーツを切り取られて、数本の電気按摩機を秘部に見舞われた真夕は、悲鳴とともに盛大に潮を噴き上げて失神。水を浴びせられて覚醒したのちも電マの責めは続けられ、続く 30 分でさらに 7 回も絶頂。完全にのびてしまったのだった。
 着衣を脱がされ、今度はベッドに四肢を広げて縛られる。一点のシミも弛みもない若過ぎる身体に 熟女を相手にするのに慣れた男どもは色めき立った。真夕の小さな身体に 15 名の男が群がり、剥き出しになった全身の性感帯に指を這わせ、掴み、吸い、舌を這わせ、そして噛む。唇も奪われて、悲鳴を上げることはおろか呼吸もままならない状態で、真夕は悶え苦しむ。太腿の間の泉が放っておかれるはずはなく、全身を貪られながら交代でクンニリングスを施された。
 孝介ひとりに抱かれるときでさえ、クンニをされればその激しい感覚に泣きじゃくる真夕である。そんな性の拷問に堪えられるはずもなく、数え切れないほど昇り詰めては気絶した。 15 人全員がクンニを終えるまでには 20 回以上も達したのだった。
 すっかり生気を失った真夕は改めて後ろ手に縛られ、輪姦に供される。
 すると−−
 最初の男に挿入されるや否や、真夕は再び切ない喘ぎ声を漏らし始めたのだ。プロの陵辱者たちの手にかかれば普通の女は正気でいられない。まして幼い真夕はひとたまりもなく、ひとりが射精を終えるまでに−−無論、コンドーム着用だが−− 2 度も 3 度もいってしまう。
 再び情欲をそそる反応を見せ始めた真夕を、男たちは容赦なく犯し続けた。小柄な身体には酷いほどの巨根も真夕は受け入れ、その持ち主を感心させた。結局、孝介を含む 15 人によって 2 巡と少々、合計 37 回犯されて、真夕はようやく許されたのだった−−
 そんな修羅場を経験すれば思考から立ち振る舞いまで変わるのが当たり前だった。プロの陵辱者たちに魅力を認められ、技巧の限りを尽くして蹂躙されたことが、女としての自信を真夕にもたらした。中学の不良ごとき、怖くもなんともないわけである。

「そろそろ出てくる」
 午後 9 時 50 分。車で真夕を迎えに来た孝介は、視線は塾の玄関に向けながら、後部座席の同乗者に話しかけた。 12 月に入り、今夜も冷え込んでいる。
「真夕が 14 歳でその子は 13 歳か。うちの仕掛けはどちらかといえば熟女が多かったのに、なんだか一気に路線が変わったわい」
「社長が依頼を受けてくれればの話だがね」
「あんたが一目惚れするほどの子なんやろ」
 185 cm 、 100 kg の巨体を屈めてフロントガラスに食い入るのは、『犯し屋』の首領・猪狩だ。本業は AV 制作会社の経営なので、社長と呼ばれている。
「綺麗な子でね。中 2 に高校生がひとり混ざってるような、雰囲気のある子だ」
 夢姫が現れるのは孝介も待ち遠しい。
「顔立ちはどちらかといえば幼いんだ。目許かな…いつもは眼鏡っ子だが、こないだはコンタクトを入れていたのか、素顔を見せていてね。吸い込まれそうな、整った美貌だったよ」
「早く近くでじっくり見てみたいもんやな」
 くっくっ…と、噛み殺したような笑いを漏らす。
「他のメンバーもほぼ乗り気だって?」
「ああ…こないだの真夕が良すぎたな。全員ロリコン街道まっしぐらよ」
 真夕のおかげで、男たちはローティーンの少女を嬲りものにする快楽を覚えてしまった。
「自ら生贄になった理由が同級生を陥れるためだったとは、恐れ入ったよ」
「あの後、真夕に訊いてみたんだ。気が変わったら取りやめるぞ、ってね。あれだけの目に遭えば、今回の依頼がどれだけ非道いものかわかっただろうから」
「それで?」
「気持ちは変わらないそうだ。むしろ、もっと過酷な目に遭わせたいとさ」
 そんな会話をするうちに午後 10 時を回った。ほどなく玄関が空き、見送りの講師が出てくる。
「ははあ…たしかに、少女たちはお洒落やな。イケてるかどうかは別として」
「真夕と夢姫は超イケてるから…お、出てきた」
 中学校での一件以来、真夕と夢姫の距離はぐっと縮まった。今日も一緒だ。真夕はミニスカートにワインレッドのタイツ、夢姫は濃紺のショートパンツにチャコールグレーのタイツで、それぞれ自慢の脚を演出している。
「むう」
 猪狩は双眼鏡を手に夢姫を観察する。舌が動き、唇を湿らせている。
「想像以上やな…あんたの言うとおり、高校生だと言われても信じてしまうわい。あれで 13 歳か」
「そうなんだ」
「いや、綺麗な子やなあ…それに、あの脚はどうや。真夕の脚もいいが、美脚のレベルが違う」
 いつもなら、真夕は孝介の車を見つけて駆け寄ってくる。夢姫は迎えがないので、タクシーを拾って帰るのが常だった。ところが、今夜は二人してこちらへ近づいてくるではないか。
「こっちへ来るぞ」
「たぶん、叔父さんが送ってくれるから一緒に帰ろうよ、ってなとこだろう。夢姫もお言葉に甘えたと」
 真夕は夢姫と表面上、意気投合したようである。
「俺はどうしよ。ここで面が割れるわけにはいかんな」
 狼狽える猪狩。
「面もだが、体格に特徴がありすぎるからな。“当日”の主犯格が真夕の知り合いだったとなると、真夕の差し金だとバレてしまうだろ」
「わかった。降りるわ。ちと残念やが」
「夢姫を送ったらここへ戻ってくるよ。うちとは逆方向だから」
「頼む」
 いま右後部座席のドアから降りればふたりには見えない。間一髪というタイミングで二人が来た。
 真夕が助手席のドアを開ける。
「よう。おかえり」
 孝介は落ち着き払って迎える。
「夢姫ちゃん、送ってあげてくれるよね?」
「ああ。いいとも」
 真夕の横にいる夢姫と視線が合う。
「初めまして、高梨です。すみません、お言葉に甘えていいですか?」
「もちろんだ。寒いだろうから、早く…」
 夢姫を助手席に乗せたかったが、それは変だ。助手席は真夕だろう。
「後部座席へ」
「ありがとうございます」
 夢姫が左後部座席に腰掛け、ドアを閉めた。振り向けば顔を合わせられる。
「夢姫はね、南町のお祖母ちゃんちにステイ中なの。この道をまっすぐ行って」
 真夕が孝介に言うと、
「すみません。お願いします」
 夢姫も続く。ソプラノの、いい声だ…と感嘆しつつ、孝介は車を発進した。
「真夕がお世話になっているよね」
 信号待ちで、振り向いて言う。孝介も夢姫を至近距離で見るのは初めてだ。
 間近に見ると、つくづく美しい娘だった。目許、唇、うなじ、と、暗い車内で見ても吸い込まれそうである。惜しむらくは、至近距離にいるというのに、視線を下げて夢姫の美脚に向けるのが憚られることだった。
「私が助けてもらうことのほうが多いです」
と、夢姫が言うと、
「何言ってんの」
と、真夕。
「先生たちも夢姫がいろいろやってくれるのに甘えちゃっててね…学級委員に風紀委員長に、吹奏楽のパートリーダーで、合唱コンの指揮者でしょ。あと何だっけ…終業式では作文の朗読もすることになってて」
 真夕が饒舌なのはいつものことだが、孝介に情報提供するかのようである。
「夢姫は学校一忙しいの。ダンスが上手で、運動神経抜群で、勉強だって時間がもっとあったら学年トップだと思う。すごく可愛いしね」
 真夕の台詞には夢姫を追い詰める鋭い刃がちらつくようだ。
「やめてよ、真夕…そんなことないんです。お恥ずかしいです」
 真夕の口調がきつめで夢姫は戸惑っている。その掛け合いを孝介は楽しんだ。
 そうするうちに、夢姫の祖母の家に着く。深々とお辞儀した美少女は、孝介の車が角を曲がるまでずっと見送っていた。
 そのまま引き返し、コンビニで時間を潰していた猪狩を拾う。
「よう、真夕ちゃん。今日も可愛いな」
 先まで夢姫が座っていた左後部座席に乗り込むと、車体が傾くようだった。 「こんばんは、社長さん。今日も大きいね」
 陵辱者集団のリーダーである猪狩を、真夕はもう恐れてはいない。
「あいつを叔父さんに見せようと思ったの。降ろすことになっちゃって、ごめんなさい」
「ええよ、ええよ。むしろ上出来よ…で、どやった」
 孝介に話を振る。
「参ったよ。礼儀正しくて、いい子だ。よく出来上がってる、というべきか」
 少し間があって、
「生贄としては申し分ないが、俺はなんだか気が咎めるよ」
「おいおい」
「いや、だからかサディストの血が騒ぐところもあるんだ」
「叔父さん、あいつに惚れちゃだめよ」
 真夕が口を挟む。
「いや、無理もないで。あの子がここに座っていたと思うだけで俺もいまビンビンよ。いやはや」
 猪狩と孝介が口々に夢姫を愛でるのが、真夕は面白くない。
「男って、あいつに会うとみーんな惚れちゃうみたい。いいオヤジがまだ 13 歳の子どもを前にして、鼻の下を伸ばしちゃってさ。何なの?」
「面目ない」
 男全員を代表する気はないが、孝介も猪狩もその一例だ。返す言葉がない。
「例のこと、実行してくれる?」
 猪狩に訊く。
「ああ、引き受けよ。あの娘なら若さも美貌も申し分ない。“いじめて”オーラもたっぷり出とるしな。存分に嬲り抜いて、悲鳴と愛液を搾り取ったるわ」
 猪狩がそう言って、くっくっくっ…と押し殺した笑いを漏らすと、
「私も見学していいかな」
 真夕が思いがけないことを言った。
「なんでや」
「あいつが苦しんでるところを、この目で見たいのよ」
 孝介は舌を巻いた。真夕の目に憎悪の炎が揺れている。
「あのね、私には… 15 人がかりだったでしょ。もっと人数増やせる?」
「え」
 孝介が絶句していると、猪狩が、
「できんことはないが…どのくらいやね」
「 2 倍」
「ちょっと待て」
 思わず口を挟んだ。
「処女だぞ。 5 人とかでも多すぎるくらいだ」
「 30 人全員が犯さなくてもいいから」
「そんな器用なことはできんよ」
「じゃ、 30 人で犯ればいいわ」
「無茶言うな」
 夢姫を犯し殺してしまう事態を孝介は恐れているのだが、
「実は、志願者は殺到しておってなあ」
 と、猪狩。
「なんだって」
「こないだの真夕ちゃんのビデオを見た連中よ」
「え」
 こんどは真夕が慌てる。
「私のビデオってを見た…って、だれが」
「うちに出入りする男優。というか、『犯し屋』の補欠というか」
「やだっ!…そんな人たちの間に出回ってるの?」
「いや、あの日のビデオはマスターが 1 本あるだけやから安心し。連中には、会社に呼んで見せただけや。あったやろ、大スクリーンが」
「だ…」
 真夕の顔が真っ赤に染まる。
「大スクリーンで、見たの?何人で」
「こないだのメンバーを入れて 20 人くらいか。いや 30 はおったかもな」
 真夕の狼狽ぶりが面白いのだろう、猪狩も調子が出てきた。
「制服姿の美少女が縛られとる絵だけでもう生ツバものよ。それが全身愛撫でイク、電マでイク。最初だけはオシッコちびったが後は潮を吹いとったやろ。潮まみれでイク。全身舐めでまたイク。ほとんど失神状態だったのが、輪姦しに入るとまたスイッチが入ってイク」
「やめて…」
「真夕ちゃんをまた犯るときは絶対に参加する、言うとったで。 30 人」
「私はもうイヤよ、あんな拷問みたいなの…それも 30 人だなんて無理」
「ほら。そう思うんだろ」
 孝介がそう言うと、真夕は一度黙ったが、
「だからその 30 人をあいつにぶつけてよ。あの女が苦しむのはいいから」

 午前 0 時。猪狩はいつものように PC を立ち上げ、「美少女戦士 VS 淫獣」のサイトにログインした。

   淫獣ZETTONさんが入場しました
   現在の入場者は 戦士 4 名 淫獣 298 匹
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  戦士 サリーさん(26)…戦闘終了(敗北)。陵辱されています(45匹中32匹目)
  戦士 ミクさん(19)…戦闘終了(敗北)。陵辱されています(34匹中26匹目)
  戦士 莉子さん(22)…戦闘終了(敗北)。陵辱されています(19匹中9匹目)
  戦士 ユイさん(19)…戦闘終了(敗北)。陵辱されています(22匹中3匹目)
  176匹の淫獣が待機中
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「やれやれ。戦士は出払っとるんか」
 週のど真ん中である。この時間では美少女戦士が新たにログインしてくることは普通ない。したがって戦闘も陵辱もできない。
「希ちゃんも来とらんしなあ」
 ZETTON こと猪狩は戦士「希」がお気に入りだ。
 仕方がないので「希」のページに移動し、動画を見る。自分= ZETTON が「希」を倒し、それまで倒された淫獣どもと共に「希」を犯しているものだ。「希」自身もよく見ているのか、自分で書き込んだ台詞が度々更新されているのが楽しみのひとつだった。
 「希」のハンドルを持つ自称 18 歳大学生は、若いのに似合わず煮詰まった台詞を入れている。願望が強いのだろう。
 ふと、「希」の 3DCG のアバターが高梨夢姫とダブって見えた。
 身長 158 cm 、細身で華奢、髪はショートで美脚。そんな娘はいくらでもいるし、アバターの基礎データが本人の真実の姿だという保証もない。あの優等生然とした、しかも中学生の夢姫が、こんな“悪趣味”なサイトに出入りしているというのも考えにくい。だが、「希」は夢姫ではないかと疑えば疑うほど、そんな気がしてくる。
「あかんあかん。そんなはずないやろ。どうやら俺も重症のようやな」

4 個人指導

 真夕がフルートを教えてほしいと言ってきたのには驚いたけれど、嬉しかった。いつか危ないところを助けてもらったお返しができるから。
 中 2 の冬に吹奏楽部に入るわけではないけれど、フルートの音色が好きで、フルートの有名な曲も好きだという。そして、吹奏楽部の演奏会で私が吹いた曲中のソロが素敵だったから私に教わりたい、とまで言われた。真夕の家ならいくらでもいい先生につけるはずなのに、最初の手ほどきを頼まれた。光栄なことだ。
 もう楽器は買ってもらったという。学校の音楽室でもできるのだけれど、吹奏楽部の部員もいるし、何より私以外の人に聞かれるのは恥ずかしいのだそうだ。それで、土曜の夕方、私が部活を終えた頃から私の家でやることにした。地下の防音室がまた役に立つ。
 吹奏楽部に入ったときは私も全くの初心者で、ただただフルートを吹けるようになりたくて猛練習した。今では未熟ながら後輩に教える立場なので、友達に教えるとしても要領はわかっている。
 立ち方、笛の持ち方、唇の当て方、息の入れ方。
 運指の方法。タンギング。ロングトーン。そしてスケール。
 何種類かのスケールを一緒に繰り返すうちに、約束の 2 時間はあっという間に過ぎた。
「もうこんな時間。そろそろ引き上げるわ。どうもありがとう、夢姫」
 2 時間でくたくたになったみたいだけれど、真夕は初日にして綺麗な音色で音階を吹くようになった。次回はグノーの「アヴェ=マリア」に挑戦することにしている。さしあたりの目標は、ビゼー「アルルの女」の有名なメヌエットだそうだ。誰にも言わないでよ、と念を押されたけれど。
 フルートは身体の大きさや腕の長さなどでハンデを負うことはないから、小柄な真夕には合っている。真夕は頭がいいだけあって、予想した通り筋が良かった。もしも一緒に吹奏楽部に入っていたらパートリーダーは真夕がやっていただろう。
「私ならまだ付き合えるけど。帰らなくちゃだめ?」
「晩ご飯、いちおう親と一緒に食べるんだ。夢姫こそ、家に来ない?」
 そう誘ってくれたのは有り難かったが、真夕を帰した後はすることがある。
「ありがとう…でも、やりたいことがあるから。夕食は自分で作る」
「そう。偉いね…で、何をするの?ひとりで?」
 そう訊かれて、一瞬返事に困った。
「ひとりよ。その…家の中を掃除したり、 DVD を観たりとか。お祖母ちゃん家ではできないから」
「なあんだ…だれかといいことでもするのかと思った」
「何言ってんの。そんな人、いないわよ。いないし…」
 “いいこと”なんて、するはずないじゃない。まだ中学生なのに。
 −−してみたい、けど−−
「いないし、何?」
「え」
「いい人がいないのはわかるけど、いたとしたら?」
 真夕は昔から、疑問に思ったことはずばずば訊いてくる。曖昧な返事をしても納得しない。
 どうせ二人きりだ。真夕は本音の話をしたがっている。
「…いいこと…なんて、できないわよ。まだ中 2 でしょ」
 ふたり、防音室のソファに座って向き合っている。塾に行くときと同じように、真夕はお洒落だ。ブルーのセーターにグレーのミニスカート、黒のタイツ。細いけれど綺麗な脚が私の正面にある。
 私は私でお気に入りの服を着ている。クリーム色のブラウスに濃紺のショートパンツ、薄手の黒のストッキング。脚の線には少し自信があって、相手が女の子であっても脚を見せているのが好きだ。
「夢姫だったら早くないよ」
 真夕が私の右隣に移動し、右手を私の左太腿に伸ばしてきた。
「えっ…」
「恥ずかしがらないで」
 真夕の手を遮ろうとした私の両手は、真夕の左手に遮られた。
「いつも思ってたのよ。夢姫の脚はすごく綺麗」
 真夕の右手が太腿をゆっくりと這う。他人に触られるのはもちろん初めてだ。
 その相手が真夕だなんて…
「…うっ…真夕、やめて…くっ…」
 くすぐったいような、痺れるような、切ない感覚が走った。
「敏感なんだね」
「…だ…だって、そこは…」
「敏感な性感帯、だよね」
 その通りだ。でも、真夕は何を言いたいのだろう。
「…そうだけど…」
「きっと夢姫は脚じゅう敏感。違う?」
 否定できない。無言で頷く。
「その敏感な脚を綺麗なストッキングで飾って見せるのはなぜ?危ないでしょ」
 真夕の右手は、私の左脚をずっと擦っている。太腿の外側から膝にかけて、ゆっくり−−
 感じてしまいそう。いや、もう十分に−−
 息が乱れそうになるのを堪えるのに必死だ。
「…危ない、なんて…思ったことない…」
「襲ってほしいって訴えてるみたいだけど?」
 そんな−−
「…そんなこと、考えてないよ…」
 ぴったりと綴じ合わせていた内腿に、真夕の右手が滑り込んだ。
「…あっ!…」
 真夕は、今度は両手で右太腿の両側を擦り始めた。
「…あ、うっ…真夕、やめてっ…お願い…」
 引き離そうとしたが、真夕の手は私の脚に吸い付いて離れない。
「感じるのね。もっといいこと、してあげようか」
 一瞬、してほしいと思った。でも、だめ。いけない−−
「…やめて…」
「じゃ、このままね。太腿はいいんでしょ」
 そういうわけでは−−
「前から触ってみたかったの、夢姫の脚に。お願い」
 恥ずかしいけれど、お願いされては拒めない。
「…うん…」
 真夕の両手は左右の太腿を行き来し始めた。
「ほんとに綺麗な脚。同い年とは思えないわ。ちょっと憎らしい」
「…ひっ…」
 左右の内腿を同時に擦られて、仰け反ってしまった。
 声が漏れそうになる。口に手の甲を押しつけて堪える。
 立ち上がれば逃れられる。でも、この快楽に浸っていたかった。
「夢姫は、願望はあるでしょ」
「…がん、ぼう?…」
「犯される願望。決まってるじゃん…私はあるよ」
 言葉が出てこない。
 願望というか、妄想はしている。淫獣や触手の群れに犯される妄想。
「ミニスカ履いて黒タイツで脚を包んで男たちを挑発してると思うとね、ゾクゾクするの。夢姫もそうだと思ったんだけど」
 私も、そうだ。だけど、言えない。
「私、顔は幼いし、背もまだ小さいし、胸もないし、脚も貧弱なのはわかってるの。でも、これはこれで欲望をそそられるっていう人はいるのよ」
「…その人の口から、そう、聞いたの?…」
 おそるおそる尋ねる。
「うん。で、私はもう、その人としてるの。セックス」
 真夕の手が止まった。
「…うそ…」
 信じられない。まだ中 2 なのに−−
「ほんとよ、夏休みから。あ、相手は中学生じゃなくて大人。中年のオヤジ」
「…そう、なの…」
「オナニーだけじゃもたないから、して、って私から頼んだの」
 そんな人がいたんだ−−
 ふと、塾の帰りに送ってくれる真夕の叔父さんが頭に浮かんだ。真夕の家の隣で調剤薬局をしているという、がっしりした体格の人。お父さんでもお母さんでもなく、叔父さんが迎えに来る、というのが少し不思議だったのだけど、そういう関係だとしたら頷ける。
 でも、叔父と姪でなんて、あり得ない−−
「…知らなかった…」
「当たり前よ。私も話したのは夢姫が最初」
「…どうして、私に?…」
「誰かに話したかったの。私の願望のこととか、セックスしてることとか。夢姫ならきっと私と同じだから、聞いてくれると思ったの」
 真夕の手が再び動き始める。
「もっと話していい?」
「…うん…」
 真夕にされるがまま、太腿を刺激され続けるということにもなる。
「そのオヤジとは合意でやってるから…あ、和姦っていうのかな。知ってる?」
 和姦は強姦の対義語?だったはず−−
「犯され願望は満たされてなかったんだよね。でも、最近それも実現したの」
「…え、えっ?…」
 犯された?相手の中年男性ではない誰かに?−−
「まあ、いつものオヤジの仲間の人たちだから、ある意味合意の上ではあったんだけど」
 ちょっと待って−−
「…仲間の…人たち?…」
「そう。私もまさかと思ったんだけど、 15 人がかり。輪姦。それも縛られて」
 信じられない。こんないたいけな感じの子が、そんな大勢に−−
 しかも、縛られて、だなんて−−
 心臓の拍動の音が聞こえてきそう。
「目が潤んでるよ、夢姫」
 指摘されて、顔がかっと熱くなった。
 真夕が羨ましい−−
「続けていい?」
 隠しても無駄だ。真夕がどんなことをされたのか、聞いてみたい。
「最初はこう、後ろ手に縛られた」
 真夕の手が私から離れて、自分の背中で組み合わされる。
「そのまま天井から吊されてね、服を着たまま責められたの。胸を揉まれたり、脚を擦られたり、もう身体中。私、全身敏感だから、それで何度もいっちゃった。途中から電マ…電動按摩機ね。それを何本も使われて、気絶するまでいかされた。私、いくときに潮を吹くんだけど…足許が洪水みたいになって」
 言いながら、真夕もその時を思い出して昂奮しているようだ。
「次は服を全部脱がされて、こう、手足を広げて縛られた」
 真夕が床に横たわり、四肢を広げる。
「どうされたと思う?…輪姦はまだなの」
 私が言うのを真夕が待っているので、言った。
「…舐められたり、とか…」
「そう。でも不十分。どんな風に?」
「…わかんないよ…」
「 15 人がかりで来られたの」
 真夕は起き上がり、また椅子に座った。そうして、
「唇、首筋…」
 自分で言った通りに、私の身体に触れていく。
「腕、腋の下、お腹、乳房…太腿、脹ら脛、足の指、それから、ここ」
 不意に、真夕の手が秘部に来た。ショートパンツの上からだが−−
「…いやっ…」
「濡れてるね、夢姫」
「…しょうがないじゃない…」
 真夕に太腿を愛撫されていたときから濡れていた。輪姦の話を聞かされて治まらなくなった。
「クンニリングスって、知ってるでしょ」
 無言で頷く。知ってるどころではない。憧れている。
「私、普段からクンニだけで何度もいっちゃうんだけど」
 いつもの人とのセックスで、いつもクンニをされてるんだ−−
「それなのに、全身にも男の頭がひしめいて私の肌という肌を貪ってるでしょ。気持ちいいのを通り越して拷問みたいだった。ずっといきっぱなしみたいになって、辛くて、苦しくて、泣きじゃくった。でも、やめてくれたのは私が何度か気絶して、涙も汗も愛液も搾り取られたあとだった」
 真夕の手はまた私の太腿を愛撫している。
「それからやっと輪姦が始まるんだけど…私、男はひとりしか知らなかったでしょ。もっと大きいのを持ってる人もいるのね。そんな集団に朝まで犯され続けた。自分で言うのもなんだけど、 14 歳の美少女を犯す機会なんて普通ないじゃない。みんな夢中で私を貪るの。ひとり 1 回では済まなくて、 2 巡された。 3 回、 4 回犯した人もいた」
「…死んじゃうよ…」
「ほんと、死んじゃうと思った。そんな風にめちゃめちゃにされるのが望みだったんだけど、いざ現実になると地獄だった」
 真夕が最近変わったのは、そんな過酷な目に遭ったからだろう。
「それでも、いつものオヤジの仲間だから安全は保証されてたの。みんな避妊してくれてたし。どこかの変質者に拉致でもされたら、中に出されるのはもちろん、切り刻まれるか、殺されるかも知れないじゃない」
 安全に願望を成就したというわけね−−
「さてと…そろそろ帰るわ。…あ。話、戻るんだけど」
 立ち上がって身支度をする真夕。私は太腿を撚り合わせたまま、立ち上がれない。
「…なに?…」
「夢姫なら早くない、って初めに言ったのはそういうこと。こんな私だってしてるんだから」
 セックスをしたければ、すればいい、と?−−
「背はもう、伸びるはずのところまで伸びた。胸もそれなりにあるし、脚は大人の女みたいに美脚だわ。準備はできてるのよ。だから無意識に男を誘ってる」
 そうなのかな−−
 考え込んでいると、真夕が唇を合わせてきた。
「む」
 すぐに離れたが、私のファーストキスの相手は真夕となってしまった。
「可愛いよ、夢姫。フルートのお返しに私が手ほどきしてあげてもいいんだけど、それは大事な人のために取っておいて」
 真夕はコートを羽織り、楽器を持って出ていく。慌てて玄関まで見送る。
「今日はありがとう。またお願いできる?レッスン」
「…う、うん…」
 次は真夕に押し倒されるような気がしてきた。
「大丈夫。何もしないから。あ、私がエッチしてることは他の人には内緒ね」
「もちろん」
 すっかり日が暮れている。可愛らしいイヤーマッフルを髪に着けて、真夕は夜の闇に溶けていった。

 いつもに増して欲望が高まっている。秘部はびしょ濡れ。
 真夕にあんなことを言われ、太腿を愛撫され、唇も奪われたからだ。
「…真夕ったら…」
 真夕に全身を愛撫される自分をつい想像してしまう。
 だめだ。いつもの私に戻らなくては。
 いつもの私というのは、淫獣の群れに犯される願望に取り付かれている女の子、ということだけれど−−
 シャワーで身を清める。気が急くので、食事は抜いてジュースを飲んだだけ。
 土曜の午後 7 時。お祖母ちゃんは月曜の朝まで入院だから帰らなくていい。明日も朝から吹奏楽の練習があるので、持ち時間は 12 時間ほど。睡眠も取らなくてはならないから、てきぱきと進めよう。

   こんばんは。ふたりともお元気ですか?
   お祖母ちゃんは週末の入院なので、また家に戻っています。
   西園真夕ちゃんを知ってますよね。彼女、フルートを始めたの。
   手ほどきをしてほしいと言われて、さっきまで地下で練習してました。
   最初から上手い人っているのね。真夕はすごく筋がよくて、
   もう綺麗な音でスケールを吹けるようになりました。
   “師匠”としては嬉しいですが、私も頑張らなくては。
   明日も朝から一日練習です。

 バスタオルを身体に巻いただけの姿で、まず両親にメール。
 そして、クローゼットに入る−−
 今日、宅配便で届いた小箱から、ローターを取り出す。
「…来ちゃった…」
 年齢を偽るのにも罪悪感がなくなってきて、アダルトグッズの通販にも手を出してしまった。欲しい物がたくさんあるのだけれど、お小遣いの範囲で買える中でいちばん欲しい物がこれだった。
 こんな小さな楕円球が虐めてくれるのかと思うと、ドキドキする。
 電池を入れ、専用のショーツに仕込み、それを穿く。リモコンはコードレスだ。
 次はストッキング。今日はラメ入りのベージュだ。反射光がきらきらと美しいので大好きなのだけれど、まだ外出のときに穿く自信はない。中学生が背伸びをしているのがミエミエだから。
 そして−−先週やっと完成させたコスチューム。白地に黒の補強材とグリーンの装飾が入った、美少女戦士「希」のコスを模したものだ。ベースはショートパンツとノースリーブブラウスで、それらしい部品を買ってきたり作ったりして、 4 回の週末で縫い上げた。
 我ながら、よくそんなエネルギーがあるものだと感心する。なぜ、こんな手間のかかることをするのか−−
 “儀式”の時間を精神的に充実させて、より深い快楽を得るためだ。陵辱される「希」に自分を重ね合わせるには、これ以上の方法はない。
 白のドレスグローブで指先から肘の上まで覆う。戦士のコスの加工を施した白のロングブーツを履き、髪には擬似のアンテナを接着したカチューシャ。
 姿見に映して確認する。ロングブーツのピンヒールは 8 cm もあるので、身長は見かけ上 165 cm くらいになっている。新鮮だ。
「…いいじゃない」
 CG のようにはいかないけれど、美少女戦士「希」に近づいた。
 真夕に太腿を愛撫され、刺激的すぎる体験談を聞かされたせいで、下腹がむらむらと落ち着かない。爆発寸前だといってもいい。「希」に変身したせいで、欲望はさらに増した。
 もともと今週は今日のためにオナニーを控えてきた。先週の土曜日にしたきりだから、ちょうど 1 週間ぶり。中 2 になってからはずっと 3 日と空けずにしているから、 1 週間も我慢したのは初めてだ。
 すぐにでも、オナニーをしたいけれど−−
 我慢しよう。ここでくじけては元も子もない。
 今日、私=「希」は万全ではない。一週間の睡眠不足と疲労のために、身体が重い。こんなときに限って性欲は増していて、ひどく不安定な気分だ。
 それでも敢えて戦場へ赴き、全力で淫獣を倒そう。これまでの自己最高は 28 匹だが、今日は 30 超えを目指そう。そうすれば、最後には敗北して 30 数匹がかりで犯されるのだ。
 「希」は戦闘の最中にも触手や毒針で性感帯を攻撃される。そうしたら、ローターのスイッチを入れよう。
 私はたちまち追い詰められるだろう。でも、「希」が淫欲と必死で戦うように、私も歯を食い縛って絶頂を堪える。さんざん焦らされたその先には、これまで味わったことのない深い快楽が待っている−−そう確信するから。
 PC とローターのリモコン、そして木綿の荷造りロープを持って地下に降りる。ロープは、「希」の脚に触手が絡みついたとき私の脚を縛り、同じ気分を味わうため。
 さっきまで真夕と話していた防音室。そこの壁にも大きな鏡があり、自分の姿を確かめながら仕事ができる。美少女戦士「希」は、太腿や二の腕を露出した危ういコスチュームで、淫獣との戦闘に望むのだ。
 この部屋でもインターネット用の無線 LAN が使える。ブラウザを立ち上げ、「美少女戦士 VS 淫獣」のサイトにログインしようとした、その時だった。
 がたん。
 上の階で何か倒れる物音がした。
「何?…」
 私のほかに誰もいない。真夕を送ったとき施錠もした。窓を開けてもいない。
 だが、確認しないわけにはいかない。 PC の蓋を閉じ、スリープ状態にした。
 美少女戦士の“コスプレ”のまま行かなくてはならないが、どうしようもない。万が一にも何者かが侵入していたらと思うとぞっとするが、
「誰もいるはずないんだから、大丈夫」
 自分に言い聞かせながら階段を昇っていく。
 おそるおそる 1 階を見て回る。玄関、父の書斎、母の書斎、洗面所…
「あ…」
 リビングの壁に掛かっていた絵の額が落ちていた。これだったのだ。
「…よかった」
 ほっと息をつく。そのときやっと、私はひどく緊張していたことがわかった。
 壁の釘が抜けたりしたのかな−−
 そう思って見ると、特に異状はない。釘はしっかり打ち込まれている。
 額の紐が切れたわけでもない。だから、額はすぐに元の位置に納まった。
「…変よね…」
 だが、何ともないものはそれ以上どうしようもない。
「ポルターガイストの悪戯なら、美少女戦士の担当じゃないわ」
 柄にもなく冗談を口にして、自分を励ます。玄関や窓の施錠をもう一度確認して、地下室に戻ることにした。
「美少女戦士に成りすましてはいても、恐がりね、夢姫」
 そう自分に言ってみる。
 なんとなく不安だが、再開しよう。お祖母ちゃんの家に戻っても私ひとりなのは変わらないのだし−−
 これを楽しみに一週間頑張ったのだから、今夜しなくては来週までもたない。
 地下室の扉を開けると、暗い。
「あれ」
 私、灯りを消していったっけ−−
 そうなのだろう。気にも留めずに壁のスイッチを探し、オンにする。
 振り返ると−−
 私の顔のすぐ正面に、半魚人の顔があった。

5 侵入者

「大人しくしろ」
 悲鳴を上げる間もなく、喉元にナイフを突きつけられた。悲鳴を上げたところで地下の防音室の中だ。外へは絶対に聞こえない。
 正面の半魚人は、もちろん人間の男がマスクを被っているのだ。大柄な男。覆い被さるようにして私の身体を壁に押しつけ、見下ろす。顔を隠しているが、マスクから覗く両目には悪意が満ちている。
 そして、その背後にも−−正面の巨体のせいで見づらいが、どうやら 4 人。みな上背があり、ゾンビとか得体の知れない化け物のマスクを被っている。
 怖くて、歯ががちがちと鳴った。脚が震え、慣れないロングブーツなど履いているせいでぐらついた。
「おおっと」
 倒れかけた途端、腰に回った半魚人の腕に支えられた。
「戦闘服みたいなのを着ているくせに、戦うまえから降参か」
 そう言いながら、私の全身に視線を這わせる。
 ひひひ…と、後方の化け物たちが卑猥な嗤い声を立てながら近づいてきた。
 5 人に囲まれた。ふと、この間同級生 3 人に囲まれたときのことを思い出したが、恐怖はそのときの比ではない。
 コスプレのせいだ。ジャージの上下でも着ていたなら危機感は何割か緩かっただろう。でも今、私は二の腕や太腿を露わにした美少女戦士の出で立ちだ。それは淫獣の欲望を煽るためのもの。現実に現れた淫獣の欲望をも、刺激しないはずがない。
「…誰?…」
 やっとのことでそう言ったが、彼らが答えるとは思えない。
「…どうやって、入ったの」
 お父さんが設計したこの家のセキュリティは万全。今もシステムは動いているはずだった。
「お嬢ちゃんには想像もつかない技術で、と言っておこう」
 私には想像もつかない技術?−−で侵入した。物音を立てて私をいったん地下室から出し、その間に地下室へ入って待っていた。
 土曜の夜、私がこの家にひとりでいることを知ってのこと−−
「お嬢ちゃんを狙ってたんだよ」
「…ひっ…」
 強ばった悲鳴を上げたのが彼らに聞こえたはずだった。
「狙われていたってのがどういう意味か、わかるようだなあ」
 わかるけれど、肯定できない。目の前の男の顔から視線を逸らせないまま、かぶりを振る。
「わからないのなら、教えてやろう」
 左右から複数の手が伸びて、壁に貼り付けていた両手を引き剥がされた。
「…いっ、いやっ!…」
「何をされるのか、わかってんじゃねえか」
 ぎゃははは…と爆笑が起こる。どっ、と涙が溢れて目の前が霞む。
 もがく私の背後に二人が回り、両手首を背中で纏めて掴まれた。すごい力。
「…うっ!…ああっ…」
「この程度でそんな切ない声を出すんじゃねえよ」
 同じだ−−淫獣たちに犯されるとき、「希」も両腕を後ろ手に拘束されている。
 おとがいに手を掛けられ、上半身を前屈みに折っていたのを逆に仰け反らされた。
 いまにも身体に触られそうで、つい、爪先立ちになる。腰がぐっと前方に突き出され、ブラウスの裾が上がって腹部が剥き出しになる。
「腕を取られただけで、なんとも悩ましいポーズだな、お嬢ちゃん」
 前にいる 3 人の視線が私の顔から胸、腰、そして太腿を上下に舐める。
 だめだ。絶対に無事には済まない。殺されはしないかも知れないが、この男たちに犯される。
 初めてなのに、 5 人がかりでの、輪姦−−
 そう思ったとき、
 じゅわっ…と、秘裂から熱いものが溢れた。
「…っ…」
 堪えなくては、と念じたときには遅かった。溢れた愛液が太腿を伝い落ちた。
「ん?…なんだなんだ、お嬢ちゃん。お漏らしか」
「…ちっ、ちが…」
 尿でなければ何だ、と彼らに問われる前に自問して、顔がかっと熱くなった。
「何を赤面してんだよ。オシッコじゃなければ愛液か」
 言葉が出て来ない。その代わりに涙がまた溢れた。
「図星かよ」
「なんだなんだ?男 5 人に囲まれただけで昂奮したってか」
「…違うわっ!…そんなっ…」
「違わねえだろう」
 また爆笑。言い訳のしようがなかった。まさか、オナニーを始める前から爆発寸前だったとは言えない。
 今にも服を剥ぎ取られるのかと観念しかけたが、男たちにその様子はない。私の衣装を飽きることなく眺めている。それはそれで、またまずい事態を招きそうだった。
「なあ、お嬢ちゃん」
 答えたくないことを訊かれそうな予感。
「戦闘服みたいだが、何かのコスプレなのか?」
 どこかに消えてしまいたいほど恥ずかしい。
「…じろじろ見ないで…」
「コスプレをして、ここで何をしていた?…ってか、何を始めようとしてたんだ」
「…べっ…別に…」
「別に、じゃわからねえよ」
 前髪を掴まれて、目を見据えられた。
「家にいる時はいつもそれを着ている、とか言うなよな」
「…お、お芝居をするので、その衣装を…」
 思わず出任せを言ったが、
「芝居ね。どんな芝居か、聞かせてくれ。見物に行くから」
 かえって窮地に追い込まれた。そして−−
「美少女戦士が淫獣と戦ったりするのか?」
 信じられない。半魚人にそう言われて凍り付いた。
「これも図星か」
「なんだって?」
 と、別の男が訊く。
「そんなオンラインのゲームがあるんだよ」
「ゲーム?美少女と淫獣?ってことはアダルトか」
「俺がやってるのはそうだが、お嬢ちゃんがお仲間かどうかはわからん」
「じゃあ、その辺から訊問するか」
 ひひひ…と下卑た嗤い。顔から血の気が引いていく。
「このパソコンでゲームでもしていたのか」
 そう問われて、かぶりを振った。
「そのゲームをしながらオナニーか?ここなら声を我慢しなくていいからな」
 それを知られたら、変態だと思われる。
「…ちがっ…」
「なにをムキになってんだよ」
 犯されるのも怖いが、今は私の妄想を知られるほうが怖い。
「じゃあ、別の質問。これは何だ」
 そう言った男の手には木綿の荷造りロープ。また顔が熱くなった。
「…かっ…関係ありませんっ…」
「オナニーにか?」
 また絶句してしまった。
「参ったな。また図星かよ」
「おおかた自分の脚でも縛って気分を出そうってんだろう」
「…あ、あっ…」
 堪えきれず、泣き崩れてしまった。背後の二人に腕を取られているので、上半身を前に折ることしかできない。
「まだあるぞ、お嬢ちゃん」
 俯く私を見上げるように巨体が腰を屈め、目の前に突きつけたのは−−
「これは何のリモコンだ」
 スイッチを−−
「…だめっ!…押さないでっ…」
 そう言ったのと同時に、淫靡な蠢動が秘部を襲った。
 まだ、一度も試していないのに−−
 ブブブブブブ…
「…あうううッ!…」
 たまらず仰け反った。ショーツの生地越しでも、十分すぎる刺激。
 堪え難い感覚がクリトリスを中心に秘部全体を包み込む。
「自分でローターを仕込んでいやがった。可愛い顔をして、大した好き者だぜ」
「…ううッ…と、止めてぇッ!…」
 クリトリスが痛いほど充血してしまっている。そこを頂点に、秘部から子宮まで官能の波が寄せてくるようだ。
 彼らの目の前で失態を晒すわけにはいかない。太腿を捩り合わせて堪える。
 もがく私の両腕は背中で組み合わされ、ぐい、とねじり上げられる。
「美少女戦士がどんな顔でイクのか、見せてもらおう」
 またリモコンを見せつけられる。スライド式のスイッチに指がかかっている。
「…やめてッ…強くしないでッ!…」
「強くしたらどうなるのか…な?」
 かぶりを振る私。不意に足首を掴まれた。
 手の空いていた二人が脚に来たのだ。左右に開かされた。
 ビビビビビビ…
 蠢動が強くなっていく。
「…ひいいいいッ!…」
 膝にも手が来て、ぴったり閉じていた太腿も引き剥がされた。
「…だっ…だめッ!…」
「何がだめなんだ。この程度でイクのか?」
 追い詰められる私。蠢動はゆっくりと強くなり−−
 やがて、腰がくだけそうな甘美な感覚が下腹部全体に広がった。
 このままではいってしまう。でも−−
 恥ずかしい瞬間を見られるわけにはいかない。
 半ば諦めながらも、歯を食い縛る。
「イカせてやろう」
 耳許で囁かれた。もう、我慢できない。今にも堰が切れる。
 両脚が硬直し、ぴくぴくと震えた。
 ところが−−そこで蠢動はぴたりと止んだのだ。
「…えっ…」
 太腿の内側を熱いものが伝い落ちていく。
「…く、うっ…うううっ…」
 煮えたぎる淫欲のマグマが行き場をなくし、私を体内から苛む。
 はっ、はっ…と荒い呼吸をしながら、半魚人のマスクの奥の目を見た。
「…と思ったが、やめとこう」
 そんなっ!…と、言いかけたのを堪えた。
「イキたかったよなあ、お嬢ちゃん」
 肯定することはできない。かぶりを振る。
「寸止めした瞬間、『えっ』とか言っただろうが。聞こえたぞ」
「…いっ…言ってないっ…」
 返す言葉が、男たちの爆笑にかき消される。
 恥ずかしくて、悔しくて、怖くて、泣いた。
「白い肌がほんのりピンク色に染まって、エロだねえ」
「…うっ…」
 うなじや二の腕、そして太腿に、男たちの手が来た。左右から押さえつけている 4 人が空いている片手を伸ばしたのだ。微妙なタッチで指を這わせてくる。
「…さ、触らないでよっ…変態っ…」
「なんだと?」
 せめてもの抵抗のつもりだった。
「こんな風に肌の露出したコスチュームを着てるお前こそ、変態じゃないのか」
「ショーパンの中にはローターまで仕込んでな」
 ぎゃははは…と再び爆笑。そして−−
 ブブブブブブ…
 またスイッチが入った。
「…くう、うっ!…」
 蠢動が止まってから、そこは全く警戒していなかった。それで、
 じゅわっ…
 と、また愛液が溢れた。堪える間もなかった。先に漏らしたときよりも量が多く、それはたちまち内腿を伝い落ちて、膝から床に滴った。
「おうおう、またお漏らしか」
「…見ないで…うっ…」
 涙が頬を伝う。その間も 40 本の指は肌を這い、ローターの蠢動は続く。
 ブブブブブブ…
 一度切れた堰は思うように治まらない。秘裂からは何度も溢れる熱いものが溢れる。
「なんだか、それとも相当溜まってるようだなあ」
 そうだ−−この一週間、我慢してきた。夕方、真夕に太腿を愛撫されたときにはもう限界だったのだ。
 それが顔に出てしまったらしい。
「なんだよ、また図星か?」
「全く、分かりやすいお嬢ちゃんだぜ」
「…違う…たっ…溜まってなんか…」
「そうやって狼狽えるのが、白状してるのと同じなんだよ」
 ビビビビビビ…
「…きゃうッ!…」
 蠢動が強くなり、私を追い詰める。愛液がまた溢れ、絶頂の波が寄せてきた。
「…いやあっ!…」
「なあ、お嬢ちゃん」
 半魚人に前髪を掴まれた。
「さっきも言ったが、美少女戦士が陵辱されるゲームに俺は心当たりがある。そこの PC でそのゲームをしながらオナニーするために、自分も戦士のコスをしてるんだろう。そういう手の込んだことをするお嬢ちゃんのことだ。土曜の夜に心ゆくまでオナるために、 2 、 3 日、いや 1 週間とか、オナニーを我慢してたりするんじゃないのか」
 返す言葉がなかった。
「ほおお…」
「なるほどねえ」
 他の 4 人が感心したような声を出す。
「大勢の淫獣にマワされてイキまくるために、欲望を溜め込んでか」
「可愛い顔をして、こりゃ相当な好き者だ」
「オナニーを我慢するのも辛いだろうに、その辛さも快楽だってか?」
「筋金入りのマゾ。“ど”の付く M ちゃんだぜ」
「今もイクのを我慢させられて、逆に気持ち良くなってたりしてな」
 言われ放題言われるまま、泣いていた。
「…やめてよっ…」
「ああ?」
「…気持ちよくなんか、ない…」
「イクのを我慢させられるのが、か?」
「じゃあ早くイキたいと」
「…いきたくなんか…」
 せせら笑われて、本心とは裏腹なことを言ってしまう。
「…あなたたちみたいな変態に、いかされたくなんか、ない」
「おい、太腿を伝ってるそれは何だよ。今にもイキそうで、爆発寸前なんだろ」
「 1 週間溜めこんだんだろうが」
「…だったら何?…」
 4 本の手に愛撫されるのも、ローターに苛まれるのも、堪えて言った。
「…コスプレしてゲームをしようと、おっ…オナニーを 1 週間我慢しようと、私の勝手だわ」
「そこへ俺たちが来て、邪魔をしてるというわけだ」
 くくく…という下卑た嗤いが私を包む。半魚人が舌舐めずりしている。
「それは申し訳なかったな。その罪滅ぼしに、オナニーじゃ味わえない快楽を味わわせてやろう」
 後ろ手に取られている両手を改めて組まされた。その手首に縄が来た。
「…あっ!…なにを…」
「ゲームの中ではおおかた触手に縛られるんだろう。後ろ手は自分じゃ無理だからな、初体験させてやるぜ」
 左右の手首が纏められ、縄が巻き付いたかと思うと、きつく戒めてきた。
「…ううっ!…いやっ…」
「いやじゃないだろう。両手の自由を奪われて、お誂え向きだろうが」
 背後にいた 2 人に変わって半魚人が来、その縄尻を取る。上半身を押さえつけるのはひとりで十分なのだ。外れた 2 人は私の左右に身を屈める。
「いい具合に鏡があらあな。見てみろ」
「…くっ…」
 鏡に向かって正面に立たされた。美少女戦士のコスに身を包み、後ろ手に縛られた私。背後には大柄な半魚人。そして左右にはやはり化け物のマスクを付けた男が 2 人ずつ、たくましい手で私の足首と膝を掴んでいる。
 ロングブーツは 8 cm のピンヒールでもともと爪先立ちをするように不安定だ。綴じ合わせようと逆「く」の自になる膝を、彼らは力ずくで開こうとしている。
「…やめてっ…離して…」
 ぴくぴくと震える太腿に、改めて手が来た。 4 人がそれぞれ自由な片手を這わせてくる。
「ラメ入りのストッキングなんぞ履きやがって、挑発的なんだよ」
「…あうッ…い、いやっ…」
 太腿の外側の筋肉にも、内側の柔らかい部分にも、 20 本の指は容赦なく責め立ててくる。あるときはカニが這うように、あるときは摘まみ、あるときは揉んでくる。くすぐったいような、痺れるような、切ない感覚に私は喘いだ。
「…くうっ…うっ!…いや…」
「額が汗でびっしょりだ。お嬢ちゃんはフトモモが敏感とみえる」
 ローターの蠢動はさっきから強度「弱」と「中」の間で不規則に変化している。太腿を責められている間はその辛さのせいで絶頂の波は抑えられているが、秘裂から愛液がにじみ出るのを堪えることはできない。ただただ苦しい時間が続いていた。
「いい絵が撮れているぞ」
 聞き捨てならない言葉に目を開けると、正面にビデオカメラがあった。いま私を責めている 5 人のほかに、まだいたのだ。
「…まっ…待ってッ!…撮らないでっ!…」
「手遅れだ。お前がこの部屋に入ってきたところからずっと撮っているからな。戦士のコスプレをした美少女が 5 匹の淫獣に快楽拷問される図は貴重だぜ。ついでにこの映像はリアルタイムで俺らのアジトに転送されている」
「…あ…アジトって…」
「淫獣の巣とでも言ったほうがいいか。俺らの仲間がこの状況を大スクリーンで鑑賞してんだよ」
 私は−−どうなってしまうのだろう−−
 少なくとも、今−−このまま絶頂させられるわけにはいかない。
 仲間が何人いるのかわからないが、恥ずかしい瞬間を見られるのも、ビデオに撮られるのも、だめ。でも−−
 自分の危うい状況を理解すると、かえって官能がいっそう激しく疼き出す。
「…いやああッ!…お願い、やめてぇッ!…」
 ビビビビビビ…
 太腿への責めが小休止となり、代わりにローターの蠢動の強度が増した。
 びっ…
 ショーツの中で、愛液がしぶいた。
「イキそうなんだろう。イッていいぞ」
「…だっ…だめぇッ…いっ…」
 いってはだめ−−でも−−
 もう、我慢できない。限界−−
「…もっ…もうっ…」
 だめ−−
 そう思ったとき。
 蠢動はぴたりと止み、変わって太腿を 4 つの手で引っ掻かれた。
「…くう、うっ!…」
 先にされたのよりも数倍重い「寸止め」だった。
「…うううーーっ…」
 必死に身をくねらせ、煮えたぎる欲望を堪える。
「イキたくないんだったよな。俺たちみたいな変態の手にかかっては」
 苦しい−−絶頂を堪えたことなんて、これまで一度もなかった。
 こんなに苦しいものだなんて−−
「…そっ…そうよ…いきたくなんか…」
「じゃ、自分でおねだりするまで続けよう」
 太腿への辛い責めがまた始まった−−

「…ああああーーーーっ!…」
 それから 1 時間。高梨夢姫は、陵辱のプロ 5 人による寸止め拷問をずっと繰り返されていた。
 これまで拙いオナニーで慰めていただけの、絶頂を堪えたことすらもなかった 13 歳の幼い肉体は、とうに根を上げていた。
 左右の足首にも縄がかけられて固定され、背後の猪狩以外の 4 人は自由になった両手で夢姫の太腿を苛んだ。左右に 20 本ずつ這う、手管に長けた指。太腿の性感を残さず抉り出され、夢姫はショートの髪を振り乱して苦しんだ。
 それと交互に、ローターの蠢動がクリトリスや秘部全体を苛んでくる。
 5 度目の寸止めのあと、夢姫はついに懇願した。いかせてほしい、と。
 だが、早く許しを請えばいいものを 5 度も拒んだというので、さらに 5 度、堪えさせられているのだ。
 ビィビィビィビィビィビィビィ…
 ローターの蠢動は最強。夢姫の両脚の下には、堪えきれず垂れ流した愛液が溜まり、怪しく光っている。
「…うっ!…ああッ!…お願い、もう…」
「これで 10 度目だ」
 またしても蠢動が止まる。 40 本の指が太腿を引っ掻く。
「…ううううーーッ!…」
 げふ…という音とともに、夢姫の口から泡。
「さすがは“ど”の付く M の美少女戦士だ。よく堪えた。望み通りにしてやろう」
 ブブブブブブ…
「苦あれば楽あり、だ。イッていいぞ」
 朦朧とする意識の中で、両脚が抱え込まれて左右に引き裂かれるのを感じた。その角度はたちまち 180 度になる。
 ビビビビビビ…
 蠢動が増していく。
「…ううっ…お願い…このまま…」
「イッていいんだぞ」
 とてつもなく大きく、深く、暗い絶頂の波がやってきた。それに呑み込まれるのを夢姫は怯えた。
「…ああッ…うっ…こ、怖いっ…」
「死ぬかもな」
 ビィビィビィビィビィビィビィ…
 蠢動が最強に−−
「…ああッ…だめっ…もう、だめぇッ!…」
 びゅううううッ!…
 ショーツの中に激しくほとびり出る液体。
「…いくッ!…」
 びゅううううッ!…
 男たちの腕の中で何度も跳ね、そしてのたうち夢姫の肢体。
 びゅううッ!…
 びゅッ!…
「…ああッ!…うむっ…」
 最初のを入れれば 11 回にわたる過酷な寸止めの後の、激し過ぎる絶頂。
 夢姫の幼い肉体は依然、がくがくと弾んでいる。
 猪狩の指示で、男たちは一旦夢姫を床に下ろし、ショーツを脱がせる。ストッキングを引き裂き、ショーツを切り取ると、秘裂が露わになった。
「…なっ…何?…」
 敏感な部分に外気を感じて、夢姫は失神から覚醒する。
「…いやッ…それだけは、いやっ!…」
 犯されると思ったのだ。だが、違った。
「慌てるな。快楽責めを続けるだけだ」
 再び抱え上げられた下半身。剥き出しになった秘裂にローターが近づく。
「…いっ…いや…直になんて…」
 拒む間もなく、勃起したままのクリトリスに、それは来た。
 ビビビビビビ…
「…うああッ!…きゃうっ!…」
 びゅうううッ!…
 たちまち昇り詰めた。ローターは離れず、忌まわしい蠢動を見舞ってくる。
「…やめてぇっ!…無理っ…あううっ!…」
 びゅううッ!…
「…うむっ…もう、だめっ…許して…」
 こんなに続けざまに達したことはない。
「苦あれば楽あり、楽あれば苦あり、だ」
 泣きじゃくりながらも夢姫はローターの蠢動に屈し、何度も精を放った。
 そして 6 度目−−ごく微量の液体を放ったあと、夢姫はぴくりとも動かなくなってしまった。ようやく縄を解かれた。
「これで小休止としてやる。身体を洗ったらこの場所までタクシーで来い。パソコンは預かっていく」
 ぐったりと力を失っている夢姫の身体に紙片を落とす。某所のコンビニの位置が書かれている。
「せいぜい可愛くしてくるんだぞ」
 そう言い残して、男たちは去った。

6 淫獣の巣

「年齢をごまかして悪い遊びをしてるからだよ」
 真夕が私にお説教をしている。私は何も言い返せず、ただ叱られるだけ。
 私たちの周囲には、 PC の画面でしか見たことがなかった淫獣の群れ。
 私はもちろん、真夕も美少女戦士の姿で、淫獣たちの視線を集めている。
 ぺちゃ、ぺちゃ、と淫獣たちが舌舐めずりをする音がする。
「私の家に夕食に来ればよかったのにね」
 その通りだった。真夕の好意に甘えていれば、こんなことにはならなかった。
 なんて馬鹿なんだろう−−
 でも−−
 オナニーをしたかったの。それを支えに、この一週間がんばっていたの。
「そんな手の込んだオナニーをしようとするからだろ」
「頭のいいやつは何を考えてんのかわからねえな」
「真夕と変な雰囲気になった流れで、真夕に犯ってもらえばよかったんだよ」
 なぜかあの不良たちもそこにいる。
 おかしい。これは何?−−夢?−−
 これは夢だ。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・・・・・・
 そこで、覚醒した。
 解放されてからしばらく起き上がれなかった。そのまま寝ているわけにはいかず、やっとの思いで膝立ちになり、汚れた床を簡単に拭いた。私の汗や愛液、潮だけではなく、男たちの汗なども混ざって、床じゅうがひどい有り様だった。
 そして浴室へ向かい、シャワーを使って身体を清めたあと、バスタブに横たわった。そこで完全に眠ってしまったのだ。
「…いけない。今、何時…」
 浴室の時計を見ると午後 11 時。彼らの侵入を許したのが午後 7 時くらい。拷問されていたのは 3 時間強だったと思うから、意外に時間は経っていない。だが、それはつまり、休息はほとんど取れていないということでもある。
 でも、時間に猶予はない。彼らのアジトに赴かねばならないのだ。今夜中に。
 行けば間違いなく陵辱される。地下室では性の拷問を受けただけだったが、あのまま犯されていてもおかしくなかった。
 カメラ担当を含めて、 6 人いた。そして−−
 アジトでも彼らの仲間が実況中継を見ていたという。いったい、何人?−−
 さっきいたのが半分だとして、あと 5 、 6 人−−
 そこへ赴くということは、そこにいる全員に犯されることを意味する。
「…無理よ…」
 私の身体はもう準備ができている、と真夕は言った。でも−−
 処女なのだ。そんな大勢を相手になど、できるはずがない。
 警察に届けることを何度も考えては、諦めた。
 恥ずかしい姿の一部始終を映像に収められている。彼らに逆らったらどんな報復を受けるか知れない。それに、パソコンを“人質”に取られている。
「…非道い目に遭うのがわかっていても、行くのね」
 今夜ほど自分の身体が愛おしいと思ったことはない。
 別れを惜しむように鏡の中の自分にしばらく向き合ってから、浴室を出た。

 夜遅くにごめん。熱が出てしまって、朝までに下がりそうにないの−−
 同じフルートパートの子に電話を入れ、明日の練習を休むことにした。 2 年生になってから休むのは初めてだ。でも仕方が無い。どんなに練習が大事でも、さすがに今の状況はそれどころではない。
 朝までに解放されるとも限らないし、解放された時点で私はきっと、ずたずたにされている。
 タクシーの運転手さんがルームミラーで私のことをしきりに気にしていた。こんな夜遅くに女の子がひとりで出かけるのが不審なのに違いなかった。それも、行き先は夜になると人気のない工業団地の中だ。そこで営業しているコンビニを指定されていた。
 降り立つと、寒気が脚を這い上がってくる。ダッフルコートの下は純白のブラウスにクリーム色のカーディガン、濃紺のショートパンツに同色のオーバーニーソックス。靴はいつものローファー。
 いつものストッキングやカラータイツでなくニーソにしたのは、新しい靴下が他にはなかったからだ。わざわざ太腿を露出するためのようで嫌だったけれど、あれだけ執拗に責められたから、太腿だけはいくら見られても平気な気がしている。太腿を責めたいのなら、存分に責めればいい−−そもそも、何を履いていっても剥ぎ取られてしまうはずなのだ。
 男がひとり近づいてきた。素顔なので、夕方いた男かどうかはわからない。
「高梨の娘だな」
 頷くと、路上に停めてあったワゴン車に乗るよう促された。後部座席だ。
 外からは見えなかったが、中には運転手のほかにもうひとり。コートとカーディガンを脱ぐように言われ、目隠しをされた。車は発進してから何度か進路を曲げ、私が方向を完全に失ったところで、彼らのアジトへ向かったのだった。
 私は後部座席で二人の男に挟まれ、彼らの視線に舐められていた。目隠しをされていても、それはわかる。
 右の男は視線を這わせるだけではない。顔を近づけ、露骨に匂いを嗅ぐ。
「石鹸だかシャンプーのいい匂いがすらあ」
 鼻息が頬にかかるようで、思わず身体を曲げる。
「そう嫌うこたぁないだろう」
 肩に手を回してきた。
「…やっ…」
「おい、やめとけ。お前の匂いが移る」
 左の男がそう言って制すが、
「後でいくらでも触れるだろうが。匂いを嗅ぐのも、舐めるのも、存分にな」
 かばってくれているのではなかった。
「へへへ…そうだったな。存分にな」
 舌舐めずりをする。右の男の脳内では、私はもう犯されている−−
 何か言葉を返そうにも、恥ずかしくて、悔しくて、思いつかない。唇を噛んだ。
「逃げ出さずに、よく来たじゃないか」
 左の男は落ち着いている。
「…逃げられるわけ、ないじゃないですか」
 そう返すと、
「ふふふ…そうだよな。あんな姿を撮られてしまってはな」
「それにパソコンが人質に取られてる」
 二人が口々に言う。卑怯者−−そう言ってやりたかったが、黙っていた。強気なことを言っても状況が悪くなるだけだから。

 車は 30 分ほど走っただろうか。到着すると目隠しはそのまま、左右から支えられながら降りた。導かれたビルの中は、屋外と変わらず冷え切っている。
「階段だ。ゆっくり行け」
 車の中で左右にいた二人が今も私の左右の腕を取っている。何度か向きを反転させながら数十段を降りるうち、人の気配が濃厚になってきた。
 複数の人間のざわめき−−それに混じって、啜り泣く声が聞こえる。

「…あうっ…お願いっ…もう、無理っ…許して…」
「楽あれば苦ありといっただろうが。イカせてくださいと言ったのはお前だぞ」
 ビビビビビビビビ…
「…うああっ!…いや、あッ!…いくッ!…」

 私の声だった。私が絶頂させられている場面−−
「お前が到着するまで“試写会”をやってるんだ。もう 3 回めくらいのはずだな」
 そんなところへ“実物”として登場させられる?−−
「いきなり襲いかかられたりはしないから、安心しろ」
 左の男が言うと、扉が開く音がして−−
 そのまま室内に突き飛ばされた。
「…きゃっ…」
 口笛が飛ぶ。足がもつれて倒れかけたところを、太い腕に抱き留められた。
「また会ったな、美少女戦士さまよ。今度は生身の女子学生か」
 半魚人−−
 その声は、スピーカーを通しても聞こえてくる。マイクを付けているようだ。
「淫獣のアジトに単身乗り込んだがドジを踏んで変身前に囚われたってとこか」
 彼が耳許で喋るので、息が耳やうなじにかかる。
「…うっ…」
 その刺激に、つい仰け反った。
「なんだなんだ、息を吹きかけられただけで声が出てるぜ」
「美少女戦士はフトモモだけじゃなく、全身ビンカンだと」
 ぎゃはははは…と爆笑。
 半魚人に背後から腕を取られ、男たちの気配のする方を向かされる。複数の視線に身体を舐められるのを感じる。恥ずかしくて、怖くて、涙が頬を伝った。
「変身前もすいぶん露出の多い恰好だな、おい」
 半魚人が言う。ショートパンツとオーバーニーソックスのことだろう。剥き出しの太腿に視線が突き刺さってくるようだ。
「さっきのに懲りず、またフトモモを責められたいか。それとも、脚を見せつけて俺たちを挑発してんのか」
 男たちが私との距離を縮めて来ている。見えないだけ、よけいに怖い。
「まあいずれにせよ、逃げずに来たってことは、覚悟はできてるということか」
 くくく…ひひひ…という下卑た嗤いの渦の中で、涙は止まらない。
「…か…」
「ああ?」
「…かっ…覚悟なんて…できてるわけ、ないじゃない」
 涙声で、途切れ途切れながら、そう言った。せめてもの抵抗だった。でも−−
「覚悟って、何の覚悟だよ」
「…え…えっ?…」
 前方から、思いがけない言葉を浴びせられた。
「覚悟なんてできてない、って自分で言っただろうが。何の覚悟なんだよ」
「お嬢ちゃんは、何をされに来たのかな?」
「冬の寒空に、フトモモを露わにしちゃってよ」
 くくく…と、また下卑た嗤い。
 追い詰められて、つい、背後の半魚人に顔を向ける。
「どうした。覚悟はできてるのかと訊いたが、お前はそれでわかったんだろ」
「…それ…は…」
「ちゃんと言えたら、手加減してやらないこともないぞ」
 野次が飛んで、爆笑が起こった。
「みんな、お前の口から聞きたいんだよ。言ってやれ。お前は何をされる」
 進退極まった。
「言わないのなら何もせずに帰してやってもいいが、お前の恥ずかしい映像がどうなっても知らんぞ」
 はっ−−
 そうだった。ここで狼狽えていても無駄なのだ。
「お嬢ちゃんは、何をされに来たのかな?」
 先と同じことを繰り返された。それで、ついに−−
「…レイプ…」
 絞り出すようにして、言った。涙がまた流れた。
 ほおおお…
 歓声が上がるのではと思っていたが、男たちの反応は意外に穏やかだった。
「お前はレイプされるために来たのか。そうだとして、相手はひとりか。お前に選ぶ権利はあるのか」
 ひとりのはずがない。まして、ひとりを選ぶことなど、許されるはずがない。
 美少女戦士を襲う淫獣のように、集団でくるに決まっている。
「…ありません…」
「お前を犯したい奴が複数いたら、いるだけ相手をするということか」
「…それは…だって…」
 逆らうことなんて、できない−−
「するんだな」
「…はい…」
「ここにいる全員が犯りたがったらどうだ。お前はなかなか可愛いからな」
 くくく…という嗤いが、いちいち私を追い詰めてくる。
「全員が一発ずつじゃ満足しないかも知れん。一晩かかっても終わらないかもな。だとしても、異存はないか」
「…異存、ないです…」
 よく言った。と声がかかったが、嬉しくも何ともない。
「ふふふ…お蔭で、これでレイプではなくなったよ。同意の上だ」
「…そっ…そんなっ!…」
 誘導されたとはいえ、望んでレイプされることになってしまった−−
「思う存分やらせてもらおう。お前も楽しむがいい。ところで」
 半魚人は少し間を取った後、
「何人いると思うんだ」
「…えっ…」
「複数の男に犯られるつもりで来たんだろうが。何人だと思ったんだ。まさか 100 人とか 1000 人ってことはあるまい」
 はははは…とあちこちで笑いが起こる。
「…わかるわけ…」
「考えろ」
 不意に、両腕を背中で組まされた。抗う間もなく、縄が来た。
「縛り上げられる間に答を出せ。ズバリ的中したら、無事に帰さないでもない」
 組まされた手首に縄が巻き付き、背中から胸にそれは回ってくる。
「そうだな。正解プラスマイナス 10 %の範囲でよしとしてやる」
「…あっ…当たらなければ?…」
「向こう 5 年間、俺たちの性奴隷だ」
 ブラウスの生地と縄が擦れ合って、シュルシュルと卑猥な音を立てる。夕方の縛りは手首だけだった。今度は念が入っている。
「…あっ…ああ…」
「縛りだけでそんな悩ましい声を漏らすとは、素質十分だな。答えたくなければそれでも構わんぞ」
 だめだ。考えなくては−−
 10 人くらいだと思っていた。それさえ過酷すぎる数。
 気配とか笑い声だけではわからないけれど、 10 人どころではないはず。
 そのとき−−

「私もまさかと思ったんだけど、 15 人がかり。輪姦。それも縛られて」

 不意に、真夕の言葉が脳内に蘇った。
 真夕を輪姦したのは真夕の恋人の仲間だったらしい。だから、いま私を取り囲んでいる男たちとは関係ないのだけれど−−
 なんとなく、 15 という数がしっくり来る気がする。でも−−
 経験のある真夕と初体験の私が同じ人数というのは、無茶だ。それに−−
 15 などと答えたら、 15 人に輪姦される事態を想定していることになってしまう。それでは手加減など期待できない。
「万が一的中したらつまんない、とか考えるなよ」
「わざとあり得ない数を言ったら、性奴隷は向こう 10 年だ」
 ぎゃはははは…と爆笑。
 どうすれば−−
 縄は乳房の上を一回り、次いで乳房の下を一回りし、さらに左右の腋の下を通った。それで“完成”のようだった。
「目隠しを外す前に言え。でないと失格だ」
「…まっ…待って…」
 私が答えようとしているので、男たちは静かだ。
「…じゅう…ご、にん…」
「 15 人だな。よし」
 半魚人の声に、無言で頷いた。
「それじゃ、目隠しを外そう」
 私の上半身を戒めている縄は半魚人が握っているようだ。別の手が伸びて、目隠しを外す。
「目を開けていいぞ」
 眩しい−−私はスポットライトを浴びせられていた。周囲は暗がりですぐには様子がわからなかったが−−
「…あ…」
 少しずつ目が慣れ、私の前に集まっている男の数が確認できた。
「何人いる」
「… 15 人…」
「俺を入れて、だ」
「…それでも、 16 人…だから…」
 15 人というのは正解の範囲内になる。それでは−−
 約束の通りなら、私は無事に帰れる?−−
 恥ずかしい映像はどうなる?−−パソコンは返してもらえるの?−−
 でも、 13 歳で初体験が輪姦、という災難からは逃れられる。
 ほっとした。でも、なんだか−−
「どうした。何を考えてる」
 不意を突かれて、慌てた。正面に来た半魚人の素顔を初めて見た。
「…べっ…別に…」
「安心したというか、なんだか残念そうに見えるんだが」
「…そっ…」
 ここでそれを見破られたら、元も子もない。
「…そんなはず、ないじゃないですか。約束どおり、これ、ほどいてください」
 そう言って、腕に巻かれた縄を見せる。
「それが、そうはいかないんだよ」
 薄ら笑いを浮かべている。半魚人のほかの 15 人も、距離を縮めてくる。
「…どうして?…やっぱり、 16 人で…私を?…」
「違う。お前の答は正解にほど遠いんだ。後ろを見てみろ」
 そのとき。
 ザッ…という威勢の良い音とともに、大勢の人間が立ち上がる音がした。
 暗闇の中で、背後にも人がいるとは思いもしなかったのだが−−
 そこには、反対側にいるのを優に超える人数の男がいたのだ。
「全部で 40 人なんだよ。残念だったな、お嬢ちゃん」
 悲鳴を上げることもできず、私はその場に崩れ落ちた。

7 暴露

 巨大なスクリーンを横に見るステージ。薄いマットレスの上に、上半身を縛り上げられたまま私は寝かされている。左右の足首には枷が嵌められ、そこには鎖が取りつけられている。
 ローファーを脱がされた以外、服はまだ着せられたまま。男たちの多くもまた、椅子に座ったり壁にもたれたりして見物を決めこんでいる。
 何を始めるの−−
 スクリーンには私の顔がアップになっていた。撮られている。カメラに−−
 家でのこともすべて撮られたというし、この部屋に着いてからもそうなのだろう。今さら撮らないでと言っても無駄だった。
 カメラは数台あるようだった。狙いは固定ではなく、ゆっくりと私の身体を舐めている。顔から胸、腰、そして脚。ニーソの爪先まで降りた後、また上って太腿のアップで止まった。
「…全部…ビデオに撮るんですか…」
「安心しろ。俺たちが内輪で楽しむだけだから」
 くくく…という嗤い声が私を追い詰める。
「…いや…」
 涙が溢れてくる。
「ま、撮られてることを気にしていられるのは今だけだ。そんな余裕はなくなる」
 半魚人が近くに来て、身を屈めた。
「訊きたいことがある。素直に答えれば、そう手荒なことはしない」
 彼が合図をすると、ごん…という機械音とともに、足首の鎖が動き出した。
「…あっ…」
 ステージの両脇に巻き取り器があるのだ。鎖が巻き取られるに従って私の脚は左右に引き裂かれていく。そして、頭や肩を支えにして下半身ごと引き上げられていく。
「…なに?…何をするんです…」
「お前が意味ありげにフトモモを露出してるから、お望みどおりフトモモを虐めてやろうとな」
 鎖はなおも引かれて、両脚は逆「く」の字に折った形で 120 度ほどの角度に開かされた。
「…う、くっ…」
 首と肩で全身を支えなくてはならない。無理な姿勢であるうえ、下半身に何をされるのか、見ていないわけにもいかない。
 太腿をまた、擦られたりするのだろうか。いや−−
 そんな生易しいものではないようだ。
 集まってきた男たちの手には 3 cm 四方ほどの柔軟そうな薄い板。その一つ一つからはコードが伸びている。どうやら電極パッドらしい。彼らは身を屈め、私の太腿にそれらを貼りつけ始めた。
 電気?−−
 股関節の近くと中ほど、膝の近くの 3 段、それぞれ太腿をぐるりと包むように 4 個。片方に 12 個、左右で 24 個も取りつけられた。 24 本のコードは束ねられて、テーブルの上の電源と覚しき装置に繋がれている。脚を多少動かしても、電極パッドは吸い付いたまま外れない。
 低周波の交流電流でマッサージを施すことがあるのは知っている。だが今、私の太腿に貼りついているものの目的はもちろん、マッサージなどではない。ニーソの縁から上の部分は生足で、肌を守ってはくれるものはない。
 拷問される。電気で−−
 寸止めとか連続絶頂も辛かったが、今度のは痛みを与えてくるものだ。
 女の子の性の弱みに付け込む、卑劣でいやらしいものである点だけが同じ。
 彼らは美少女が悶え苦しむ姿を見て興奮する。そして、全員で犯す−−
 その生贄が私だ。
 彼らは欲望を満たしたいだけ。拷問の名目は何でも構わないのだろう。
 そこまで考えたとき−−
 じゅわ…
 すっかり搾り取られたはずの愛液が、下腹の奥で湧き出るのを感じた。
(…嘘でしょ…)
 私は−−
 これから受ける仕打ちに怯えながらも、心のどこかで期待を?−−
(…うっ…)
 クリトリスが−−すっかり萎えていた神経の塊が、再び充血してきた。
 そして、乳首も。
 それらはショーツやブラの生地に擦れて、ざわざわと疼き出す。
 悟られるわけにはいかない。拷問される自分を想像して濡れるなど、それこそ変態だと思われる。
 気持ちも官能も鎮めようとするのだけど−−
 周囲に集まり始めた男たちの視線が気になって、心は乱れる一方だ。
 半魚人が見下ろしてくる。
「いま、お前のノート PC を立ち上げようとしてるんだが」
 スクリーンが切り替わり、私の PC の画面が映されている。
「スリープ状態から戻るためにパスワードが必要だ。それを言ってもらおう」
 言えない。だから拷問するのだろうけれど−−
 半魚人は私がアダルトのオンラインゲームをしていると思っている。ここでもきっとインターネットに接続するくらいは簡単で、ブラウザのブックマーク一覧に「美少女戦士 VS 淫獣」のサイトを発見されるのは間違いない。
 顔を横に向けて、半魚人から視線を逸らした。だがすぐに正面を向かされる。
「拷問されるのが望みのようだな。お前が好き者なのは承知しているが」
 半魚人が目で合図すると、
 ビ…ビ…ビ…ビ…
「…うっ…」
 初めての感覚。左右 12 個ずつの電極が、太腿の皮膚を一斉に刺激してきた。一定の間隔で、それは来る。
「だいたい… 0.5 ボルトで… 1 ミリアンペア」
 計器をいじっている男が言うと、
「ちょうど 500 オームだな」
 半魚人が返す。太腿の表面の電気抵抗のことを言っているのだ。
「美少女戦士さんよ。太腿に電流を流される気分はどうだ。痛いか」
「…はい…」
 これから拷問が始まるはずなのだ。強がっても仕方がない。
「いま電圧は 0.5 ボルトだ。 2.5 ボルトくらいまではピリピリと痛む程度だが」
 だが−−?
 不安に思っていると、
 ビッ…ビッ…ビッ…ビッ…
 刺激が強くなった−−
「…うっ…つうっ…」
「 1.5 ボルト。 3 ミリアンペア」
 そして−−  ビッ!…ビッ!…ビッ!…ビッ!…
「 2.5 ボルト。 5 ミリアンペアだ」
「…あ、うっ!…いた…痛いっ…」
 身を捩っても、足首を戒めている鎖はびくとも動かない。額に汗が噴き出す。
「まだまだ、この程度で音を上げてくれるなよ」
 ビッ!!…ビッ!!…ビッ!!…ビッ!!…
「 8 ミリアンペア」
「…ああっ!…つうッ!…」
 顔をマットレスに埋めてすがるのが精一杯だ。
 スクリーンの画面はまた切り替わり、私の脚のアップになっている。もちろん、外見上は何の変化もない。電流のパルスが来るたびにぶるぶる震えるだけ。
「痛みから逃れるにはどうすればいいのか、わかるな」
 パスワードを−−
「 10 ミリに上げろ」
 ビッ!!!…ビッ!!!…ビッ!!!…ビッ!!!…
「…ああ、あッ!…痛いッ!…」
「綺麗な太腿が焼け焦げる前に吐くんだな」
 その有り様を思い浮かべて、ぞっとする。
 太腿に手で触れて痛みを癒すことは叶わない。太腿をよじり合わせて堪えることもできない。
「どうした。脚が痙攣しているぞ。吐け」
「…だめっ…」
 それだけ言って、かぶりを降る。額の汗が流れて目に入る。
「たかがオナニーのネタだろう。そんなに強情を張るほどのものか?」
「…だめ…なのっ…」
 どうしても−−見られるわけにはいかない。
「この程度は平気というわけか。それとも、拷問されるのも望み通りか?」
 けけけ…と下卑た嗤いに包まれて、
「…そんなわけ…」
 事態の悪化を恐れつつ、そんなことを言った。
「ほう。口答えする元気があるわけだ」
 半魚人が言うと−−
「それじゃ、もっと辛いやつ、いこうな」
 キューッ!…キューッ!…キューッ!…キューッ!…
 電撃のパターンが変わった。
「…ひいいッ!…あうッ!…」
 激痛に加えて、焼かれるような熱さ。まるで、何かに噛まれているよう。
 そう−−大型の蜂か何か、強い顎をもつ虫に群がられ、一斉に噛まれるか、刺されているようだ。
「このパターンはキツイから、電流は 5 ミリに戻してるんだぜ」
 と、いうことは−−
「美少女戦士さまの皮膚は 10 ミリまでは異状なしだったな」
「…やっ…やめて…」
 キューッ!!…キューッ!!…キューッ!!…キューッ!!…
「…あぐううッ!…」
 頭頂を支点にして、仰け反った。太腿に群がる蜂たちが皮膚を食いちぎる様が目に浮かんだが、見かけは何の異状もないのだ。
「どうだ。吐く気になったか」
 半魚人に前髪を掴まれ、見据えられる。
 もう、諦めてしまおうか−−躊躇っていると、
「 20 に上げてみろ」
 ギューッ!!!…
 最初のパルスの衝撃に、気を失いかけた。でも−−
 ギューッ!!!…ギューッ!!!ギューッ!!!ギューッ!!!…
「きゃああああ」
 あまりの痛みに、気絶もできない。
「…痛いッ!…いたい…助けてッ!…言いますから…」
 声を張り上げると、電撃は止んだ。
 シャアアアア…
 ああ−−
 なんてこと。私は−−オシッコを−−
 あたりに漂う尿の匂いに絶望しながら、私は泣き崩れた−−

「…i…h、o、p、e…」
 あるテレビ CM の BGM になっていて大好きになった、旧いポップスのフレーズ。それを 1 文字ずつ言うと、 PC 担当の男がキーを打ち、私の PC はスリープ状態から復帰した。
「…うっ…う…」
 これから始まる辱めを思って泣いた。
「女の子の PC にはどんなエロが詰まってるのか、見せてもらおう」
 半魚人が言う。デスクトップにあるファイルには部活のプリントや写真しか置いていない。半魚人もそこには興味はないはずだった。すぐにインターネットのブラウザがクリックされた。
「ブックマークしてあるよな?」
 問われたが、顔を背けた。男たちが画面に注目しているのがわかる。
「思ったとおりだ。これよ、これ」
 発見され、クリックされる。先にも言っていたが、半魚人は淫獣の常連らしい。
 では、私=「希」のことも知っているのでは−−
「…いやあ…あっ…」
 肩に頬を押しあてて泣いた。が、背後の男に頭を掴まれ、スクリーンのほうを向かされた。戦士のコスチュームに身を包んだ美少女の 3DCG 。紛れもなく「美少女戦士 VS 淫獣」のトップページだった。
 ほお、と周囲から声が上がる。
「ログインするぞ」
 拒んでも無駄だ。「入場」をクリックしさえすれば私の PC のデータは送られてしまう。おそるおそるスクリーンに目を向けると−−

   戦士「希( NOZOMI )」さんが入場しました
   現在の入場者は 戦士 10 名 淫獣 967 匹
*********************************************************************
  戦士 サクラさん(21)…戦闘終了(敗北)。陵辱されています(33匹中31匹目)
  戦士 アイさん(22)…戦闘終了(敗北)。陵辱されています(25匹中19匹目)
  戦士 麻由美さん(23)…戦闘終了(敗北)。陵辱されています(31匹中15匹目)
  戦士 サリーさん(26)…戦闘終了(敗北)。陵辱されています(40匹中8匹目)
  戦士 ユイさん(19)…戦闘終了(敗北)。陵辱されています(51匹25匹目)
  戦士 ミクさん(19)…戦闘終了(敗北)。陵辱されています(27匹中7匹目)
  戦士 莉子さん(22)…戦闘終了(敗北)。陵辱されています(19匹中3匹目)
  戦士 メイさん(25)…戦闘中。(44匹目)
  戦士 ジュンさん(24)…戦闘中。(11匹目)
  戦士 希さん(18)…待機中
  686匹の淫獣が待機中
*********************************************************************

「なるほど」
「なかなか期待できそうじゃないか」
 ここがどんなサイトなのか、男たちにはすぐに見当がついたようだ。
「なんと、お前が『希』だったとはな。実物に会えるとは夢のようだよ」
 半魚人が近づいてくる。
「いつも楽しませてもらっとるよ。お前が楽しんでるのもよく知っとるがな」
 ぐひひひ…と下卑た嗤い。私=「希」との対戦の常連なのか−−
「来たぞ」
 画面を見るように促される。

   希さんに対戦のリクエストが来ました(1):TELESDON
   希さんに対戦のリクエストが来ました(2):GOMMORA
   希さんに対戦のリクエストが来ました(3):KING-JOE

「この淫獣どもと戦う意志があれば戦闘の『フィールド』にテレポートしてな、リクエスト順に 1 匹ずつ相手をする」
 半魚人が説明を始めた。
「武器が使い物にならなくなると素手で応戦するんだが、普通は数分も持たない。あとはそこまでに対戦した淫獣全員にマワされる」
 くっくっくっ…と嘲笑う声が漏れる。
「最後まで勝ち続けたりすることはないのか」
 誰かの声に半魚人が答える。
「ない。武器のエネルギーとか切れ味には必ず限界がある。淫獣の列が途絶えなければどこかで必ず敗北する」
「美少女戦士はそれを承知でフィールドに出ると」
「マワされるのが目的だからな」
 ぎゃはははは…と爆笑。それは美少女戦士すべてがそうなのだが、今はもちろん私に矛先が向けられている。
「そうだよな。『希』ちゃんよ」
 否定しても無駄だ。でも肯定もできない。それで黙っていると、
「お前がどの映像でオナっているか、知ってるんだぞ」
 そう言われて、はっ、と顔を上げた。
 淫獣 28 匹に輪姦される、あの映像。サムネイルをクリックされるところだ。
「…やめてっ…」
 無駄を承知で叫んだときには、陵辱シーンが始まっていた。
「淫獣側、ってか男のユーザもこれを楽しむんだが、美少女戦士も同様」
 全身の肌を触手に舐められ、鋼鉄の腕で四肢を拘束された「希」が、股関節を外される。


   希: きゃああああああーーっ!…痛いっ!…いたいいっ!…

「この台詞はお前が自分で書いてるんだよな?」
 黙っていると、
 ギューッ!!!…
 またしても太腿に電撃。
「…ひいっ!…」
「またお漏らしするまで電流責めをされたいか」
 無言でかぶりを振り、
「…私が…書いてます…」
「これを淫獣どもが見てるのも承知なんだよな?」
「…はい…」
「これを読んだやつを挑発してコーフンさせるためだな?」
 そこでまた黙ると、
 ギューッ!!!…ギューッ!!!…
 再び電撃が来た。
「…ああっ!…違いますっ…」
「違うわけがあるか」
 ギューッ!!!…ギューッ!!!…ギューッ!!!…
「…あううッ!…いたっ…痛いッ!…」
 痛いのはもちろんだ。だが−−
 どうしたことだろう。太腿に苦痛を与えられると、下腹が熱くなってくる−−
 秘裂の潤いが増し、クリトリスの硬度も増す。
「淫獣どもの欲望の的になるのがお前の望みだ。それを想像してお前も昂奮を高めて快楽に耽る。そうだろう」
「…はい…」
「顔はまだ幼いのに、とんだ好き者だぜ」

   希: ああっ、だめっ…いくっ!…

 クリトリスを触手に嬲られて、「希」は達した。激しく潮をしぶかせて−−
「こんな台詞を実際に吐いたことはあるのか?」
 かぶりを振る。今度は電撃は来なかった。
 やがて「希」の秘部を ZETTON のペニスが貫く。

   希: あああーーーーーっ!…大きいっ…大き…すぎるっ!…

「何を隠そう、この ZETTON が俺よ」
 思わず半魚人を見上げた。
 背後からは GOMORRA がアヌスを犯し始めた。

   希: やめてっ!…前後から同時になんて、無理っ!…

 ZETTON と GOMORRA が、その巨体に比してあまりに小柄な「希」をサンドイッチにし、太腿をがっしりと掴んでピストンを開始した。

   希: きゃああっ!…裂けるっ…裂けちゃうっ!…

「実際にもこんな風にされたくて、台詞を書いてるんだろう」
 確かに願望はある。でも、今のこの状況でそれを認めるわけにはいかない。
 陵辱されるのは免れないとしても、せめて手加減をしてほしいから。
 もしも輪姦願望があるなどと知られたら、容赦がなくなる。
「…そんなわけでは…」
「なんだと?」
「…想像はしますけど…願望があるわけでは…」
「想像してるってのは願望があるからだろうが」
 爆笑が起こり、また涙がこみ上げてきた。
「この映像を見ながらオナニーをしてるんだよな?」
 そうだった。それはばれているのだ−−
「美少女戦士のコスプレをして、ローターまで仕込んで、縄を用意して、だ」
 言葉を失っていると、
「自分の分身が淫獣の群れに陵辱されているのを見てコーフンするのは、願望があるからだよ。ところで」
 半魚人に、改めて睨み付けられた。
「 18 歳の大学生だって書いてあったな」
 「希」のプロフィールのことだ。
「高 2 くらいだろうと思ってたんだが、大学生なら好都合だよ」
「…何が、ですか…」
「 18 歳未満の少女でエロビデオを撮ったらまずいだろ。それに」
 それに?−−
「女子大生でそんだけ可愛いけりゃ経験があるよな。なら手加減は要らねえだろうってことだよ」
 顔が青ざめて行くのがわかる。ひひひ…と下卑た嗤いが身体に絡みつく。
「…まっ…」
 待って−−私は−−
 本当は、中 2 です。早生まれで、まだ 13 歳なんです。もちろん処女です。
 犯されるのは免れないなら、どうか手加減をして−−
 何か言おうとするのだが、唇がわなわなと震えるばかり。
「違うのか?あのエロサイトはいちおう 18 歳未満入場不可だろ。 18 歳未満のやつが年齢を偽って入り込んでるとしたら、いけない子だよなあ」
「悪い子だぜ」
 くくく…と意味ありげな嗤いが漏れてくる。それで悟った。
 この人たちは、私の年齢を知っている。
 年齢だけじゃない。きっと私の名前も、通っている学校も。両親のことも。
 両親が外国にいて、私が週末だけ家に戻っていることも。
 でなければ、家に侵入するはずがない。
 絶望していると−−
「おや?」
 半魚人が、何か珍しい物を見つけた、というような声を上げた。
「これはいったい何だ。おい、カメラ、アップ」
 何?−−
 カメラが私の太腿の間を狙う。ショートパンツの−−
「…あっ…いやっ!…」
 隠そうにも、腕を縛られ、両脚を左右に引き裂かれていては無理だった。
「…いやあっ…」
 私の股間が巨大スクリーンに映し出された。
 おおお?…というどよめきに続き、
「電流責めで濡れてんじゃねえか。それもショーパンまでシミるほどによお」
 ぎゃははははは…と、その日最大の爆笑。
「電流責めもだが、いつも見てるエロ動画でまたコーフンしてな」
「この後マワシにかけられるのを期待してか」
「参ったな。とんだ好き者だ。俺ら全員でも満足させられねえかもな」
 非道い辱めにも、泣きじゃくるほかない。
「こりゃ、早く解放して楽にしたやったほうがイイな」
 半魚人の手にはハサミが。
「…いっ…いやっ!…だめっ…」
「何がいや、だめ、だよ。どのみち全部剥ぎ取られんだ。まずは慰めてやる」
 ジョキリ…
 お気に入りのショーパン。こんな時に履いてくるのじゃなかった。
 ショーツも切り取られた。今日は 2 度目だ。そして−−
 愛液に潤う秘裂がスクリーンに大写しになるまで、あっという間だった。
「…いや…うっ…うっ…」
 これから私を陵辱しようという男たちに秘裂のアップを見られている。うっすら生えた陰毛の 1 本 1 本が、愛液に濡れて光っているのまでわかる。
「どれどれ…おうおう、クリもこんなにおっ勃てちまって」
 半魚人の顔が、そこにあった。彼のたくましい両手は私の腰を捕らえている。
 目が合った。
 彼が何をしようとしているのか、明らかだった。
「…だっ…だめっ!…それは、いや…」
 それをされたら、きっと−−感じすぎておかしくなってしまう。
「何をされるか、わかるんだな。処女のくせに」
 処女膜も見えたらしい。秘裂に舌先が伸びてくる−−
「…いっ…いやあっ…」
 びゅっ…
 そこで思いがけず、液体がほとびり出て、彼の顔に当たった。
「驚いたな。まだ触ってないんだぞ。勝手にイキやがった」
 はあ、はあ、と早くも息を乱してしまった私を、冷たく見下ろす。
「おい、年齢はともかく、処女にして人生初クンニのようだから、お前たち…」
 わらわらと集まってきた。そして、引き裂かれている私の両脚を片方 4 、 5 人で押さえつける。なぜ?−−
「これで、どんなに苦しくても脚は絶対に動かせないから」
 くくく…という冷たい嗤いが、これまでになく残酷に聞こえる。
「思い切りもがいて、楽しむがいいぜ」
 改めて、私の腰を捕らえる半魚人の両手に力が籠もった。
 舌先が伸びて−−秘裂に触れる。
 私は仰け反っていた。熱く、濡れた肉の感触が敏感な襞をなぞった。
 その瞬間、するどい感覚が貫いてきて−−
「…うううううーーーッ!…」
 半魚人の唇が秘裂に被さるのと、絶頂が同時だった。
 びゅううううッ!…
 噴き出た液体が、彼の顔を直撃した−−はずだったが、違った。
 間一髪、彼は全部口で受け止めていた。
 びゅううッ!…
 びゅッ!…
 彼の顔はまだ太腿の間に埋まったまま、続けてしぶく液体を嚥下している。
「…ご…ごめんなさい…私…」
「構わん。それより、これで済むと思うな」
 服の袖で口を拭いながら言うと、彼は再び私を貪りにかかった。
「…くう、うッ!…いやあっ!…」
 絶頂したばかりで、秘部全体がひどく敏感になっている。
 ぺちゃっ…ぺちゃっ…ぺちゃっ…
 たくましい両手が私の腰を捕らえ、大きな頭が太腿の間に埋まっている。短い髪が内腿の肌をちくちくと刺してくる。生暖かく、湿った唇が、舌が、粘膜の襞を丹念に抉りながら蹂躙していく。アヌスからヴァギナ、尿道まで、盛大に顎を動かす。どこをどうされているのかわからない。ただ、狂おしいほどの感覚が突き上げてくる。
「…ああっ…お願い、やめっ…あうッ!…」
 びゅううッ!…
 びゅうッ!…
 私がどんなに苦しんでも、半魚人の頭は離れない。そして、左右の脚に群がる 10 名ほどの男は、ますます力を込めて押さえつけてくる。
 押さえつけるだけではない。その手を淫靡に動かし、唇を吸い付けて、脚の性感を拾い出しては苛んでくる。いつの間にかニーソは脱がされ、脚はすべて剥き出しになっている。下半身の性感帯という性感帯を蹂躙されているのだ。
 まるで、下半身全体が巨大な軟体動物に呑み込まれているよう。
 電極パッドから再び電流を流されると、その軟体動物の歯に太腿を噛まれているようだ。
 半魚人の歯にクリトリスを捕らえられた。
「…いっ…いたッ!…そこは…」
 また目が合った。彼の歯は器用にもクリトリスの包皮を剥き、神経の塊を露出させたようだった。そんなことができるなんて、知らなかった。
「クリを剥かれるのは初めてのようだな。どうされると思う」
「…だめっ…怖いの…うッ!…」
 剥き出しになったそれが、彼の歯に挟まれた。
「…痛いッ!…うっ…やめ…」
 抵抗しようとしても、脚はびくともしない。それどころか、下半身全体がけだるく、甘美な虚脱感に包まれつつあった。切なくて、怖くて、涙が止まらない。
「…きゃうううッ!…」
 歯が動き出した。クリトリスを軸方向に、しごくように−−
「…いたっ…痛いっ…お願い、やめてッ!…」
 するどい痛みの奥から、弾けそうな快楽の波が寄せてきた。
「…お願いっ…許して…死んじゃ…」
 彼の口の中で舌が上下に動き、クリトリスの先端をはじいた。
「…きゃううッ!…うッ!…いくッ…」
 びゅううううううッ!…
 びゅううううッ!…
 彼の口はいっそう激しくむしゃぶりついている。
「…いくッ!…いくッ!…ぐ、うっ…」
 びゅううッ!…
 びゅッ!…
「…も、もう…だめっ…うむっ…」
 全身ががくがくと弾んだ。
 半魚人がやっと離れ、別の男が顔を静めてきた−−
「…もうっ…もう、いけない…許して…」
「わかってるわかってる。そうやって許しを請いながら、気絶するまで責められるの芽好きなんだろ?」
 ブラウスが開けられ、ブラが切り取られた。乳房への責めも始まってしまった。

8 戦士「夢姫」 VS 淫獣の群れ

「どうしたんだよ。呆けたような顔して」
 広間の隣にあるモニター=ルームに真夕は孝介といた。夕食を済ませたあと、夢姫の家にお泊まりして一緒に勉強するから、と言って出てきたのだ。孝介は真夕を車で迎えに行き、このアジトに連れてくると、拷問の輪には戻らず一緒に見物を決めこんでいた。
「あの子を陥れたことの罪深さを今さら思い知った、とかじゃないだろうな」
「…違うの。綺麗だな、と思って…」
 クンニリングスをメインとして全身の性感帯を同時に貪られ、 20 回ほどの絶頂。悲鳴と快楽を搾り取られてぐったりと力を失っている夢姫の裸体は、自ら放出した愛液と汗にまみれて輝くようだった。
「確かにな。寝顔もなんだか穏やかだ」
「ずっと溜め込んでいた欲望を解放されて、楽になったんじゃないかしら」
 アダルトサイトのこと、コスプレのこと、そして猪狩が「希」に入れあげていたことを、真夕は孝介から聞かされていた。
「誰にも言えなかった願望、受け入れてもらってるし」
「あれだけ可愛いけりゃ、多少のことはな」
「…にしても、 30 人のはずじゃなかったの。プラス 10 人はどこから?」
「本番はなしでいいから拷問を見物させてくれ、と頼まれたらしい。大人気だよ」
 猪狩たちは夢姫の全身の液体を拭い、濡れタオルで清めている。
「そろそろ再開だ」
 孝介が言うと、
「ねえ、この後はレイプ…するんでしょ」
 と、当たり前のことを真夕は訊いた。
「そうだ」
「…ひとりずつ?」
 真夕の瞳の奥に何かめらめらと燃えるものがある。
「何が言いたいんだ」
「さっきの動画みたいにしてやったら、どうかな」
 美少女戦士「希」が淫獣の群れに輪姦される動画だ。遅ればせながら真夕もさっき一通り見たのだ。
「男ふたりでサンドイッチにしてか?」
「そう。だって、自分で台詞をつけてるんでしょ。ぜったい願望があるのよ」
「あの子は処女だぞ。マワすだけでも非道いのに、二穴責めなんぞ、いくらなんでも無茶だろ」
「処女だからよ。この人数でしょう。前だけじゃ、それこそ無茶だって」
 一理あると言えば、言える−−
「お前だって後ろは経験ないくせに、よく言うぜ」
「それはいいの。あいつが徹底的に蹂躙されるのを、見てみたいの」
 真夕は嫉妬しているのだろうと孝介は思った。この間の体験でもう懲り懲りだと言ってはいたが、夢姫が自分のときの倍以上の人数に取り囲まれ、これからその全員を相手にすることになりそうな状況を見ているうち、改めて欲望に火が着いたようだった。前後二穴責めは真夕自身の願望である気がした。
 孝介は夢姫に唯一面が割れているし、声も知られている。マスクを被った上でバックを犯すならバレる心配はない。好都合である。
「提案してみよう。反対はないと思うから」
 そう言って真夕を残し、孝介は広間に戻った。

「お目覚めか」
 気がつくと、濡れタオルで身体を拭かれていた。私自身の汗と潮、それに男たちの汗や唾液などで、全身がべたべただった。
「…う、くっ…」
 乳房や脇腹に触れられると声が出てしまう。
 あんなに責められて、絶頂してしまったのに、まだ−−
「感度良好なのは変わらずだな。楽しませてやるぜ」
 へへへ…という下卑た嗤いがまた不安を呼び覚ます。始まるのだ。
「…うっ…」
 身体を拭かれている間は自由だった両腕。不意にまた後ろ手に組まされ、手首に縄が来た。
「…いや…縛られるの、いや…」
 これから地獄のような苦痛に堪えなくてはならないのだ。手の自由を奪われるのは怖い。
「淫獣に犯られる間、美少女戦士は触手で縛り上げられんるだろ」
「…それは…」
 そうなのだけれど−−
「脚を開け」
 正座を崩したような姿勢で座っていたのを立て膝にさせられると、脚を左右に引かれた。前に半魚人が来て、手にした瓶からクリーム状のものを指に取る。
「…なっ…何?…」
「じっとしてろ」
 太い指が秘裂に来て、クリームを塗り込み始めた。指は中にも侵入してくる。
「…く、うっ…いたッ…」
「止血と鎮痛の効用がある。さらに、こいつを塗られると、されたくて仕方がなくなる。そうでもなけりゃ、とても最後までもつまい」
 半魚人が仰向けに寝ると、見るだに恐ろしいサイズと形状のものが屹立していた。ZETTON のペニスの実物−−
 私が受け入れられるとはとうてい思えない。でも−−
 抵抗しようにも、そんな力は残っていなかった。もともと逃げられるわけはないのだ。他の男 2 人に腕を取られて、彼の腰の上に導かれる。
「そのまま跨がれ、希。 ZETTON さまが欲望を解放してやる」
「…おっ…お願い…乱暴にしないで…」
「任せろ」
 半魚人のたくましい両手が私の腰を捕らえる。秘裂に生暖かい肉塊の感触。
 思わず仰け反った、そのとき。
 ぐい、と引き落とされると同時に、凄まじい痛みが貫いてきた。
「きゃああああああ」
 全身が硬直する。頭が後方へ折れ、叫んだ口を閉じることができない。両目からぼろぼろと涙がこぼれた。
「…痛いッ!…いたいっ!…」
 引き裂かれる。気が遠くなるような痛み。刃物を突き刺されるほうがまし。
 両脚は左右に引かれて、身体を支えることもできない。
 私の腰を捕らえた両手にまた力がこもった。もう十分奥まで突き刺されたと思っていたそれが、さらにずうっ…と切り込んできた。
「きゃううううッ!」
 気絶しかけたが、それも許されなかった。それが上下に動き始めたのだ。
「…ひいいいいいっ!…やめてッ…やめ…」
 半魚人が身体を起こし、泣き叫ぶ私の唇を塞いだ。それを一旦離し、
「痛いのはわかってる。そのうち薬が効いて楽になるから、 30 数えろ」
 この痛みが和らぐとは到底思えなかった。でも、思いがけず優しい半魚人の声に縋りついた。
 1 … 2 … 3 … 4 …
 頭の中で念じていると、まるでそれに合わせるように、半魚人は腰を動かし始めた。
 何本ものナイフが突き刺さって、膣内を切り刻んでいるようだ。
「…あああああッ!…ゆるし」
 また唇を塞がれる−−
「可愛いぞ」
 そんな−−
 この状況で、そんなことを言われても、有り難くもなんともない。
「お前が可愛いから、全員でお前を犯す。覚悟はできてるんだよな」
 いつの間にか私は疲れ果ててしまって、激痛に泣き叫ぶこともできなくなっていた。それでただ、うっ、うっ…と啜り泣いていると−−
 痛みが次第に和らいできたのだ。無意識に 30 近くまで数えていた。
「…あ、あっ…」
 そして、なんということ−−半魚人が繰り返す忌まわしい律動が、私の下腹部に快楽の種を蒔き始めた。
「よくなってきただろう」
 肯定できずに、かぶりを振った。律動は続いている。
「…あっ…ああ、うっ…いや…」
「そんな切なげな声を出したのは初めてだな。気持ちよくなってきたんだろ」
 そんなはず−−
「…気持ちよく、なんか…」
 律動が激しくなる。座ったままの姿勢で、どうしてこんな動きができるのだろうかと、不思議だった。
「…あうッ…だ、だめ…」
「お前を処女喪失でイカせる。イクまで続けるからな」
 また唇を塞がれると、痛みを忘れそうなほどの幸福感に包まれた。
 膣内の粘膜が、凶器のような半魚人のそれを受け入れていく。
「か…絡みついて来やがる」
 太腿を抱え上げられる。半魚人が、私を抱き上げたまま立ち上がった。
 同時に私はさらに深々と抉られ、仰け反った。
「…きゃう、うッ!…」
 一瞬、目の前が真っ白になった。全身がぴくぴくと震えた。
「…いくっ…」
 プシャアアアア…
 激しく液体がしぶいた。
「おう!」
 半魚人が一声吠えると、
 ドピュ、ピュ。ピュ。
 熱いものが膣内に噴き上がる感触。射精されたのだ。
「…うう、うむっ…」
 半魚人の胸に縛られた上半身を預け、私は絶頂の余韻に堪える。
「ふーっ…ふーっ…参った参った。名器だな、希。ドクドク出ちまった。俺の精液は種なしにしてあるから、孕む心配はない」
 そのとき−−
 アヌスに指を感じて、振り返る。
「…なっ…何?…」
「こっちにも突っ込んでやろうってんだよ」
 後ろにいる男が、何かを塗り込めてくる−−
「お前のお気に入りの動画と同じようにしてやる。有り難く思え」
 まさか−−
 秘裂の痛みも忘れるほど狼狽する。顔から血の気が引いていく。
「…あっ…あれは…私が考えたんじゃなくて…」
 淫獣が複数いればそうなることになっているはずなのだ。
「お前は台詞を付けてたよなあ…ほら」
 促されると、スクリーンにはさっきも見せられた動画の一コマが。

   希: やめてっ!…前後から同時になんて、無理っ!…

 ZETTON と GOMORRA にサンドイッチにされるところだ。
「あの台詞を言ってみろ」
 半魚人が言う。射精を果たしたはずのペニスが再び硬度を増してきていた。
「…うっ…い、いや…」
「言いたくなるようにしてやるぜ」
 半魚人の両手がお尻を左右に割る。背後の男の手もそこに掛かる。
「…いやあっ!…お願い、やめてっ…」
「そうこなくちゃ」
 くくく…という冷たい嗤い声が私に絡みつく。
 熱い肉塊がアヌスに触れた。
「ほうら、突っ込まれるぞ。無理だって言わなきゃな」
「…む、無理っ!…同時になんて、無理っ…許してッ!…」
「よく言えた」
 ずいっ…と貫いてきた。
「…あああああーーっ…」
 まさか、現実に−−前と後ろから、同時に犯されるなんて−−
「…きゃあああっ、ああッ!…裂けるッ!…」
「そうとも。力を抜かないと本当に裂けるぞ。諦めて身体を預けろ」
 大きな胸にサンドイッチにされ、上下に揺すられながら犯されている。
 「希」ではなく、私のその姿がスクリーンに映し出されている。何十人もの男に取り囲まれて−−
 お前が可愛いから、全員でお前を犯す−−半魚人の言葉が脳裏に響いて、私の官能を揺さぶる。再び絶頂の予感がした−−

 それからずっと、夢姫はサンドイッチの状態で犯され続けた。前の男が射精すれば交代、後ろの男が射精すれば交代で、終止どちらかを貫かれていた。結局、前を 20 人、後ろを 10 人に犯されたところで、とうとう完全にダウンしてしまった。
 午前 6 時−−今、夢姫はスタッフに抱き上げられて、浴室へ運ばれていくところだ。そのまま別室で休ませることになっている。
「猪狩のおじさん」
 真夕が広間に忍び込んできていた。
「よう。いつからおったんや」
「夢姫が連続絶頂させられてるところ」
「真夕ちゃんのご依頼どおりやったが、気が済んだか」
「うん…気が済んだけど…」
「…けど?」
「…なんだか妬けちゃって…」
 猪狩と、近くにいた男たちが顔を見合わせる。
「真夕ちゃんも、あの子みたいにされてみたいのか」
「…はい…」
 それから真夕は床に正座して、猪狩や近くの男たちに頭を下げた。
「お願い…私も、あの子みたいにしてください」
 真夕がいるのに気づいて、他の男たちも集まって来た。
「 1 回ずつじゃ食い足りないと、ちょうど思ってたとこだよ」
「ダウンした友達の身代わりになろうってのか?」
 神妙に頷くと、真夕の両手が後ろ手に組まされた。
 手首に縄がかかるのを拒むこともなく、真夕は男たちに身を任せた−−

(C) 2016 針生ひかる@昇華堂

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