展翅の蝶−清香の受難−(サンプル)

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1 あるべからざる金

「それにしても迂闊だったな。君から聞くまで全然気がつかなかったぞ」
「厳重ですね。外部にバレないようにするには、役員にだって漏れてはならぬということでしょう」
 午前 1 時。経理部の隅で PC の画面を見つめる 2 人の姿があった。
「あの社長も長期政権だからな、腐敗するわけだ。 10 億も貯め込みやがって」
「これだけの規模の脱税が知れたら、ただでは済みませんね。社長の交代で済む話ではない」
「そうだな。だからといって、いまさら帳簿に戻すわけにもいかないだろうし」
 業界 3 位の佐伯製薬には互いに対立する 2 つの派閥がある。専務の武藤を実質的リーダーとする副社長の一派と、同じく専務の利根が率いる社長派だ。社長派には営業・経理畑の者が多く、利根は経理・財務部門の総括責任者である。一方、副社長派には開発部門の出身者が多く、武藤は長く開発本部長を務めた。
 経理部の部長代理・山井は、利根の承認による不自然な支出が不定期に繰り返されているのに気づいていた。その情報が武藤の耳に入ったのが 1 か月前。山井が密かに調査を進め、この日になって漸く、裏金を貯蔵していると思しき隠し口座のリストが完成したのだった。
 経理部の山井が開発担当の武藤に接触した理由は、ひとえに利根への怨恨であった。利根は人一倍仕事ができるがゆえに、配下の経理の人間には厳しく、ことごと辛くあたる。その矛先のひとりが中間管理職の山井だった。ある日、書類の他愛もない不備のため利根にしたたかに罵られた山井は、いよいよ腹に据えかねて武藤の役員室を訪ねたのである。もともと同じ高校の出身ということで、武藤と山井は知らない仲ではなかった。
「 10 億をどこかに移して、隠し口座はきれいに消滅させるのがいいでしょうね」
「そうだなあ。あるべからざる金には違いないが、しかしそれをブン捕るとなれば、横領には違いないよな」
「裏金じゃ、向こうだって警察に言えませんから」
「それもそうか…で、口座にログインできれば動かせるか」
「たぶん」
「すると、どこに移す」
「地球の裏側の、人目につかない銀行に口座を開いて、まとめて送金しますかね。送った金をどう切り分けるかは、ゆっくりご相談するとして」
「問題は口座のパスワードか」
「利根専務を訊問しても喋るはずがありませんし、ゾッとしませんね」
 想像するだに不快な利根の顔を思い浮かべながら、
「あ」
 武藤の頭には閃くものがあった。
「どうしました」
「利根の不倫の噂、知ってるか」
「いえ」
「奴の秘書だよ。役員フロアでは公然の秘密だ。妻とは別居中らしい」
「秘書、といいますと、もしかして奥田清香ですか」
「そうだ。利根の秘書といったらあいつしかいない」
「ええーっ…マジですか」
 山井の驚愕ぶり、そして落胆ぶりはただごとではなかった。
「なんだ。惚れていたとか?」
「いやまあ、ちょっと」
 がっくりとうなだれた頭をおもむろに起こしながら、山井が言う。
「あの子が、あのコワモテの利根専務とねえ」
「ところが、奥田は利根の秘書についたときから抵抗はなかったらしい。今じゃむしろ利根のほうが奥田の顔色を伺っている気配があるな」
「ひぇー…やるなあ。でも、そんな子だから秘書に抜擢されたんでしょうね」
「それでだ…利根が金の操作をしていると言われてみれば、思い当たるフシがある。ちょっと考えたいことがあるから、 2 、 3 日時間をくれるか」
「もちろん」
「今日はこれで解散としておこう。次は場所を変えて落ち合おうか」
 武藤がそう言うと、山井が PC をシャットダウンする−−

「どうした?…遠慮はいらん。来るんだ」
「…で、でも…」
「恥ずかしいのか」
 仰向けになった利根が頭を起こして私を誘う。顔の上に跨れ、と言うのだ。
「…それも、そうなのですけど…」
 どんな辛いことになるのか、考えただけでもおかしくなりそうだった。
「前からやってみたかったんだ。さあ」
 利根の目に欲望の光がぎらついている。私がこのまま引いていたら白けさせてしまう。それは彼が可哀想だった。彼は私をいかせたいのだ−−
「…優しく、してください…」
「それはどうかな」
 左右の膝で利根の上半身を挟みながら前へ進み、顔の真上に来た。
「もう雫が垂れてるじゃないか」
「…うそっ…」
「ほんとは期待してるんだよな?」
 ここまでの入念な愛撫で私の官能にはとうに火がついている。思いがけず「顔面騎乗位」などを要求され、不安とないまぜになって昂奮が一気に高まったのは確かだった。
「おいで。さあ…」
 おそるおそる、腰を下ろす−−
 利根の両手が腰に来て、ぐい、と引き寄せられた。
「…あっ…」
 そのまま、利根の唇に秘裂を押し付ける恰好になった。彼の鼻先にクリトリスが当たった。
「…あ、あああッ!…」
 秘部の柔肉に、唇と舌が猛然とむしゃぶりついてくる。腰を押さえつける彼の手に自分の手を重ねて制しようと試みたが、無駄な抵抗だった。
「…ひい、イッ!…」
 あっけなく昇り詰めた。絶頂の波に全身が震えた。そのまま崩れ落ちそうになったが、私の身体は利根のたくましい腕に支えられて、膝立ちの姿勢を保持させられている。
 責めの手が緩む気配はなかった。むしろ、利根の舌は活力を増したようだ。
「…く、ううッ…ああ、あッ!…」
 一度昇り詰めてしまうと、さらに敏感になる。くすぐったいような、もっと手荒にしてほしいような、何とも言い難い感覚。額に噴き出した汗が顔を流れ落ちる。
 クリトリスがすっかり充血して固くなっている。そこに利根の歯が来て、甘噛みされた。続けて、軸方向に歯でしごかれた。
「…いっ、痛っ…ひっ!…あ、ぐ…」
 呼吸が苦しい−−
「…いくッ!…」
 一度目よりも激しい絶頂の波。振り子のように揺れる私の身体を、利根の腕はなおも支えている。がっちりと、絶対に逃がさないとでもいうように。
 利根の唇と舌と歯が執拗に秘部をついばむ。彼の両手が腰から離れ、それは左右の太腿をしばらく擦っていたが−−次にお尻の肉を掴んだ。
 そして、指がアヌスに来た。
「…ああッ!…そ、そこはっ…だめッ!…」
 お尻をいじられるのは初めてだ。はじめは 1 本。やがてそれが 2 本になる。
 利根の指が直腸の中を掻き回している。恥ずかしい。そして、熱い。
 それが−−どうしたことだろう。
 次第に痺れるような、うっとりするような感覚に変わってきた−−
「アナルをいじったら愛液が溢れ出したぞ」
「…そっ、そんな…ああッ!…」
 私はもともと全身が過剰に敏感だ。耳に息を吹きかけられるだけで軽く達してしまうこともある。乳房や内腿を吸われると汗びっしょりになり、声を堪えきれない。
 とりわけ苦手なのがクンニリングスだった。もちろん、嫌いなのでは決してないが、感覚が激しすぎて辛いのだ。
 何人かの男性と関係を持ってみると、クンニの巧拙は人によって甚だしく違うとわかったのだが−−私にとっては下手なくらいで丁度良く、それでも私はわりあいあっけなくいかされてしまう。そもそも、相手の顔がそこに接近してくる時点で、早くも感じてしまっているのだから−−
 そんな私の反応におそらく嗜虐欲が満たされるのだろう、これまで付き合った男性たちはことごとく私の肌を貪るように求め、私とのセックスにのめりこんだ。利根も例外ではない。
「初めてだってのに、清香はアナルも感じるのか。いやらしい子だ」
 利根の唇が再び秘部に吸い付き−−
「…またいッ…」
 いっちゃう−−と告げる前に達した。
「…ううッ!…う、む…」
 背中がぐんと湾曲した。今度こそ、起きていられなかった。
 後ろへ崩れそうになるところを、利根に抱きかかえられる。
「ナマでいくぞ」
 利根の身体がするりと動いたかと思うと、下から貫かれた。
「…あああっ!…」
「ふふふ…奥までちゃんと入ったぞ…そうら」
 突き上げてくる−−
 利根に身を任せるようになってから 2 か月ほどになるが、うまく挿入できたことは幾度もなかった。きょう最後までできれば、きっとご満悦だ。
「…ああっ!…た、たすけてっ…」
 ピストンが続く。追い詰められてかぶりを振る私。ぎゅう、と締め付けてみる。十分な固さだった。
「おお、おっ…」
 萎えてしまう前に、どうぞこのまま射精して−−たぶん、大丈夫だから−−
「清香がまたイクのと、俺が出すのと、どちらが早いかな」
 利根も汗びっしょりだ。
「…だめっ…私…もう、だめッ!…」
「またイクのか?…先にイクのか?…」
「…いっ、いかせてっ…もう、もういくっ!…うむッ!…」
 昇り詰めながら、震える左右の太腿で利根の腰を締め付ける。利根の手が腰のくびれを押さえつけてくる。
「お、お…中に出すぞっ…いいよな?…おうっ!…」
 ドピュ、ドピュ。
「…あっ、あっ…」
 私の中で利根の欲情が爆ぜる。さすがに 60 代では量は多くないようだ。
 でも、熱い−−
「ふーっ、ふーっ…やったやった…」
 思いを遂げた利根がベッドに沈む。腰を上げて利根から離れ、口に含んだ。
「う…」
 私の愛液と利根の精液にまみれたそれを、私は舌でねぶり、吸う。不思議と苦みはない。少量なら嚥下しても平気だった。
「大丈夫かい」
 並んで横になる私に腕枕をして、髪を撫でてくる。行為の間は容赦がない感じだが、終わってしまえば利根はいつも優しい。
 彼の秘書になって 3 か月が経ったころ−−
 日帰り出張から戻る新幹線の車内で、利根は私に珍しく打ち明け話をした。奥さんとは別居中。有名私立に無理矢理入れた高校生の息子 2 人は、勉強からドロップアウトしてぐれている。自分は会社員としてそこそこ成功した部類だとは思うが、出世と引き替えに普通の幸福を遠ざけて来た気がする、と−−
 利根の珍しく沈みきった顔がいじらしくなり、東京駅で
「お酒を飲みに連れて行ってください」
と私から誘った。彼の行きつけのバーに向かい、初めて 2 人きりで飲んだ。
 その場で、一生のお願いだ。一度でいいから、俺のものになってくれ−−と、酔いに任せて身体を求められ、自然と応じた。私もセックスは好きだし、利根は男性としても好きなタイプだったので、拒まなかった。
 隠し口座のことを打ち明けられたのは、その夜だった。
 社長に命じられてやっているのだし、自分も多少は美味しい思いをしているのは確かだが、脱税に加担するのはどうしようもなく後ろめたいと彼は言った。気の利いた慰めの言葉が出てこなかった私は、利根の頭を裸の胸に抱き寄せて目を閉じていた。そのまま朝を迎え、こんなにぐっすり眠ったのは久しぶりだと、利根に感謝された。その日から、私は“共犯者”となった−−
 共犯といっても、私は利根の手足となって動いているだけ。でも、外部に知られてはならない秘密を共有していることには違いない。
 巻き添えにしてすまない、と利根には何度か詫びられた。でも、これも業務のうちと割り切れば平然としていられる。私自身がいい思いをしているわけではないのだし−−
「うまくいったよ」
 私の手に手を重ねて擦る利根は、初めて彼を受け入れた日のように嬉しそうだった。
「ご満足いただけて、よかった」
「君はどうだった」
「…いや…」
 わざとらしいかも知れないが、可愛い子ぶって利根の腕の中に潜り込む。
「…頭の中が、真っ白になりました…」
 利根が両腕で抱きしめてくる。
「可愛い」
 そう。利根は、私のことが可愛くて仕方がないらしい−−
「俺がそのうち社長になっても、秘書をしてくれよな」
「お望みでしたら」
「決まってるだろう」
「でも、私に務まるかしら…」
「ずっとそばにいてくれよ。君がいてくれなくちゃ、会社に行けなくなっちまうよ」
 まるで子供のようだ。今度は利根が私の胸にすがってくる。友達には貧乳とか微乳とか言われる私の乳房を、利根はこよなく愛している。
 利根の頭を撫でる私−−強面で知られる、父よりも年上の重役の頭を−−
 セックスでは私が受け身だけれど、精神的に支配しているのはどうやら私のほう−−
 ときどき考える。望んで入った会社だが、上司に肉体を提供し、汚職の片棒を担いでまで、どうしてこの会社で働いているのだろうと−−
 今のところは、現状に満足できているから、という以外に答が見つからない。入社するまでは、勤め先が確保され、自分の生活が安定して、実家にいくらかの仕送りができればそれでいいと思っていたのだ。今でこそ重役秘書に成り上がったが、この先、社長秘書だとか管理職を目指すといった“野望”があるわけでもない。
 能力を認められ、女としての魅力も認められている現状が、ただ心地良い。そうする中で、社内でのステイタスが上がっていくのは歓迎すべきことだ。
 社内でどんな風に思われていようとも−−

2 秘書の写真

 魔性というほどではないが、奥田清香は周囲の男をことごとく虜にする力のある、不思議な女だった。
 北陸の小都市の漆職人の家に生まれ、東北の某国立大学の工学部で経営工学を専攻した変わり種。佐伯製薬の総務課に配属されてすぐに事務能力の高さを示し、 2 年目から秘書課に移った。その翌年には経理担当重役・利根の専属秘書となっている。
 入社のころから蠱惑的な容姿で評判だった。身長 156 cm と小柄ながら、輝くような美貌は遠目にも目立つ。メゾソプラノの声には独特の艶があり、朗らかに笑う顔はぞくぞくするほど愛らしく、やや吊り上がり気味の目尻、整った歯並びなどに気を取られているうち、吸い込まれるように男は心を奪われてしまう。
 バランスの取れた伸びやかな肢体は、中学・高校と続けた新体操の鍛錬の賜らしい。新人のころの事務職の制服がよく似合ったし、今はスーツで勤務しているが、そのセンスもまた抜群だ。奥田清香が秘書課に配属となった当時、本社の役員フロアは仕事にならないのではないかとさえ言われたものである。ただし奥田清香が重役秘書という人事はまさに「はまり役」であり、社内の隅々にまで至極当然のこととして受け止められていた。
 奥田清香が手の届かない存在となってもなお、清香に心惹かれている本社の男性社員はいったい何人いるのか知れない。品良く染められたミドルの髪は前下がりボブにまとめ、耳には金や銀のピアスがあやしく光る。バストは小振りで貧乳の部類だが、そこはかとない胸のふくらみは細身にはむしろ似合って、美しい曲線を見せていた。
 そして何よりも、膝上数 cm のスカートから悩ましく伸びる、身長のわりに長い脚が、脚の好きな男たちには目の毒だった。清香自身も見られるのを承知で−−というよりは楽しむかのように脚を露出し、様々な色と柄のストッキングで美しい脚を演出し、社内を闊歩していたのである。
 清香は役員フロアばかりでなく、利根が経理担当であるために、経理部に出入りする機会も多い。そのため、清香のファン、つまり清香の肢体に挑発され、愛情よりは劣情に取り憑かれている男は経理部に特に多かった。盗撮された清香の写真も経理部内で“流通”しているという。
 一方で上司の利根はといえば、経理部の者にはきつく当たることも多く、それだけで反発を買っているのに、奥田清香を秘書につけているというので憎悪の対象にさえなっていたのである。
「そんな具合だから、奥田清香をどうにかしてやろうと妄想してる奴は経理には多いと思いますよ。さんざん悩まされてきてるわけだから、その積もりに積もった情念というか、劣情のマグマは恐ろしい規模でしょうねぇ」
 佐伯製薬本社から徒歩数分のマンションに武藤が借りている一室。山井が武藤に熱弁をふるっている。酔いが回り、遠慮がなくなっているのだ。
「そういうお前はどうなの」
「決まってるでしょう」
 目をぎらつかせて山井が言う。
「ああいうスリムな美人が俺は死ぬほど好きなんですよ。彼女が入社してきたころから可愛くて可愛くて」
「やりたい盛りの青少年みたいだな」
「ええ…いや、違いますね。犯りたいのももちろんですが、死ぬような目に遭わせてやりたいですね。奥田を犯ってしまえば、奥田にメロメロの利根への報復にもなりますしねぇ」
 山井の目に悪意の炎が燃えている。
「お前、独身だろ。アタックしてみれば」
 そういう武藤に、山井はだめだめ…という風に手を振って、
「俺も四捨五入で 50 になりますからね。彼女は確かまだ 25 で」
「利根の愛人をやってるくらいだから、オヤジが好きなんじゃないか」
「利根は 60 代にしては若いし、髪もフサフサ、腹も出ていないでしょう。悔しいけど俺とは対照的ですよ。じっさい、奥田が経理に来たときに話すことがありますが、あれは私を嫌ってますね」
 確かに、山井は頭髪も後退し、顔の皮膚はくたびれ、腹もしっかり出ている。ものの見事にその辺のオヤジであるが−−
「奥田が来ると俺はどうしても見てしまうでしょ。その視線がどうも不快らしいんです。生理的に受け付けないんじゃないかなあ」
「そこまで言うな。気のせいだろう」
「わかるんです。だいたい、向こうの方が役者が上ですね。縁があったとしても絶対に釣り合わない。俺って、若い頃から性欲が先走って失敗ばかりなんですよ」
 あああ、と山井はがっくりうなだれる。
「あの子が利根専務とねぇ…」
 無念、悔しいとかぶりを振る。眼にはうっすらと涙さえ浮いている。
「よしよし、お前には協力してもらうから、少し我慢しててくれよ」
 武藤はといえば、利根とは入社が 1 年違うだけの同年配ながら、中学時代からの剣道を今も続けている健康体。野武士のような風貌は迫力があった。
「…協力?」
「その奥田をな…拉致して拷問するつもりだ。もちろん、女ならではの苦しみを味わってもらう」
 山井の目に驚愕と狂喜の色がさした。
「なんですって」
「いやか。それとも利根のほうを拷問するか」
「ご冗談を…って、専務ももしかして」
「俺はな、山井。奥田清香にあの脚を毎日見せつけられてるんだぞ」
「そうですよね」
「淡い感情もないではないが、どちらかといえば俺も鬱憤が溜まってるんだよ」
 山井が感激した様子で武藤の手を取る。
「奥田に対する利根の入れあげようからすると、隠し口座の件は寝物語にでも喋っている可能性が大だな。それに、奥田がときどき単独で外出していることもある。利根の手足になって金をいじってるのかもな」
「何も知らされてない、ってことはないですかね」
「それならそれで、奥田を操れるようにすればいい。俺たちに従わざるを得ないようにしてやるまでだ」
「なるほど。情報はもちろん欲しいが」
「それにかこつけて奥田を監禁・拷問できるだろ」
「専務もワルでいらっしゃる」
 武藤はほくそ笑むだけだが、山井はひひひ…と露骨に笑う。
「…でも専務」
「なんだ」
「拉致して拷問…って、そんなに簡単にできますかね」
「俺たちだけでは無理だな。そんなの、やったことないからな。場所だって簡単には見つからん」
 武藤は、その辺りは手を打ってある、という口ぶりだ。
「奥田は吸い込まれそうな魅惑的な女だ。あの美貌を前にして、非情に徹しきれない可能性がある。役不足というべきかな。だからこっちは圧倒的な戦力をもって臨まないとな」
「では」
「蛇の道ってやつだ。そういうのが得意な奴に手伝ってもらう」
「だれですか」
「小学校以来の腐れ縁で、その筋のがいるんだよ。表向きは海運業で、鬼頭というんだが、これがまた、とんでもない女好きなんだ。報酬は金が入ってからでいいそうだ」
「交友関係が…広いんですね」
「まあな…で、昨日会ったんだが、奥田のことを話したら大乗り気だったよ」
 武藤がいま思いついた、という風に、山井の携帯を見る。
「山井、もしかしてそこに奥田の写真、入ってないか」
「えっ…」
「あるんだろ」
「…ありますけど。よくおわかりで」
「やっぱりな。見せてくれ」
「それは、ちょっと」
「だいたい見当はついてる。いいから見せてくれ」
 もじもじしながら自分の携帯を差し出す山井。
「知り合いに頼んで、シャッター音がしないように改造したんですよ」
「いいんだ。別に責めてるわけじゃない。責めたいのは奥田清香だよ」
 見ると、出るわ出るわ…という感じで奥田清香の画像。それも−−
 顔のアップはもちろんだが、全身のほか、胸元のアップ、耳朶に輝くピアスのアップ、夏場のブラウス姿などなど、豊富な種類と数−−そして、圧巻は脚のアップだった。スカートの色も、ストッキングの色も様々。
 まるで奥田清香の日々の装いを記録しているようだ。
「忙しい中、ご苦労だなあ。でも、見事だ。よくぞこれだけ撮った」
「お恥ずかしいです…でも、それは」
「コピーさせてもらっていいか」
「専務も、お使いになるので」
「ふふ…俺にとってもお宝だが、鬼頭にも渡す。奴と奴んとこの若い衆に、せいぜい鑑賞しといてもらおう」

(C) 2011 針生ひかる@昇華堂

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