壁の眼−桜子の受難−

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1 週末の遊戯

「…以上、真野がお伝えしました。良い週末をお過ごしください」
 金曜から日付が変わって土曜となった午前0時台。キー局のニュース番組が終わり、地方局からの短いニュースの時間。私はその週の最後のニュースを読み終え、カメラに向けて頭を垂れた。
 反省会と翌週の簡単な打合せを終え、私は自分のデスクに戻って帰り支度を始める。平常ならこれから月曜午後までオフなのだが、日曜はイベントの司会を頼まれているから、早朝から出かけなくてはならない。北海道の初夏は各地でイベントが盛ん。地方局のアナもこの時期はけっこう忙しい。
「真野さん、これから軽くどうです?」
 ADの堺くんがグラスを持つジェスチャーをする。私の4年後輩になる彼は、多忙を極めながらも仕事に余裕が出てきて、異性の先輩を飲みに誘うのにも躊躇がない。
「ありがと…明後日早いので、今日は帰るわ。また誘って」
「そうですか。じゃ、来週にでも」
 堺くんは細身の長身で、なんとなくいつも薄笑いを浮かべているような表情なのが初めは気になった。何を考えているのかわからないようなところもあるが、仕事はできるし、性格は温厚で鷹揚、好感が持てる人柄だ。ちょっと可愛いとも思う。
 だから誘われて悪い気はしないのだが、週末は自宅でゆっくり過ごしたい訳があるのだった。
「桜子ちゃん、お疲れ。今日もよかったよぉ」
 廊下で会ったのは編成部長の郷田さん。この人が私に向かって「よかった」と言う場合、それはアナウンスの出来のことではない。画面へのアピールのことである。
 地方局のニュース番組はほんの数分ということもあって、アナウンサーは日替わり、セットらしいセットもなく、胸から上だけ見せて喋るのが普通だ。我が「札幌文化放送」SBCのニュースも長らくそうだった。
 それが、郷田さんが編成部長になってから、午前0時台のニュースに限り、平日は特定の女子アナに固定、小綺麗なセットも作り、衣装・メイクもそれなりに入念にして出演するようになった。キー局のニュース番組が綺麗どころを揃えているのに対し、あまりに見劣りがするというのが理由だった。
 ニュース番組は見栄えではなく内容と迅速性であろう、見栄えはキー局に任せておけばいい、という反対意見も当然のように出たが、豪腕の郷田部長が押し切った。郷田さんいわく、キー局の女子アナの人気におぶさっているのも地方局としては癪である、地方局も「綺麗どころ」を出せば視聴率に貢献するはずだ−−
 その「綺麗どころ」としての自信は今ひとつだったが、平日枠のキャスターに私は指名されたのだった。入社10年目、実力も経験もそれなり。容色はくたびれてきているかも知れないが、まだ同僚の誰にも引けを取らないつもりだ。
 だが、抜擢されたのは郷田部長の強いプッシュがあったからだと聞いている。
 そして、今でも気になっているのだが−−
−−真野を出して、脚を見せろ。
 そう指示があったらしい。
 キー局の女子アナがそうしているように−−
 ニュースの伝達に、女子アナの脚は関係ないはずである。だが、事実として、女子アナの脚を目当てにニュースを見ている男性も少なからずいるようである。どこのチャンネルに合わせても女子アナの美脚比べになっているのがその証拠だ。その風潮にSBCも同調。SBCの「美脚」は真野桜子の脚だということである。
 私は自分の脚が気に入っている。高校までテニスをしていたせいで、細いわりにふくらはぎが少々筋肉質だが、30を過ぎるころからほどよく脂が乗ってきて「鑑賞に堪える」ものになった気がする。
 だが、電波の届く北海道じゅうに毎夜脚を晒して、落ち着かないのも確かだった。そんなに大勢とも思えないが、真野桜子の脚を見たさにSBC深夜0時台のニュースを見ている男性は、一定数いるだろう。
 そして、部長が直々に脚を見せろと指示が出たということは、部長は私の脚に少なくとも何らかの評価をしているということである。ありていに言えば、郷田は私の脚が好きなのだ−−。
 私は全体に見栄えのいいほうではない。身長は160cm、細身で、バスト80・Bカップの「貧乳」だ。多少の自信があるのは首から上と膝から下。そんな私だが、幸いにして北海道の女子アナとしては売れているほうである。
 そして、入社当時から郷田部長には可愛がられてきた。もちろん、仕事の上でのことなのだが−−
「今日はこれからどうする?」
 郷田が私を凝視していた。濃い水色の七分袖ブラウスに、膝丈の白のスカート。白のストッキングに濃紺のピンヒール。ショートの髪に軽くウェーブをかけ、耳にはパールのピアス。今このまま画面に出ても大丈夫な程度には整えてある。
「たまには軽くどうだい」
 それなら堺くんに付き合ったほうがましだった。
「ありがとうございます。あいにく明後日早いものですから、今日は帰って休もうかと」
「つれないな。聞いてるぞ、今は独りに戻ったんだって」
 セクハラ発言に違いないが、立場上このくらいは我慢しなくてはならない。ただ、あまり大きな声で言ってほしくない。
 キー局の女子アナと違い、アイドルのように騒がれはしないので、結婚したり離婚したりしても周知のこととはならない。だから結婚してもそのまま仕事を続ける人は多いし、離婚しても同じ。
 私は30を目前にしたころ、学生時代以来の付き合いだった彼と入籍した。が、彼がやっていた事業が頓挫しかけて、彼は家に帰って来なくなり、しばらくして離婚届が郵送されてきた。今は「32歳バツ1」というわけだ。札幌の都心のマンションに気楽な独り住まいである。
 私が結婚したことも、離婚したことも、同僚さえ知らなかったりするが、会社の人事には報告しなくてはならない。上司には当然知られてしまうことになる。
「新しい彼氏と飲みにでもいくんじゃないのか」
「ご想像にお任せします」
 常套句を言い、軽く会釈して立ち去る。
 自分がそわそわしているという自覚があった。荷物が届いているはずだったから−−

 タクシーを降り、しばらく歩いてマンションに入る。玄関脇の郵便受けを開けると、果たして小さな包みが届いていた。ラベルには「PC用品」とだけ記載されている。それを持ってエレベータに乗り、10階まで。
 待ちに待っていた品だった。いそいそと部屋に入り、ベッドの上で開梱する。紙のクッション材に隠されて、特製のバイブレータが出てきた。
「…きゃー。来たのね…どうしましょ…」
 この会社のインターネット通販でオナニーの器具を買うのはこれで3度目だ。当初、住所や本名が知られてしまうのに躊躇いはあったが、女性だけでやっている会社らしく、またホームページもしっかりしていたので、信用がおけると判断したのだった。女性のために、化粧品やサプリメント、そしてオナニーグッズを開発・販売しているのである。
 オナニーは中学生のころからしているが、毎夜のようにするようになったのは離婚してからだ。やがて指で刺激するだけでは飽き足らなくなり、バイブレータを求めるようになった。もちろんその手のショップに出かけることはできないし、人に頼むわけにもいかない。そこで探し当てたのがこの会社の通販だったのである。
 最初は初心者向けのごく小振りのもの。ただし、女性が開発しただけあって、巷に出回っているような、男性自身を模したバイブとは随分様子が違っていた。中程で折れ曲がり、奥に入る部分が絶妙のグラインドをする。根本の近くには細かい突起がびっしり植えてあり、振動しながらクリトリスを刺激してくる。そのバイブを初めて使った日、あまりの心地よさに夢中になり、続けざまに何度も昇り詰めた。シーツはそれまで経験したことがないほどに、ぐしょ濡れだった。
 以来そのバイブなしではオナニーができなくなったが、私の性欲はそれに留まらず、もうひとつの穴−−アヌスを塞ぐ道具を欲した。それで、2度目のネットでの買い物はアナルパールになった。アナルは未経験なくせに、そこへ挿入される願望だけは強かったのだ。ただ、固いバイブを挿れるのはやはり怖かったので、柔軟なアナルパールにしたのである。じっさい、私の官能を高めるにはそれで十分だった。
 アナルパールを挿れたまま、ヴァギナにはバイブを挿れ、私の秘部は2本の器具に前後から激しく抉られるのが常態となった。
 そして、それにも飽きたらず、今度はより大型で強力なバイブを入手したのだった。構造は初心者向けのものと似ているが、膣口や肉壁を刺激する突起が随所についている。クリトリス刺激部分には微細な毛が無数に生えていて、ちょうど電動歯ブラシのようだ。電動歯ブラシでクリを刺激すると、あまりの感覚に失神するほどだと何かで読んだ憶えがある。まだ試したことはないけれど。
「桜子ちゃん、待っててね…いま、いいことしてあげるからね…」
 落ち着かない自分をなだめるように言いながら、私はオナニーの準備を始めた。小道具を納めた箱を取り出して、ベッドの脇に置く。
 会社を出るころから、性欲が高まっていた。それは今日に限ったことではない。テレビに映し出されて北海道中の男性にこの脚を鑑賞され、目で犯されているのだと意識するたびに、私の下腹はむらむらと落ち着かなくなるのである。
 姿見に全身を映す。
 壁にもたれて立ち、両手を後ろに組む。膝丈のスカートの裾から伸びる脚をそろえて、恥じらうように少しくねらせてみる。胸のふくらみは注意しなくては認められないほどだが、細身にはよく似合っているはず。
 私は綺麗だ。ドキドキするくらい−−
 私の中のスイッチが入り、妄想が始まる−−

 私はSBCの人気女子アナ・真野桜子。北海道中の男性の憧れの的。中には偏執的につきまとうファンもいる。ストーカー被害に遭ったこともある。
 毎夜ニュース番組で美貌と美脚を晒しているうちに、ある変質者の劣情を刺激してしまっていた。ある日、局からの帰路、彼に尾行され拉致−−詳細はどうでもいい−−されてしまったのだった。
「…わ、私を…どうするの…」
 彼の目的が何なのかははっきりしているのに、問わずにはいられない。
「…お願いっ…乱暴にだけはしないで…」
 決まりきった台詞を口にするうちに官能が高まってくる。
「…何をしてもいいからっ…」
 ブラウスのボタンをゆっくり外していく。変質者に肌を見られるのだ。
 ブラウスの次はスカート。ジッパーを下ろし、すとん、と落とす。
 そしてブラを取る。貧乳が現れる。形は悪くないが−−
「…いやっ!…」
 妄想の中で、私はベッドに放り出される。そして−−
「…やっ、やめてっ!…そんな…」
 ベッドの脇の箱には、古いパンストの廃物利用で拵えたロープがある。私の手はそのロープを取り、私の左の足首を縛る。それはベッドの支柱をくぐって、右の足首にからみ−−
 それをぐいと引くと、私の両脚は無惨にも引き裂かれてゆく。
「…いやあっ!…やめて、縛らないで…」
 乳房を揉む。そして、左右の太腿をさわさわと撫でる。
「…うっ、うっ…い、いや…あっ…」
 毎夜テレビの画面に晒してしまっている私の脚。その脚は、ひどく敏感な性感帯だ。
−−ほう、桜子ちゃんは脚がビンカンなんだな…
−−そのビンカンな脚をテレビで見せびらかして、何を妄想してたんだ?
「…そっ、そんな…私は…ああっ…」
 いつのまにか陵辱者の数が増えている。縛られて、複数の変質者におもちゃにされているのだ。
 本当は、両手を後ろ手に縛られてみたい。そうして、身体の自由を完全に奪われた状態で、めちゃめちゃに虐められてみたいのだ。しかし、自分で自分の腕を縛ることは適わず、他人に委ねることはできない。わかりきったことだが、いつももどかしい思いをするところだ。
 左右の太腿の片方ずつに、両手の指をぐるりと這わせてみる。
「…あぐっ!…」
 太腿の内側はもちろんだが、外側を微妙なタッチで撫でられるのもこたえる。
 私は左右の手に毛バタキを持つ。爪先から太腿まで、さわさわと愛撫する。
「…ひいい…」
 それを数分続ける。私は脚じゅうを襲う感覚に汗だくだ。
−−いやらしい匂いがしてるぞ…
−−そろそろご挨拶といくか…
 ピリリ。
 両手が、パンストを引き裂く。
「…あっ、いやっ!…」
−−いやじゃないだろう、早くどうにかしてほしいんだろうが。
 ジョキリ。
 パンティにハサミが入った。
「…ああ…」
−−なんだ、大変なことになってるじゃないか。
−−ダンナと別れてから、ろくにしてないんだろ。たまってるんだろ、真野アナは。
 私はバイブの1号機を手にする。まだ挿入はしない。なぜなら、私はまず首謀者のクンニリングスでいかされるからだ。
 私の太腿の間には、大型の犬の縫いぐるみ。変質者の頭が私のそこに沈もうとしている−−
 そして、左手にバイブ。バイブのクリ責め部のスイッチを入れると、そこが蠢動を始める。
「…や、やめてっ…それだけは、しないで…」
 それに期待しながらも、陵辱者たちに恥ずかしい瞬間を見せてしまうのが怖いのだ。
−−何を言ってやがる。されたくて気が狂いそうなんだろ?
−−いま、楽にしてやるから…
 ブブブ…
 バイブのそこが、私のクリトリスに近づく。
 妄想の中で、私の太腿が男の頭を挟む。
「…ああ、あっ!…」
 さんざん脚を責められたあげくに急所を刺激されて、私はひとたまりもなく昇り詰める。
 ふくらはぎがぴくぴくと震える。足首を戒めているロープがぴんと引かれる。
−−へへへ、見事な往生ぶりだったな、真野アナ。
−−あっけないもんだな。やっぱり、たまってたんだろう。
 軽い失神から目覚め、私ははっとそこを見る。男が離れ、次の責めが始まろうとしているのだ。
 私の右手にはアナルパール。
「…なに?…何をするんです…」
−−早く前に欲しいんだろうが、そうはいかないんだぜ。
−−こっちは処女なんだろうが…
「…や、やめてっ!…そんなところ…」
−−楽しませてやるから…
 アナルパールにはローションが塗ってある。私の右手はアヌスにもローションを塗っていく。
「…うっ…ゆるしてぇ…こ、こわい…」
−−力を抜きな。さもないと裂けるぜ。
 恐ろしい言葉にすくみ上がる私。アナルパールで裂けたりはしないのを知ってはいるけれど。
 先端が入ってくる。
「…ひい…」
 その後は一気にいく。
 ズズズ…
 いくつもの小球が、私のアヌスを犯していく。
「…あああーっ!…」
−−へへへ…ちゃんと入ったろ?桜子はけっこう素質があるのかもな。
「…そこは…そこはいやっ…ぬ、抜いてぇ…」
−−くくく…抜いていいのか?抜くぞ?…
 ねじ込まれたアナルパールの小球を、ひとつ、またひとつと引き摺り出す。それがアヌスの肉襞にいいようのない官能を呼び起こす。
「…いいいっ!…」
−−へへへ…腰を振っちゃって、あられもないな。
−−真野アナはアナルも感じると。
−−こっちは初めてなんだろう?それにしちゃ、いやらしすぎるんじゃないか?
 引き摺り出された小球を再び押し込んでいく。
「…あっ、うっ!…や、やめてぇ…」
−−だめだめ…これから前にもいくぜ。
 バイブ1号機が唸りを上げている。
「…そっ…そんな…ゆるして…」
−−前後から二本刺しだ。いい夢見させてやるぜ…
 私の左手はアナルパールを操り、右手はバイブをヴァギナに近づけていく。かぶりを振りながら、そこを見ずにはいられない。
「…お願いっ!…いやあっ…」
 ズブブ…
 バイブが私を犯す。
「…あああーーっ!…」
−−へへへ…ギュウギュウ締め付けてくらぁ。真野アナのここはなかなかいい具合だぜ…
 アナルパールとバイブが私を前後から抉り、私を追い詰めてゆく。
「…うっ、うっ…もっ、もうだめ…私…」
−−またいくのか?アナルとオ●ンコに二本刺しされて、いくのか?
 両手が激しく私のそこを責め立てて−−
「…もうだめっ!…」
 びゅうっ!…
 秘部から愛液がほとびり出る。このバイブの先端は、私のいわゆるGスポットをいい具合に摩擦してくる。それで私はたびたび潮を吹くようになってしまった。
−−ひょおおーっ!
−−桜子ちゃんは潮吹き女だったのか!
「…いく…いくっ…」
 またしても全身を硬直させて昇り詰める私。
−−また盛大にいったもんだな。大した好き者だよ、真野アナは…
 私が絶頂しても、彼らの責めの手が緩むことはない。むしろ熱を帯びていく。
「…お、お願い…少し休ませて…」
−−この程度でダウンされちゃ、つまらないんだよ。
 そこにある、ひと回り大きいバイブに私は驚愕する。
「…ま、待って…まさか、それを私に?…」
−−そうよ。32歳の熟れ盛りにさっきのじゃ物足りないだろうからな。
「…むっ…無理…絶対無理っ!…」
−−大丈夫、うまく挿れてやるからよ。
−−おい、押さえつけろ。
 いったい何人いるのかわからない男たちが、私の脚を、腰を、おさえつけにかかる。
 バイブ2号機がグラインドを始める。
 アヌスはアナルパールに抉られたままだ。
「…いや、あっ!…」
 バイブが容赦なく入ってきた。
「…ぐ、うっ!…」
 経験したことのないサイズだった。中が潤っていなければとうてい受け入れられなかっただろう。
−−へへへ…なっ?ちゃんと入ったろ?
「…う、動かさないで…」
−−そうはいくかよ。桜子は特大のバイブでいかされまくるんだぜ。
 私の右手が、おそるおそるバイブを抽送し始める。
「…あっ!…だ、だめ…ひいっ!…」
 私の肉壁がバイブにからみつき、貪欲にも、さらなる快楽を求め始めた。
−−トドメを刺してやろうな…
 クリ刺激部のスイッチを入れる。
 無数の繊毛がうなりを上げ、信じられないほどの刺激をそこにもたらした。
「…ゆっ、許してっ!…死んじゃ…あっ!…」
 びゅっ!…びゅうっ!…
 再び激しく噴き上がる愛液。
「…いくっ…うむっ!…」
 これまでのオナニーでは経験したことのない、快楽を通り越した、底無しの闇のような感覚。
「…う、うっ…も、もう、許して…」
 両足首を縛られ、蠢動するバイブとアナルパールに抉られたまま、私は眠りに落ちていった。

2 監視する者

 週が開けて月曜。唐突にその“警告”は来た。

 真野桜子さま
 夜ごとのオナニー、お疲れ様です。
 32歳の熟れ盛りに彼氏もなしでは、身が持たないのですね。
 かわいそうに…
 だからバイブを2本、アナルパールまで手に入れて、
 過酷なほどに自分を慰めるのですね。
 オナニーが過ぎると肌に出ますよ。
 可愛らしい顔がやつれて見えますから、どうぞほどほどに。
 P.S. 私は貴女の大ファンです。いつも貴女の脚に欲情しています。
 桜淫会会長 SKY


 マウスを持つ手がわなわなと震えた。
 いったい、どういうこと−−?
 マスコミの性格上、社員個人に来るメールはフリーだ。だからいろんなメールが来る。ウィルス対策はサーバのほうでやってくれているので、ひとまず心配はない。
 社員のメールアドレスは非公開だけれど、manosakurako@sbc.co.jp などというアドレスはすぐに見当がつくのだろう。
 だからたまにファンだという人からも来る。私がバツ1だと知って、卑猥なことを書いてくる人もいる。
 だが、私のオナニーの詳細に触れたメールはもちろん初めてだ。
 他人に見られてはまずいので、すぐに文面を閉じた。そのメールを別のファイルに移して、ロックをかける。さらに、サーバからそのメールを消去するコマンドを実行した。
 いったい、どうなっているの?−−
 どうして、知っているの?−−
 恥ずかしいのと、怖いのとで、頭の中が真っ白になった。
「真野さん、どうしたんですか」
 堺くんが心配そうにこちらを見ていた。顔を向けると、
「顔、真っ青ですよ。…というか、蒼白っていうか」
「…とっ…」
 言葉が出てこない。
「…友達がね…重病らしくって」
「えっ、そりゃ大変…面倒な仕事、手伝いますから、言ってくださいね」
「…ありがと…」
 涙が出てきてしまった。堺くんの優しい言葉のせいではない。ショックなのだ。
 本番が近づいていた。メイクをする前で良かったが、泣いてしまったこともあって、顔を直しにトイレに入った。動転した精神はなかなか落ち着かなかったが、本番はこなさなくてはならない。
 −−オナニーが過ぎると肌に出ますよ。
 先のメールの一文が気にかかっていた。もしかしたら、調子に乗ってオナニーをしているせいで目にクマでもできていはしないかと急速に不安になったのだ。バイブ2号機での初オナニーをした土曜のあと、日帰りで道南まで行った昨日の夜にも、けっこう激しくしてしまった。そして今日、出勤する前にも−−私はまるで色情狂にでもなったかのように、オナニーに夢中だ。自分を犯しても犯しても、足りない。何度昇り詰めても、どれだけ潮を吹いても、私の性欲は治まらず、次を求めた。
「…昨夜よく眠れなかったんだけど、目の下とか大丈夫かしら…」
 メイクの女の子に一応問うてみる。眠れなかったというのは大嘘だ。疲れ果ててそのまま眠ってしまうほどオナニーをしているのだから。
「なんともないですよ」
「そう…良かった」
「それより、何かありました?顔色が…」
「…え、うん、ちょっとね…大丈夫だから…」
 実際は大丈夫ではなかった。たまたま変質者の事件があり、自分の妄想ともろにダブる部分があったために、私は最近では珍しく読み違えを犯した。また、画面に脚を見せていることがいつもに増して気になり、終始そわそわと落ち着かなかった。ほとんど心そこにあらずといった感覚で原稿を読んでいたのだった。
 もちろん、生なのでやり直しはきかない。
「桜子ちゃん、どうした?」
 反省会のあと、さすがにがっくりきているところへ、郷田部長がやってきた。
「すみません、プライベートなことを引き摺ってしまいまして…」
「相談に乗るぞ」
 放っておいてほしい。特にこの人には。

 真野桜子さま
 今夜はさんざんでしたね。だから言ったでしょう。
 オナニーのし過ぎに気をつけてくださいって。
 新しいバイブが届いたその日は、オフの前だったし、
 嬉しくて夢中になったのも無理ないですが、
 出張から戻って疲れているその夜にもまたしたり、
 仕事に出かける前とかにもまたしてるでしょう。
 ご自愛くださいね。
 P.S. 桜子さんの脚はいつも綺麗でエロティックですよ。
 足首を縛っているのは、緊縛願望があるから?
 桜淫会会長 SKY


 メールを見た途端に、がたん、と音を立てて立ち上がった。何事かという視線が周囲から浴びせられる。慌てて取り繕うが、狼狽した表情は隠せなかったはずだった。
 自分のオナニーのことなど、まかり間違っても喋ったことはない。あの会社から漏れたのかとも考えたが、女性の会社であり、そんなことをしても利益にはならない。
 それに、私がいつオナニーをしているか、そして足首の縄のことなど、絶対に関知しないはず。
 私のオナニーの詳細を知っているということは−−
 あの部屋に目があるから?−−
 だれかに、のぞき見られている?−−
 防音の行き届いたマンションの10階で、窓には厚いカーテンを張っている。外から見られたり、外に声が漏れたりはしないはず。
 それなら−−
 監視カメラ。
 その可能性は疑う必要がある。
 続けてもう1本来た。

 真野桜子さま
 あなたの身体を預けてくれませんか。
 お望みの快楽を与えてあげますよ。
 きっと忘れられない夜になるでしょう。
 もちろん、抵抗できないように縛ってあげます。両手もね。
 いろんなオモチャで弄ばれるのがいいですか?
 それとも、20 cmの巨根で子宮まで貫かれるのがいいかな?
 前後二本刺しを実際に経験してみたいですか?
 大の字に縛り上げて、全身ナメナメしてあげましょうか?
 こってりしたSMプレイがお望みなら、それも実現してあげましょう。
 お返事お待ちしています。
 桜淫会会長 SKY


 私の身体を要求し始めた−−私の願望を把握した上で−−。
 初めからそれが目的だったのだろう。
 “敵”は、誰にも知られたくない私の秘密を握った。それで、秘密を守るための代償を求める。  残念ながら、私には逆らう術がない−−
 何はさておき、このSKYという男?からのメールが会社に来ないように、手を打たねばならなかった。ただ、受信拒否をして済むことではない。私の恥ずかしい秘密を、いつどこでゴシップとして売られるか、わかったものではない。
 警察に届けることも、もちろんできない。現時点では直接の被害はないのだし、しかも内容が内容だけに、間違っても第三者には相談できない。
 しかたなく、私は彼に返信のメールを打つことにした。

 SKY様
 メールをいただいた真野です。
 何がお望みかはわかりませんが、業務に支障をきたしておりますので、
 今後、メールは社のほうではなく、このアドレスにお願いします。
 sakurasakura@*****.com


 聞き届けられれば、自宅のPCのほうに、またメールが届くはずだった。
 ひどく消耗させられる一日が終わり、私は帰路に着く−−
 果たして、帰宅すると既にメールが来ていた。

 真野桜子さま
 貴女のほうからメールをくださるとは、光栄です。
 でも、賢明な判断ですよ。
 あのまま放置されていたら、貴女の恥ずかしい秘密を、
 ネット上に暴露していたかも知れません。
 (そうしたら、真野アナも一気に全国区ですけどね)
 桜淫会会長 SKY


 やはり−−
 ひたすら無視を決め込んでいようものなら、とんでもないことになるところだった。
 それにしても−−
 私は暗澹たる気分になった。
 そうしているうちにも、私の手は私の脚をさすり、そのうちスカートの中に入って秘部をまさぐる。文字通り、自分を慰めようとするのだ。いつの間にか癖になってしまったようだ。
 すると、またメールが来た。

 真野桜子さま
 今もそうしてオナニーを始めようとしたでしょう。
 懲りないひとだなあ(笑)
 そうそう、桜淫会というのは、
 真野桜子をネタに淫らな妄想を逞しくする会 です。
 私はそこの会長です。
 SKY


 ぎょっとして下半身から手を離し、周囲を見渡す。
 監視カメラの可能性を、忘れていた−−
 桜淫会?
 淫らな妄想をされるのは仕方ないとしても−−
 相手はひとりでは、ない?−−
 私ひとりでは事態を収拾できない。そんな気配が濃厚となってきた。

 その夜はそのままメールもせず、もちろんオナニーもできずに、翌日を迎えた。
 社の方にメールは来なかった。ひとまずほっとして帰宅すると、またSKYからメールが来ていた。

 真野桜子さま
 私の目が気になってオナニーができないでしょう。
 そうそう、それがいいですよ。身体を休めないとね。
 貴女の映像のファイルを添付しました。
 ご感想をお待ちします。
 SKY


 いやな予感がしてそのファイルを開くと−−
 いま自分がいるその部屋の、寝室のベッドにカメラが向けられていた。天井から見下ろすアングルだ。
 そこに−−
 両脚を70度ほどに開き、足首を縛られて、毛バタキで脚じゅうをくすぐられている私がいた。ピントはいまひとつだが、歓喜の涙を流して悶えている女が真野桜子であることは瞭然としている。
 映像の中の私は、やがてバイブ1号機と犬の縫いぐるみに犯され−−
 あえなく昇り詰める。
 真野桜子の絶頂シーンだ。
 恥ずかしい悲鳴も入っている。
 それが私の妄想を具現化したものであり、クンニリングスでいかされる場面を想定したものであるのは明らかだ。
 続けてアナルパールに犯され−−
 バイブ1号機に犯され、潮を吹く私。
 バイブ2号機のサイズと形状に戦きながらそれも受け入れ、はやり激しく潮を吹いて絶頂。
 昇り詰めた私の顔は涙の跡も生々しく、美しく、またエロティックだった。
 失神したようにぐったりと力を失った私。その秘部を抉ったままのバイブとアナルパール。それらはヴィーン…と無機質な蠢動音とともにくねっている。
 つい最後まで見てしまったあと、私は慌てて寝室に駆け込み、天井を凝視する。一見しただけでは、どこにそのカメラがあるのかわからない。だが、そうしている今も、また狼狽する自分の姿がカメラに捉えられているはずだった。

 だんだん追い詰められていく自分を自覚しながら、SKYに返信する。

 SKY様
 真野です。
 映像、見ました。
 なぜこんなことをするのか、教えてください。
 それから、いったいどうやって撮っているのかも。
 今も私を監視しているのですか。


 その返事が来る。


 真野桜子さま
 気に入っていただけたでしょうか。
 綺麗に撮れているでしょう。桜子さんは女優になれますよ。
 まず簡単なことから。監視カメラのことですが、
 そこのマンションの管理人が貴女のファンで、桜淫会のメンバーなんですよ。
 貴女が離婚して偶然そこに入居したので、
 カメラを仕込ませてもらったというわけです。
 貴女にどんな荷物が届くのかも把握できるというわけです。
 もちろん、今もリアルタイムで見ていますよ。
 さて、私たちの目的はまだ明かさないことにして、質問します。
 桜子さんはオナニーのときに、
 変質者のような男に拉致され、陵辱される自分を妄想していますね?
 SKY


 信じられない思いだった。管理人がその一味だったとは−−
 考えてみれば、アナウンサー・真野桜子を知る人であれば、自分の管理するマンションに私が入居したことにはすぐに気づく。

 SKY様
 真野です。
 偶然とはいえ、自らの脇の甘さがもたらした災難なのでしょうか。
 ご質問の件は、ご推察のとおりです。


 翌日は、別の映像が届いた。
 浴室だった−−
「…いやっ!…何をするんです…」
「いいことさ」
 ここでも私の、一人二役の妄想が始まっていた。窓がないせいもあって、寝室でするよりも声が大きい。私が代弁する陵辱者たちの台詞もはっきりと聞き取れる。
 カメラは天井だけでなく、壁にも仕込まれているらしい。それも2つや3つではない。私の顔も、身体も、さまざまなアングルから捉えられているのだ。 「よし、縛れ」
「…やめてっ!…お願い、やめて…いやあっ!…」
 私はやはり足首にロープを巻いてゆく。両方の足首から、浴室内の2か所へロープは延びる。全裸だが、ストッキングを履いているのは同じだ。
「いつもテレビで見せびらかしてるその脚が、凄く敏感だってのはわかってるのさ」
 手にローションを取る。
「これでたっぷりと泣かせてやるよ」
 足首からローションを塗る。ふくらはぎ、太腿と指が這う。
「…ああっ…うっ!…い、いや…」
 自らの脚を愛撫しながら、かぶりを振る私。
「こんな敏感な脚を毎日見せびらかして、何を期待してるんだ」
「…期待…だなんて…何もっ…」
「縛り上げられて、大勢の変態に脚を嘗められたりしたいんだろう」
「…違いますっ!…そんな…あうう…」
 次々に追加されるローション。やがて局部への愛撫も始まる。
「お次はシャワーだ。こいつでとどめをさしてやるよ」
 湯の出る音。湯が足首から這い上がってくる。
「…いやっ!…あっ…」
 やがて局部を湯が嘗め始める。
「…ううーっ!…や、やめてっ!…そんな…あっ!…」
 バイブ1号機がクリトリスを苛む。
「…ひいっ!いっ…いやあっ!…」
「よし、アナルだ。とどめを刺してやるよ…やれ」
 シャワーが背後からアヌスを嘗め始めた。
「…うううーっ!…ひっ!…も、もう、だめっ…いくっ!…」
 がくがくと腰を振りながら昇り詰める私。願望を果たして、満足げな表情−−

 浴室にも監視カメラは仕込まれている。この様子では、私の部屋じゅうにそれは設置されていそうだった−−天井にも、壁にも−−

 真野桜子さま
 浴室編、いかがでしたか。
 『真野桜子・緊縛妄想オナニー』とでもいったタイトルの
 映像作品が仕上がりつつあります。
 ネット上での公開を考えています。もちろん有料で。
 まずは北海道中のファンにお披露目しようかと。
 いかがですか?ゾクゾクしますか?
 SKY


 ああ−−もうだめだわ−−
 そんなことを、絶対にさせるわけにはいかない。
 彼がこの映像でひと儲けしようと本気で考えるなら、私に打診などしてくるはずがないのだが。
 だが、こんな風にあからさまに脅迫されて、そのままでいるわけにもいかなかった。

 SKY様
 真野です。
 後生ですから、ネット上での公開はお許しください。
 何がお望みなのですか。
 おっしゃってください。


 彼−−とその一味−−の目的は、もう見当がついていた。キーを打つ手が震える。

 真野桜子さま
 そろそろいいでしょう。
 我々の要求は、金銭ではありません。
 では何か。
 貴女も大人なのだから、もう見当はついているのでしょう。
 我々がネット公開を見送る代わりに、貴女に何をしてもらうか。
 あなたから提示してもらうというのが面白そうですが、いかがですか?
 SKY


 ついにこの時がきてしまった。
 よりによって、向こうの要求に私が応じるのではなく、私のほうから提示するなんて−−

 SKY様
 真野です。
 私の身体をお望みなのだと思います。お預けします。
 どうかそれでお許しください。
 明晩から月曜午後まではオフです。そのどこかでいかがでしょうか。


 卑劣な陵辱者たちに向かって、時期まで添えて−−
 ひどく屈辱的だった。
 だが、この件でこれ以上消耗させられるのはたくさんだった。アナウンスは落ち着いていたが、表情が冴えないとよく指摘される。
 オナニーも、もう4日、していない。眠れない夜が続き、目の下にクマができるようになっていた。

 真野桜子さま
 了解しました。貴女の身体をお預かりします。
 明晩、マンションに帰ったら、管理人室を訪ねてください。
 最近していないようですが、オナニーは控えて、
 体力を温存しておいてくださいね。
 さしあたり土曜いっぱい、おそらく日曜の朝まで、付き合ってもらいましょう。
 その間、一睡もさせないつもりです。


 このところ、前を通りがかるたびに、じっと見られているような気がしていた管理人室。
 そこで、始まるのだ−−それにしても−−
 日曜の朝まで?一睡もさせられずに?−−
 どうして、そんなに長時間なの?
 体力を温存とは?−−
 相手が複数なのは間違いなさそうだった。それも、3人や4人ではないということだ。
 大勢に、犯されるのだろう。10人くらいいるのだろうか−−
 輪姦−−
 いや、それだけではない。
 以前のSKYからのメールでは、こってりしたSMなどという語句もあった。
 私の身体をおもちゃにして、欲望を晴らすつもりなのに違いない。
 それで、何十時間もかかるのか−−
 不安なことだらけだが、こうなってはもう従うほかなかった−−

3 陵辱者たち

 週末が来た。
 陵辱者たちに身を委ねる、その夜。
 私は帰宅してすぐには動けなかった。だが、部屋での行動の一切は見張られている。早く出かけなくては−−
 シャワーを浴びて、身を清めた。
 卑劣な連中に身を任せるのだとわかっていても−−いや、そうだからこそ−−そうせざるを得なかった。汚される前のこの身は、気高く清らかでいたかった。
 下着も新品をつける。
 夏にしては肌寒い日だった。白い木綿のジャケットの下に、薄紫の長袖ブラウス、膝丈の白いスカートにナチュラルのストッキング、黒のピンヒール。
 そんな出で立ちで−−彼らに身体を与えるため−−指示どおりに管理人室を訪ねた。
 明かりは消えていたが、鍵は開いていた。
「…真野です…入ります…」
 そう言って足を踏み入れたその時だった。
 背後から大きな腕に抱きすくめられ、抵抗する間もなく、薬を嗅がされた。
 私はそのまま意識を失った。

 頭が痛い−−
 そして、軽い吐き気−−
 不快な感覚に、私は覚醒する。
 微かに目を開けると、ライトに照らされていた。
「…っ!…」
 眩しさに顔を背ける。だが、それ以外、身体の自由はなかった。
「真野さん、お目覚めですか」
 ここはどこなのだろう−−
 私は手首をまとめて縛られ、天井から吊されていた。ピンヒールの爪先が辛うじて床に着く。私の華奢な身体はぴんと引き伸ばされる格好で拘束されていた。
 薄暗いが、そこが広い空間であるのがわかった。壁は装飾の一切ない、くすんだ鉛色のコンクリート。ひんやりと冷気が漂っている。
 どこかの地下なのだろう−−
「桜淫会の初の会合にようこそ」
「そうやって縛ってみると、いっそう綺麗ですよ」
 頭痛と吐き気を振り払うようにかぶりを振り、少し慣れた目で前方を見ると−−
 溢れるほどの人間が、私を凝視していた。
 その夥しい人数に圧倒されて、初めは声が出せなかったが、すぐに
「…いやあああっ!…」
 私は全身の力を振り絞って悲鳴を上げていた。
 日曜の朝まで、体力を温存して−−とは、これだけの人数を相手にさせられるからだったのだ。
 不意に、背後から乳房をつかまれた。
「…あっ、うっ!…」
「何がいやだって?」
「…こ、こんなっ…」
 こんな大勢はとても無理だ。私はノーマルなセックスしか知らない。レイプされたこともなく、3Pの経験もないのだ。それが−−
 いったい何人がかりなのか、この部屋にあふれかえる男たちに、輪姦−−
「こんな大勢はキツいって言うんですか?よく言いますね」
 聞き覚えのある声に振り向くと−−
「…っ!…」
 ADの堺くんだった。
「…あ、あなた…いったい…」
「桜淫会のSKYってのは僕のことですよ」
 まさか−−
「貴女に憧れてSBCに入社したんですがね。貴女は知らないうちに結婚しちまうし、また気がついたら離婚してる。ちょっと振り回されてイライラしてたんですよ」
 私に近づき、おとがいに手を掛けて、上を向かせる。長身の彼の顔は、爪先立ちさせられている私の顔のさらに上方から、見下ろしてくる。いつもと変わらない、薄笑いを浮かべたような表情で−−いや、このときばかりは、本物の薄笑いだったに違いない。
「…そんなの…」
「関係ないって言うんでしょ。違いますよ。ずっと好きだったんですからね」
 その気持ちは知っていたような気もする。
「…そ、それなら…」
「ちゃんと言えばっていうんですか。あいにくね、貴女が結婚した頃から気が変わったんですよ。気がついたって言うべきかな。好きなんだと思っていたんじゃなくて、あなたに挑発されて、欲情していた」
 くくくく…と周囲から下卑た笑い声。
「貴女をものすごーく酷い目に遭わせたいってね。たっぷり弄んで、悲鳴を上げさせる」
「…よ、よして…」
 まだ信じられなかった。
 確かに、私に意味ありげな視線を向けている男は社内にも少なからずいる。いちいち気にしていたら仕事にならないほど−−その筆頭が郷田部長だった。万が一にも、社内で私に何かしようとする男がいたとしたら、それは郷田に違いないとずっと考えていた。
 だが、全く思いも寄らないところに、陵辱者はいたのだ−−
 私の背後の男は、執拗に乳房を揉んでくる。、両脇にも、男たちが身体を寄せてくる。仕事柄、いやらしい視線を浴びせられた経験は数知れないが、舌なめずりする男というものを間近に見たのは初めてだ。
「それでこっそり桜淫会のサイトを立ち上げたら、会員が続々集まっちゃってね。その中に、マンションの管理人さんもいたと。まあ、運が悪かったね」
「桜子ちゃん、そうやって吊されてる姿、萌えるよお」
「…うっ、く…」
 耳たぶをしゃぶられて、声を上げてしまった。
「…いいいっ!…」
 乳房を揉む手が、時に腋の下をくすぐる。
「…そ、そこはいやっ…」
 あまりの感覚に、声もろくに出ない。
「くくく…真野さん、全身敏感なんでしょ。脚があんなに感じるんだから、想像つきますよ」
 この集団の中では堺がリーダーなのだろう。
「脚ね…この脚に、そそられてたんだよ」
 ふくらはぎに、無数の指を感じた。
「そうそう」
「近くで見ると、また一段と美味しそうで」
「…あっ、いやっ!…うっ…」
 ふくらはぎをさする数十本の指。足首をつかむ手。指は次第に膝を這い、太腿をまさぐり始める。
「…いやあっ!…」
 私の喘ぐ声が触発したのか、周囲の男たちの手が、唇が、一斉に私に群がってきた。
「…あああっ!…やっ…やめ、てっ!…」
 着衣の上からだが、全身を襲ってくる性感は十分にこたえる。手首を戒めている縄にすがる以外、私にできることはない。
「真野さんのオナニー映像、ここにいるメンバーは全員見てるからね」
 堺がまた始める。
「くくく…桜子ちゃん、こんな風に、変態の群れに犯されたかったんだろ?」
「ちゃんとわかってるんだからね」
「いくときは潮吹くんだよな?」
「最近オナニーしてないから、溜まってんだろ?…搾り取ってやっからな」
「何も出なくなるまでな」
「ハードな夜になるぜぇ…ひひひっ」
 堺が何か言うと、続けて他の男たちも口々に私を責めるのだ。それが私を否応もなく追い詰めてゆく。
「…何人…いったい、何人がかりなの?…」
 性感の渦に揉まれ、汗まみれになって悶えながらも、訊かずにはいられない。
「知りたい?…ふふふ…真野さんに脚を見せつけられて日頃挑発されてた北海道中の男が集まったと考えてごらんよ」
「…そっ…」
「45人だったかな」
 まさか−−
「堺ちゃん、違うよ。また増えたんだ。55人だよ」
 −−!
「…いっ、いやっ!…無理っ!…」
 数字の大きさに私は正気を保てなくなる。
「…無理よっ!…死んじゃうっ!…」
 ひとり一度では済まないのに違いない。では−−いったい何回−−
 すぐに100という数字が思い浮かぶ−−
「よく言うぜ。毎晩バイブで自分を死ぬほど犯してるんだろう」
 ちがう。確かに力尽きるまで自分を犯してはいるが、回数など知れたものだ。
「大丈夫だよ。いきなりマワしたりしないからさ」
「まずはたっぷりとウォーミングアップをな」
「そのウォーミングアップってのが、さ…くくく」
「また超ハードかも知れないけどな」

 吊されたまま、三十分ほどだろうか−−全身を責められた。
 集まった全員がまず真野桜子を間近で鑑賞し、着衣の上から肉体の感触を確かめる、ということのようだった。ブラウスやスカート、ストッキングの上からだが、無数の指や舌で一斉に刺激され続けた私の全身は汗にまみれ、顔には涙の跡が幾筋もついていたはずだった。
 しかも、その間秘部を刺激されることはついぞなく、決して昇り詰めることはなかった。ただひたすら全身の性感に翻弄され、手首を戒める縄にすがって、悶え苦しんだだけ。
 滑車がからからと鳴り、私の身体は床に下ろされた。そのまま崩れ落ちようとする私を数名の男が支える。手首の縄が解かれる。
 ああ−−いよいよ始まるんだわ−−私ひとりを、55人が−−
 私の手首は今度は背後に回され、そこで再び戒められた。後ろ手縛りだ。
 私の密かな願望が実現していた。だが−−想像していた以上に不安な姿勢であることが、今になってわかる。
 怖い−−
「それじゃ、ウォーミングアップを始めるか」
 始める?−−
「…こ、これから?…」
 堺が信じられないことを言うので、思わず問い返した。
 今までのがウォーミングアップではないのか−−
「そうだけど…何か?」
「…さ、さっきのは…」
「さっきのは真野さんを鑑賞しただけでしょ。真野さんだって、まだ1回もいってないでしょ」
 かっと頬が熱くなる。
「…堺さん、桜子ちゃんは焦ってんだよ。もうウォーミングアップが終わって、早速マワシに掛けられるんだとな」
「…そっ…」
「ぎゃはははは」
 激しい嘲笑が湧き起こった。
「なーんだ」
「こんな大勢は無理だとか言っておきながら、期待してんのか」
「ダンナと別れてから、ずっとしてないんだよな。可哀想に」
「真野桜子アナはセックス日照りで、したくてしたくてたまらないと」
「…やっ!…」
 残酷すぎる嘲笑は続く。あまりの侮辱に、私は身体を折り曲げて泣いた。
「わかったよ、真野さん。マワシは後でちゃんとするからさ」
 堺が慰めにもならないことを言う。
「その前に、真野さんを快楽責めにしてあげようという趣旨なんだ」
 ドキン。
 快楽責め−−その言葉の、甘美そうで、しかし残酷な響きに−−
 私は目を開き、表情を強ばらせた。
 不安を募らせながらも、一瞬期待してしまったのだ−−
「いいなあ、いまの表情」
 えっ−−
「快楽責めって言われて、感じたでしょう」
「…そっ…」
 言葉が出なかった。
「ほおら、図星だ」
「真野さん、無理矢理イカされまくるんだよ。シゴキだよ。お望み通りなの?」
 堺の言葉にまたしても追い詰められる私。
 まるでこうなったことが、願ったり叶ったりみたい−−
「ひゃはははは…真野アナ、根っからのM子ちゃんだね」
 恥ずかしくて、涙が止まらない。
「それじゃ…まあ死なない程度に」
「せいぜいシゴいてあげようねぇ。桜子ちゃぁん…ひひひ」
 抱きかかえられた私が運ばれたのは、開脚台の上。
 背中にクッションをあてがわれて、両腕は後ろ手に縛られたまま、上半身をベルトで固定された。緩い傾斜がついて、私は私の下半身を見ることができる。スカートを脱がされたあと、上半身とは独立になった台の上に両脚を載せられ、膝と足首をやはりベルトで固定された。膝のところは自由に曲がるようになっている。私は左右の太腿を70度ほどに開かされたまま、抵抗のすべもないポーズに固められてしまった。
 ふと見上げると、天井には鏡。
 後ろ手に縛られ、両脚も固定された私の全身が映っている。大勢の男たちに囲まれて−−
 薄紫のブラウス。ボタンが外されていく。脱がされたブラウスは腕のあたりに寄せられていく。上半身の肌が剥き出しになっていく。
 そして、ブラの中央にハサミが入る。
「…いやっ…」
 乳房がぱっ…と露わになる。
「では、上半身から始めましょうか」
 堺が言うと、
「…あっ、い、いやっ…」
 数名が群がってきた。
「…うううーっ!…」
 ブラウスやブラの上からとは比較にならない感覚。左右の乳房に一人ずつがむしゃぶりつき、咥え、舌で乳首を噛み、転がしてくる。彼らの数十本の指も遊んではいない。
 腹部も、うなじも、放っておかれるはずはなく、ねっとりと唾液をからめた唇が這ってくる。その感覚に苛まれ、時に耳たぶを噛まれて、私の官能は高められていく。
 足にも来た。ピンヒールはとうに脱がされている。その足の裏や甲を唇が這い、また指の間に舌が侵入してくる。時に歯を立てられるのが辛い。
 足をそんな風に入念に愛撫されたことはなかった。そんなところにまで敏感な性感帯が集まっているのを今になって知り、私は狼狽する。
 そして、当然のように、脚全体にも彼らは来る−−
 足首をつかみ、膝の裏に手を入れて、私の下肢を捧げ持つように捉えると、骨付き肉でも貪るように責め立ててくる唇と舌。そして歯。
 太腿は外側に数名がへばりつき、指を這わせ、唇を押しつけてくる。
 膝に狙いを定めた男は、全体をべろべろと舐め回すほか、やはり歯を立ててくる。
「…ひっ…いいっ!…ゆ、ゆるしてぇ…」
 脚のあちこちに歯をたてられるのが辛すぎて、私は懇願する。だが、それは私の弱点を知らせることになり、却って彼らの嗜虐心を煽るようだった。
「歯を立てられると辛いのか?」
「脚が弱いんだな。そんな敏感な脚をよくも見せびらかしていたもんだ」
「毎晩何を考えながらニュースを読んでたんだよ」
 悶え苦しみながら見ると、私の下半身には12〜13名もが群がっている。
 毎晩露出していた私の脚−−
 その脚を大勢の変質者に貪られ、苛まれて、私は無理矢理官能を高められて−−
 ピリリ。
 臍の下に堺の指が入り、ストッキングが引き裂かれる。
「…あっ、いやっ!…」
「ここを早く楽にしましょうね」
 ジョキリ。
 パンティにハサミが入り、ストッキングはそのままに、パンティは抜き取られた。
「…ふう、うっ!…」
 不意に冷たい液体を浴びせられた。
 ローションだった。冷水などを入れるピッチャーに並々と入れられたそれが、私の上半身に、脚に、大量に注がれたのだ。
「…あああっ!…」
 唇や舌、歯による責めでかすんでいた、無数の指の感覚。それがローションの作用で増強されて、私の性感をまた煽り始める。

4 屈服

「…もうっ…もう、やめてぇ…」
 何十分間、そのまま責められたのだろう。
 開脚台に固定されて、全く身動きのできない私の身体−−そこに常時20人ほどが群がって、私の性感帯を好き放題に責め苛む。私の脚、私の乳房、うなじ、それぞれに執着のあるらしい部位を満足のいくまで味わうと、別の部位に移ったり、選手交代しているらしい。
 いったい、いつになったら終わるの−−
 彼らは55人もいるのだから、この調子で続けられたら、きりがない。
 そして−−私は官能を高められたまま、まだ一度も絶頂に至ってはいなかった。肝腎の秘部には、まだ一人として触れようとはしていない。このまま何時間続けられても、私は絶頂には導かれないだろう。
 ぞっとした。55人に輪姦されるのも恐ろしいが、解消を許されないままに性感を責め立てられ続けるのも、同じくらいに過酷だ。気が狂ってしまう。
 いつまで、私を貪るつもりなの?−−
 この男たちは、自分の性欲を解消しなくていいの?−−
 犯すなら、早く犯して−−
「真野さん、ずいぶん昂奮してるみたいだね」
 気がつくと、堺がそこにいた。私の太腿の間。秘部を見据えて、やはり、薄笑いを浮かべて−−
「こんなに愛液を垂れ流しちゃって」
「…えっ…」
 いつからそこにあったのか、私の秘部の真下にあったらしい洗面器を取り上げて堺が言う。見ると、ぬらぬらと光る、粘りけのある液体が数十ミリリットルほど溜まっている。
 私のそこから溢れた愛液−−そんなに−−
「そこから溢れて、ねっとり垂れてるよ」
「一度もイッてないくせにかい。女のガマン汁ってやつか?」
「おうおう…ねばっこいのが滴り落ちてらぁ」
「…いっ、いや…」
 異常な責めを続けられているからとはいえ、いやらしい反応には違いなかった。
「全身の性感帯を責められて、すごく高まってるんだね」
 堺と私とのやりとりに耳を欹てながら、男たちはまた責めに熱を込める。
「…あううっ…さっ…堺くんっ…」
「何?」
「…ど、どうして…」
「何が?」
 私は必死に顔を起こし、堺の目を見る。堺の薄笑いを湛えた目は不気味だ。
「…どうして、ずっと…こんな…」
「言っただろう、ウォーミングアップだって。それに、みんな真野さんの身体を愛でたくてしょうがないんだよ」
 もしかしたら−−
 苦しむ私を見るのが目的?−−
「俺たちは、自分が出すのは二の次なんだよね」
「そう…自分の性欲を解消するより、真野さんの悶え苦しむのを見るほうが快楽の度合いは高いのさ」
 やはり、そうだった−−
 後で輪姦するにしても、その前に私を徹底的に嬲りものにする気なのだ。
 輪姦が始まる前に、精根尽きてしまう−−
 絶望しかける私の全身を、また性感の渦が襲ってくる。
「…ああっ…ううっ!…」
 性感をさんざん高められた私の身体は、絶頂を求めていた。
 オナニーの時は−−高まってきたら、我慢したりはせずに、あっさり昇り詰めている。それに慣れきっている私の身体が、パンクしそうな性欲を解消できないまま責められるのに堪えられるはずがなかった。
 しかも、この数日というもの、監視の目を気にして全くオナニーをしていないのだ。
 私の中には、爆発を待ち焦がれ、しかし行き場を無くして沸騰を続けている性欲が充満していた。
 気が狂う−−
「…おっ…お願い…堺くんっ…」
「はい?」
「…もうだめ…もう、許してっ…」
「どうしてほしいの?」
 そう。いかせてほしい−−そう目で訴えたが−−
 その視線は撥ね付けられた。
「どうしてほしいのか、自分で言わなくちゃ」
 そんな−−
「言わなければ、もうしばらくこのままだよ。そうだな、あと1時間」
「…いっ…」
「交代はいくらでもいるから、何時間でも続けられるよ」
 もう限界だった。私の反応を楽しむように、男たちの責めもまた隠微さを増す。
 左右の太腿を、無数の指が−−絶妙のタッチでさわさわ…と這い、私の性欲を掻き立ててくる。
「…あぐっ…も、もうだめ…」
「言いなよ」
 観念せざるを得ないようだった。
「…い、一度いかせて…楽にして…」
「そう。…いいけど、どうやって?」
「…どう、って…」
 堺の顔が私の秘部の前にあった。
 クンニリングス−−クンニをして−−そこを、舐めて−−
「…クンニ…クンニをしてっ…お願いっ…」
「ほほう、すげえすげえ。真野桜子アナ、クンニのおねだりかよ」
 もともと上気している私の顔は、さらに熱を帯びる。
 堺が、内腿に唇を這わせてくる。
「…ひっ!…あっ…お、お願いっ…」
「期待が高まってるね。いいよ、してあげよう。だけど」
 堺がにやりと笑う。
「カメラ5台でビデオが回ってるけど、いいのかな」
 ビデオ−−カメラ5台で−−
 55名の集団に陵辱されている映像。いろいろなアングルからの−−
 顔のアップや下半身のアップなどもあるのだろう。
 クンニをねだった今の声も、録音されているにちがいない。
 そして絶頂に導かれるシーン−−
 一瞬ためらった。だが−−
 堺の息がそこに触れ、私はあっと仰け反る。
 もう、どうでもよかった。
「…いいのっ…早くっ…早くしてっ!…」
「了解…」
 堺の両腕が私の腰をしっかと捉え−−
 私の太腿の間に彼の顔が沈む−−
 彼の唇が花弁に触れた。
 ジュルッ…
「…ああ、あっ!…」
 愛液を吸い上げられたその瞬間、私は上半身を湾曲させ、次いで全身を硬直させる。
 全身に群がる男たちを振り払わんばかりの激しさで、私は待ちに待った絶頂を迎えた−−

 堺の技巧は絶妙だった。
 別れた彼をはじめ、これまでに交際した数名の男たちはことごとくクンニをしたがった。私もまた、されるがままにしていたが−−しかし、彼らの技巧は概して平凡だった。つまり、舐めるだけ。彼らにとっては、私のそこが潤滑して挿入が具合よく行えればよかったのだから、私が昇り詰める必要はなかったのだ。私はクンニでいきたかったのに−−
 だが、堺は違った。クンニは私を絶頂に追いやるため。彼の唇や舌がアヌスから会陰、ヴァギナの肉壁を執拗にねぶり、性感のツボというツボを探り出しては、そこを責め立ててきた。もちろん、クリトリスも−−彼の歯が包皮を巧みに剥き上げ、露出した本体を甘噛みしてくる。そして吸い上げる。ちょうどフェラチオをするように、すぼめた唇を軸方向に動かす。
 そして、とどめを刺そうとでもいうように、彼の舌がクリトリスをぴん、と弾くのだ。そこで私は絶頂する。年下の男に、こうまで翻弄されるとは、全く想像していなかった。
 一度達するたびに官能のレベルは高まり、次の絶頂はさらに高みへ追い上げられた。そうして3度、4度と立て続けにいかされたところで、担当が交代した。
 堺のあとは40代と思しき中年。180cmはあろうかという巨体で、スキンヘッド。その体躯も脅威だったが−−口髭と顎髭をたっぷりと貯えたその顔を見て、鳥肌が立った。
「…ひっ…」
 あの髭が−−
 無数の針のような髭が粘膜を刺してくる感覚を思って、私は身をよじった。
「桜子ちゃんをクンニでヨガらせるのが夢だったんだよねぇ…こうして実現するなんて、夢のようだよ」
「…い、いやっ…」
「堺ちゃんはよくて、俺はいやなのかい」
「…そっ…」
 はあはあと荒い息をしながら、私はかぶりを振る。無駄と知りながら脚をばたつかせる。
 しばらくされるがままになっていた私が息を吹き返したように再び抵抗し始めたので、全身の男たちの責めにもまた熱がこもってきた。
「…あっ!…あう、うっ…」
「マッちゃん、桜子ちゃんはその髭に怯えてるんだろ」
 その中年はマッちゃんと呼ばれているらしい。
「だって、このために髭を手入れしてるようなもんだぜ」
「桜子ちゃん、マッちゃんにはせいぜい可愛がってもらいな。プロのAV男優だぜ」
 なんですって−−
「けっこうベテランのAV嬢をさ、よってたかってイカせ続けるAVの、まあ常連だよな」
「クンニの鉄人!」
「スッポンの松っ」
「一度吸いついたら、気絶するまで離れないってよ。な」
「そんな名人に責められる経験なんて、そうそうできるもんじゃない」
 だめっ−−
 堺のクンニで、私の官能は、ただでさえ高まっている。そこへ、そんな男のテクニックで責められたら、ひとたまりもない。
 身体をばたつかせているうちに、「松」が私の太腿の間に来た。両手が尻たぼを割っている。
「裏ビデオには出ないようにしてるんだが、真野アナを犯れるんなら、望むところだったんでね」
「…い…いやっ…来ないで…」
「くくく…そうこなくちゃ…」
 熱い息を感じて、私は仰け反った−−
 すぐに、激しい感覚に貫かれた。
「…あぐっ!…うむううっ!…」
 口髭と顎髭が粘膜の襞という襞に突き刺さる。それは、「松」の唇が動くたびに一斉に蠢く。そのざわりとした感覚は、たちまち私の性感を追い詰めた。
「…いくっ!…」
 ほんのひと舐め、というところで、私は達した。縛られた両脚ががくがくと震える。
 もちろん、それで許されるはずはない。「松」の顔は私のそこへ沈んだままだ。
「…あああっ…」
 技巧の丹念さというか、執念深さという点では堺のほうが上回ったかも知れない。しかし−−
 唇と舌の圧倒的な量感、同時にアヌスをくすぐってくる指の動き。そしてざわつく髭−−
 得たいの知れない生物にそこを貪られているような錯覚に陥り、私は続けざまにいかされたのだった。

 カチャカチャという音に、私は軽い失神から目覚める。
 いつものオナニーではないことを、しばらく忘れていた。いつもなら、目覚めたあとは足首の戒めを解き、小道具類を片付けていくところだが、今日は違う。
 私の全身には、依然男たちが群がり、私の性感帯を貪っていた。クンニリングスは終わっていた。
 だが、まだ、このままなのだ−−
 堺の様子だけが違った。先と同様に私の秘部の正面に構えてはいるが、何やらトレイに入れた器具を操っている。
 ガラスや金属がふれ合う、不安を煽る音。
「…なっ…」
「お目覚めですか。僕ので4回、松さんので6回いったよ」
「桜子ちゃん、たまってたんだろう…ひひひ」
「腰が軽くなったんじゃないですか」
 相変わらずの表情で、堺は私のそこを凝視している。
「…何を、するの…」
「いいことさ」
 トレイの中には、医療器具と思しきものがずらりと並んでいる。何に使うのかすぐにはわからないが、ただし、私の秘部を責め苛むために用意していることだけは確かだ。
「…い、いや…こわいこと、しないで…」
「何もしてないのに、怖いってわかるのかい」
「…だっ…だって…」
 わけのわからない不安に、涙声になった。さんざん辱められた上に、異常な責めを加えられる予感があったのだ。
「ウォーミングアップはこれからが大事なんだよ…なーに、楽しませてあげるから」
「…まっ…」
 まだウォーミングアップ?−−
「まだまだ、楽しませてあげるから」
 堺に変態趣味があると、だれが想像できただろう。
 だが、私は今や彼の前で囚われの身となり、無防備な秘部を晒している。
 抵抗はできない−−
 相変わらず全身を襲ってくる性感にその緊張が加わり、私の官能はまた高まった。
「クリトリスがまた大きくなってきたね」
 私は恥ずかしさに顔を背け、二の腕の間に埋める。
「真野さんのクリは、小振りだけどぽっちりと珊瑚色で、いい形をしてるよ。責めがいがある」
 そのときだった−−
 クリトリスに異常な感覚。
 つるんと何かが被さり、次いで周囲を圧迫されるような−−
「…うっ…」
「これでよし、と。ぴったりだ」
「…何?何をしたの?…」
「真野さんのクリに、リングを被せたのさ」
「…リング?…」
「プラチナ製の高級品だよ。ほら」
 堺が鏡を使って、そこを私に見せる。ヘアを掻き分け、よく見えるように−−
 確かに、金色の輪がそこで光っていた。そして、その輪の中には、珊瑚色と言われたクリトリスの本体。神経の固まり。それが−−
 ぽっちりと充血した状態で剥き出しにされ、外気の中で戦慄いている。
「これで包皮は剥けたままだし、勃起状態もずっと維持される。簡単には外れないからね」
「…い、いや…」
 私は戦く。そこに神経を集中させると充血の度合いが強まり、圧迫感が増した。
「…あっ…」
「そうそう、その調子。昂奮して勃起が高まると、リングはますます食い込むよ」
 堺は次の作業に移る気配だ。
「さて、と」
「今度はありふれた催淫クリーム。少し痒いから、我慢してね」
 催淫というその文字がすぐ頭に浮かび、私はまたしても戦く。
 そして−−痒いクリーム?
 ありふれた、と言われても、私には経験がない。だが−−
 身動きできない状態でそんなものを使われたら、どうにかなってしまう。それくらいはわかる。
「…いやっ!…お願い、そんなのはいやっ…」
「くくく…真野さん、また愛液が滴り始めたよ」
「どらどら」
 そんな−−
「クンニで10回もいってるのに、まだまだ物足りないとさ」
「こうやって異常な虐め方をされると、すごく昂奮するみたいだねぇ」
「ほんとだな。クリも真っ赤じゃないか」
 やめて−−
「じゃ、いくよ」
「…あっ、いやっ!…」
 仰け反る私。
 痒みをもたらし、催淫作用のあるクリーム。それが私の秘部に塗り込められていく。
 ヴァギナの襞に。
 アヌスの襞に。
 そして、クリトリスとその包皮との境目に−−
 堺は楽しげな表情で、ねっとりと塗っていく。
「…う!…」
 いつ痒みが来るのかと不安でならなかったが、それは突然来た。
「きたきた…山イモの汁をふんだんに取り入れた特製クリームだからね」
 秘部の粘膜全体に、ちくちくと堪え難い感覚。それは決して和らぐことはなく、時間とともに増大する。手が自由であれば、遮二無二掻きむしるはずだった。
 だが−−
 その両手は後ろ手に戒められ、両脚もまた相変わらずの角度で固定されている。
 せめて左右の太腿を閉じてよじり合わせるような動作でもできれば、どんなにか楽だろう。
 でも、それすら許されないのだ。
「…ああ、あっ!…ひっ、いいいっ!…」
 私にできるのは、かぶりを振ることだけ。
 私の上半身に群がっている男たちが、面白がって押さえつけてくる。ここぞとばかりに舌を隠微に動かし、私を追い詰めようとする。
 涙が散る。私を拘束している台がガタガタと派手な音を立てる。
 するどい痒みが秘部の襞という襞にまとわりついていた。劇薬でも浴びせられたほうがましだった。
「クリがでっかくなってら…けっこう楽しんでるんじゃないの」
 そう言われて、クリトリスが充血する感覚が戻った。プラチナのリングに締め付けられて、そこだけはじんじんと痛いくらい。
「…うう、うっ!痒いっ!…痒いのっ!…もうだめっ!…」
「痒くて死にそうですか?」
 わかりきったことを堺が訊いてくるので、きっと睨み付けた。
「でも、こんな風に、変質者のイケニエになってみたかったんでしょう」
 私はかぶりを振る。男たちに群がられて、動かせるのは首くらいなのだ。

5 手術台の上

「…お願いっ!…なんとかして…許してぇ…」
 私の秘部を、堺が相変わらず冷ややかな目で凝視している−−
 いっそ気絶することができればどんなにか楽だろうと思ったが、粘膜の激しい痒みは気絶すら許さない。
 そして、いったいいつまで続くのか、私の全身には相変わらず20名くらいの男が群がっている。よく見ると、堺と同年代か、もっと若い男が多かった。
 もちろん、年配の者もいる。40代、50代と思しき男も20名前後はいるだろう。
 堺に同調して私を追い詰める言葉を発しているのはおもに彼らだった。
 そして、夢中で私を貪る、年下の男たち−−
 下腹のあたりだけ引き裂かれたパンストは、あちこち伝染したまま私の脚を包み、男たちの唾液や汗、そしてローションでべっとりと濡れている。
 天井の鏡には私の顔や肌の一部しか見えない。その周りは男たちの頭や上半身で埋め尽くされている。
 ふと−−
 アルコールの臭いがした。
 新しい責めが始まる予感がして、私は堺を見た。
「さて…じゃ、次、いきますか」
 この後に及んで、まだ−−
 堺が手指を消毒していた。
「…こっ…こんどは何…」
「痒みを抑えるわけではないけど、中和してあげますよ」
 例の薄笑いを浮かべて私の目を見る。
「痒くて苦しんでる最中にも、ここはずーっと勃起したままなんですね。いやらしいなぁ」
「…うっ…」
 リングに戒められたクリトリスを堺が揺すり、私は呻いた。
「…何をするのっ…」
 アルコール消毒−−
 痒みを中和する感覚−−痛み−−ということは−−
 少なくとも私の皮膚か粘膜に傷をつける気なのだ。
「怖がらなくていいですよ。ちょいと性感のツボを刺激しようかと」
 ツボを刺激−−というのは−−
「…ま、まさかっ…はっ…」
 つい今し方クリトリスに触れられたせいで、私は恐ろしい想像をした。
 クリトリスに−−針を刺されるのでは−−
「いま、針って言いました?」
 そう言いかけた。思わず−−
「おんやぁ?…くくく」
「どうして針ってわかるのかなぁ?」
 やはり−−
「ご名答。針をね…使ってあげますよ…くくく」
 無防備にさらした秘部を狙うように堺が見つめている。背筋が凍り付いた。
 針責め−−
「…いやっ、だめっ!…それだけはだめっ!…」
「針って自分で言ったんじゃないか」
 ひどい。なんてひどい−−
 また涙が溢れた。
「桜子ちゃん、もしかして期待してんだろ?」
「根っからのM子ちゃんだなぁ」
 確かに想像したことはある。だが、いくら私がMだとしても、無理だ。
 堺だって、医療知識があるわけではないはずだ。
 怖い−−
 さすがに催淫クリームの痒みも忘れて、全身をばたつかせた。
「またまた、桜子ちゃん…クリちゃんがまた勃起してきてらぁ…好きだねぇ」
「もうかなり消耗してると思ったんだが、どうして、まだまだ抵抗する気力もあると」
「針責め、初めてなんだろ…桜子ちゃんはどMだから、気に入るよ。くくく…」
「きっちり消毒済みだからね」
 堺がトレイを持ち上げて、私に見せつける。恐る恐る横目で見ると−−
「…ひ…」
 鋭く光るマチ針がびっしりと収められている。
「ホントは鍼灸の鍼がいいんだろうけど、手に入れにくいし、このほうが痛いだろうからね」
「…こっ、怖いっ!…お願い、やめてぇっ!…」
 無駄な抵抗だった。懇願しても、聞き入れられはしないだろう。
「どこに刺すと思う?」
 堺が、答えようのないことを訊いてきた。
「どこに来ると想像したの?」
「針を刺されて、いちばん痛いのはどこかなぁ?…くくく」
 周りの男たちも同調する。
 私が答えれば、その通りにするつもりだ。どこに針が来ても、怖いのに違いはないが。
「クリームが痒くて死にそうなんだよな。じゃあ、とびきり痛いところがいいな」
 私の悪い予感が、現実になる気配だ。
「へへへ…どこに針が来るのかな…桜子ちゃん、言いなよ」
 私の右の乳房を弄んでいる男が言う。
「もし正解したら、勘弁してもらえるかもよ」
 嘘だ。言えば、そこに刺されるのを期待している、などと言ってくるに決まっている。
 私は口を真一文字につむって顔を背ける−−
「おや…堺ちゃん、真野アナは覚悟ができたとさ」
「どうにでもして、という態度だな」
「…ちっ!…」
 ちがう−−
 私が何を言っても、どんな態度を示しても、私を追い詰める方向に意味づけるのだ。
「…違うの…やめてっ…やめてくださいっ…」
「ここだよね」
 堺がクリトリスをつまんだ。
「…あぐっ!…」
 不意のことに、仰け反った。
 クリトリスに針が来る。たぶん貫かれる−−
 なんと−−それを想像した途端、不覚にも、どくりと愛液が溢れた。
「ひょおお」
「怖いとかやめてとか言っておきながら、期待しまくってるじゃないか」
「身体は正直、とはこのことだな」
 クリトリスを、そして濡れきったヴァギナを、脱脂綿が拭う。最初は乾いたもの。次いでアルコールをひたしたもの。
「…いや…いやっ!…許してっ…」
「ふふふ…そうやって許しを請うところが、またたまらないなぁ」
「これがあるから、針の初心者はいいんだよねぇ…ひひひ」
「…やめてぇ…うっ…」
 すすり泣く私。
 アルコールの臭いと、ひんやりとした触感。
 来る−−
 堺が周囲の男たちに目配せしている。
「しっかり押さえててください」
「おうよ」
 全身の男たちが、一斉に私を押さえにかかる。両脚には見物していた男たちも加わった。
「こんなべっぴんに針責めする現場なんて、滅多に居合わせられないな」
「桜子ちゃんも、フツーはできない経験だからさ」
「うーんと怖がりな…けけけ」
 もうだめだ−−
 気が遠くなる。
「いくよ。真野さん」
 もう、そこを見ていられなかった。ぐんと仰け反る私−−
 クリトリスに、ちくりと鋭い感覚。
「…はうっ!…うむっ!…」
 その瞬間、
 プシャアアアア…
 私は盛大に失禁して−−そのまま気絶した−−

 スポーツドリンクらしきものを口移しで飲まされ、私は息を吹き返す。
 咄嗟にクリトリスのことを考えたが、激しい痛みは自覚できなかった。結局、針で貫かれるのだけは免れたようだった。
 だが、それで許されたわけではなかったようだ。
 確かに、マチ針が1本、そこに突き立てられていたからである。
「気絶されたんじゃつまらないから、貫通はやめておくよ」
 貫通はやめておく、というのは−−
「…あっ、あうっ!…」
 針の先端がく、くっ…と押し込まれる感覚。それに次いで、それが抜き取られる感覚。
「…はっ!…はうっ!…」
 十分な激痛だった。ぎりぎりの線で堪えられる痛み−−
 それに恐怖が混ざって、心臓が拍動を速めた。冷や汗が流れる。
「…うっ!…」
 いま抜き取られた針は、再び私のそこを苛むために、角度を変えて突き刺さってくる。
 軽く突き刺しては、抜く。
 抜いては、突き刺す。
 針を貫通させる代わりに、そんな責めが始められたのだ。
 堺が慎重を要するためか、全身を貪っていた男たちは責めの手を休めている。
 そのためか、催淫クリームの痒みが急に蘇った。
「…あぐ…」
 クリトリスの周辺から、ヴァギナ、アヌスにいたるまで、粘膜の全体を鋭く刺激してくる痒み。
 それに加えて、クリトリスを苛んでくる激痛。
 堺の手が慣れてきたのか、針を抜き差しするペースが速まってきた。
「…ひっ!…い、いたっ!…いやっ…」
「こんなに勃起させちゃってるくせに」
 もしかしたら、リングで締め付けられているから堪えていられるのかも知れなかった。
「…ああっ…」
 様子をうかがっていた男たちが、“持ち場”に戻った。鏡に映る私の全身は、またしても男たちの頭でびっしり埋め尽くされる。
 ローションを塗られ−−
 ほとんど全身、くまなく舐められ、囓られ、揉まれている私の身体−−
 とても数える余裕などないが、両脚には12〜13人。乳房や脇腹に7〜8人。耳たぶやうなじにも4〜5人。そのひとりひとりが、私を追い詰めようとして容赦のない責めを加えてくる。
 性感帯という性感帯の、どこも放っては置かれない。性感地獄だった。
 彼らは入れ替わり立ち替わり唇も奪ってくる。だから、泣き声も上げられないのだった。
 粘膜全体の、堪えがたい痒み。
 そして、気絶しない程度の、ぎりぎりの線で加えられているクリトリスの痛み。
 どこをどうされているのか、わからなくなる。だだ、苦しみを伴う性感が全身を包んでいる。
 歯を食いしばる私。
 気が−−
 そのときだった。再びカチャカチャという金属音。先の、マチ針を並べたトレイだ。
「クリの感覚がなくなってもつまらないんで、場所を変えましょうね」
「…あっ…」
 別の痛みが来た。クリトリスを刺されるよりは、軽い。
「見ますか」
 目を開けると、私のそこが鏡に映っていた。
 大陰唇−−ヴァギナの右の花弁に、それは突き立てられていた。出血はない。
 おそるおそるクリトリスを見ると、プラチナのリングに戒められ、真っ赤に膨らんでいた。そして−−じわりと血が滲んでいる。
 痛みと恥ずかしさを堪えるため、私は顔を背ける。
「これから左右交互にいきましょうね」
 秘部を、敏感な粘膜を、針山のようにされる−−
「…いやあ…」
「1本1本はたいして痛くないと思いますよ」
 そんなはずはない−−
 2本め。
 堺が私をちらと見たあと、鋭い痛みが来た。
「…あっ…」
 表皮を突き破り、次いで先端をく、くっ…と押し込まれる感覚。ぎゅっと目をつぶる。
「…ううっ…い、いたっ…」
「クリよりは楽なはずだけど」
 痛みだけではなかった。粘膜のあちこちに、まだ催淫クリームの痒みが残っている。その痒みの凝集した粒が小穴を開けられて、ぷちんと弾けるような、隠微な感覚も−−
 それからというもの、1本ずつ針を刺されては、鏡で見せつけられることの繰り返し。
 堺が言うとおり、1本1本の痛みは堪えがたいというほどのものではない。だが、たびたび襲ってくる細かな鋭い刺激に、私の神経はすり減っていった。
 そして、想像した通り、私の秘部は次第に針山のようになっていく。
 それに同調するかのように−−
「また溢れてきてますよ」
 ああ−−
「ひゃははは…ホントだぜ。またまた粘っこいのが」
 ヴァギナから、またしても愛液が滴っているようだった。
 私のすすり泣く声が広い部屋の壁に染みこんでいく−−

 30分ほども経っただろうか−−
 敏感な花弁には、今や20本ほどものマチ針が突き刺されている。
 ヴァギナから愛液が滴るのを、こらえることはできない−−
 私の身体はどうなっているのだろう。先に10回も昇り詰めているのに、拷問とも言える責めを受け続けて、またしても官能は高まっていた。
 クリトリスを針で苛まれていた時は、痛みを待ち受けるのに全神経を集中しなくてはならなかった。その責めが終わった安心から、官能のスイッチが再び入ったようだった。
 またしても、限界がやってきていた。
 いかせて−−
 もう一度、堺に訴えてみよう−−
 最初にクンニリングスを求めたように、懇願しなくてはいかせてもらえないのだろうから。
「…む、ぐっ…さ、堺くん…」
 唇を奪われていた私は、その男が離れた隙に、やっとのことで声を出した。
「はい?」
「…お願いっ…楽に…させて…」
「さっきさんざんイッたんでしょ。まだ足りないんですか」
「…いいいっ!…」
 針山のようになっている、そのマチ針の頭を、堺がさらっと撫でた。痛みに隠微な性感が混ざってヴァギナを襲った。
「…うっ…うっ…もう、許してぇ…」
「だめです」
 きっと堺を睨んだ。
「くくく…おねだりすればイカせてもらえると思ったんでしょ。甘いですね」
「…なっ…」
 私の性感を高めているのは、いかせるのが目的なのではないのか。
「あとで死ぬほどイカせてあげますから、今はやめましょ」
「…あ、あとでって…」
 この上何をしようというのだろう−−
「わかんないかなかぁ…桜子ちゃん、これもゴーモンなんだよ」
「イキたくてもイカせてもらえないってのが、きっと辛いだろうからね」
 蛇の生殺し−−
「特に、オナニー狂いで、いつもだらしなく絶頂しまくってるひとにはね」
「ぎゃははは」
 またしても唇を塞がれた。
 そのときだ。アヌスに何か細長いものが入って来た。
 そして−−
 じゅるっ…
 忌まわしい予感を伴う液体が注ぎ込まれた。
「…むっ…」
 まさか−−
 一度それが抜かれ、続けてもう一度。
 じゅるっ…
 3度、4度と繰り返される、液体の注入。
「…むうッ…」
「真野さん、浣腸しましたから」
「…かっ…」
「初めてじゃないでしょ。イチジク」
 便秘のときに何度か使ったことがある。だが、いつも1本きりだ。それで十分に効き目はあり、腹痛を伴う便意には堪え難いものがあった。
「1本でいいんでしょうけど、特別に5本してあげましたから」
「…なっ…」
 このあと何が待ち受けているかは明らかだった。
 このところ便通は順調だった。部屋を出る前にも排泄はしてきた。
 だから、私の腸内にはわずかな便と、大量の浣腸液−−
 ごろごろと、腸が鳴り始めた。
「…あっ!…う…」
 便意と同時に激しい腹痛がやってきた。
 平常の5倍の浣腸液が巡っているのだ−−
「始まったな…美貌の女子アナの、超恥ずかしい排泄シーンが見られると」
「…ううっ…む…」
 縛られたうえ、全身には何十名もの男が群がっている。身をよじって堪えることもままならない。
 激しい腹痛で冷や汗が出る。
 男たちの責めが淫猥さを高めた。とりわけ太腿や下腹に指や舌を這わせている連中が、私が激しい便意と戦っているのを妨げる気なのか、ここぞとばかりに手管を弄してくるのだ。
「…ひいっ!…い、いやあ…」
 縄を解いてはもらえないのだろう。トイレに駆け込むことは許されないのだろう−−
「そろそろ出しましょうか」
 堺が私の尻の下に容器を構えた。
「…い、いやっ…」
「恥ずかしがることないんですよ。みんな見たがってるんだから」
 それなら、なおさらだ。
 ビデオにも撮られてしまう−−
 激しい腹痛から解放されたい気持ちと、恥ずかしい気持ちが交錯する。
「我慢しようったって、無理なんですよ」
 堺の手が尻たぼに来た。無造作に揉み、そして左右に割った。
 そして、指が−−
「…あっ、だめっ!…」
 その瞬間、私は大量の液体をアヌスから噴き出していた。
 異臭が漂う。
「ははあ…ウンチはほとんどなかったんですね。じゃ、苦しかったでしょ」
 堺が私の大腸の辺りを指で圧迫して、液体を絞り出す。
 何度か余韻のような排泄をしたあと、私はがっくりと力を失った。
 だが−−もちろん、許されたわけではない。浣腸をしたということは−−
 アヌス責めが来るはずだった。
「真野さん、それじゃ、これ行きますから」
 顔を起こされて見せつけられたのは、シリコン製だろうか、赤く、何やら螺旋状の起伏がついた棒。20cmはあるだろうか。私の持っているアナルパールよりも長い。太さは似たようなものだ。
「いつもアナルパールでオナニーしてるでしょ。だからパールはやめて、真野さんの知らない道具で虐めてあげますから」
「…い、いや…」
 全身性感帯責めがまた始まった。そして、ヴァギナには針の山。
 絶頂は許されない−−
「…もう、これ以上…増やさないで…」
「真野さんを究極の快楽に導くためですよ。二本刺しが好きなのはわかってるんですからね」
「いつもオナニーじゃアナルに入れてるんだろ」
「さっきのクリーム、塗ってあげますからね」
 堺が例の薄笑いを浮かべて−−
「…ひ…」
 捻り棒が入ってきた。
「…いやあ…」
「とか何とか言いながら、どんどん入っていっちゃうね…ほおら、全部入った」
「…むう…」
 20cmの棒がアヌスに突き刺さっている−−
 と、今度はそれが引き摺り出される。
「…ひいい…」
 催淫クリームの痒みがアヌスの粘膜を責め立て始めた。それを中和するように捻り棒の突起が通過していく。
 全身ががくがくと震えた。
「そんなに感じるんですか。呆れたアナルっ子だなあ」
 私のアヌスに絶妙の性感を加えながら、捻り棒が繰り返し抽送される。
「…あぐ…うっ!…たすけて…」
 普段のオナニーでは、ひとりでしているせいもあるが、アヌスでこんなに感じたことはない。
「おお、桜子ちゃん、気分出しちゃって」
「なんか、ぐっと切ない表情だぜ…たまんねぇな」
 私がそれまでにない表情を見せているのか、男たちをまたしても刺激しているようだ。
 全身へ責めにも熱が入ってきた。乳首に、耳たぶに、膝に、歯を立てる者が増えた気がする。
「…ひいい…きっ…気がっ…」
 捻り棒が送られては引き摺り出される。
 私は呼吸もままならないほどに追い詰められ、全身を仰け反らせる。
 もう限界だった。ほんとうに気が狂う−−
 そのときだった。
「それじゃ、前にも行きますよ」
 ヴィンヴィン…という電動音。
 左手で捻り棒を操る堺が、右手にはバイブを持っていた。
 バイブの大きさはほどほど。私の持っているのとは違う、男性自身を模したタイプだ。これにも怪しげな突起が付いている。
 ああ−−これでいかされるんだ−−
 私の秘部。針山のようになっている花弁−−その中心に、それは来た。
 ズブブブ…
「…ああ、あっ!…」
「ふふふ…さすがだな。簡単に入ったよ。これだけ潤滑してりゃね」
「…うっ、うあっ!…」
 アヌスの捻り棒が抽送される。
 だが−−
 肝腎のバイブは、挿入されただけ。蠢動を続けるそれは、前後には動かない。
「…あうう…はっ…」
 早く、動かして−−
「何ですか」
「…お願いっ…早く…」
「バイブを動かせっていうんでしょ…くくく」
 堺の薄笑いを見て、私はぞっとした。
 バイブを挿入したまま、動かしはしないのだとしたら−−
「動かしてもいいんですけど…ほおら」
 それは、恐るべき緩慢さで、前後に動いた。
「…ひいいっ…」
 ヴァギナの肉壁に絶妙の刺激。だが、緩すぎる。
 またしても性感が高まっただけだ。
 アヌスの捻り棒は、変わらぬペースで抽送されている。だが、それで達することはできない。

6 悶絶

 ローションにまみれた全身の性感帯。
 それを、手管の限りを尽くして貪る、30名近い男たち。
 粘膜に塗り込められた催淫クリーム。
 ヴァギナの花弁に突き立てられた、20本もの針。
 リングで締め付けられ、針に苛まれ、充血しきったクリトリス。
 アヌスへの捻り棒の抽送。
 そして、対照的に、蠢動するだけのバイブレータ。
 正気を保っているのがやっとだった。
「…お願いっ…」
 私は堺への懇願を繰り返していたが、記憶が途絶えた−−
 限界まで我慢させられたまま、いつのまにか気を失っていたらしかった。
「真野さん…いかせてあげますよ」
 信じられない思いで堺を見た。
「限界を超えちゃったみたいなんでね。ちょっとやり過ぎました」
 クンニで10回もいったのが、遠い昔のことのようだ。
 やっと−−
「こいつでイキましょうか」
 電動音。
 堺がまたしても新しい責め具を取り出す。それは−−
 電動歯ブラシだった−−
「…ひ…」
「ああ、知ってるんですね。これをクリに当てるとすごいってね」
 この後に及んで、さらに責め具が増えるとは思わなかった。
 それも、よりによって、またしてもクリトリスへの責め−−
「…まっ…待ってっ!…それは…」
 クリトリスは針責めで傷ついている。
 快感よりも激痛に襲われるのではないか。それが怖かった。
「ここへ来て、何です?」
 捻り棒を操りながら、堺が言う。
「…く、クリトリスは…痛いから…」
「ああ、そうかもね。でも、いいじゃないですか」
「…なっ…」
 そうなのだ。私が苦しんだり、痛がったりするのが、彼らにとっては快楽−−
「クリを刺激されたらいけますよ、間違いなく」
「…やめてっ…それは、いや…」
「ものすごく痛くて、ものすごく感じるんじゃないかな。滅多に味わえない感覚でしょうね」
 いきたい。でも、怖い−−
「…お願い、それじゃなくて…バイブを…」
 バイブを抽送してくれれば−−
「だめです」
 どうして−−
「真野さんのお望みどおりじゃ、つまらないでしょ」
「くくく…堺ちゃん、どSだねぇ」
 左の太腿にむしゃぶりついている男が言う。
「言葉責めで追い詰められて、愛液を滴らせてる桜子ちゃんも、どMだよ」
 うなじを舐め回している男が言う。
「いいカップルだ」
「…それじゃ、いきますよ」
 来る−−
「真野さん、イッていいですよ。これから先は、我慢するどころか、イッてもイッても終わりませんからね…くくく」
 バイブが緩慢なピストンを始めた。捻り棒の抽送が同期している。
「…あっ、ああっ!…」
 私のそこが、クチュクチュ…と卑猥な音を立てる。
 爆発寸前の私の官能。これまで経験したことのない激しい絶頂の前触れ。
「…こっ…怖いっ!…わたし…」
 だが、もう我慢できない−−
 そして、堺はもはや私に我慢させるつもりはない。
「大丈夫。これで死んだって、天国行きだ」
 歯ブラシの電動音。
 細かい毛がぎゅんぎゅんと回転しながら、私のそこへ−−
「…あっ、いやあっ!…」
 さんざん苛まれた、神経の固まり−−思わず、全神経をそこへ集中した。
 激しい痛みと性感が同時に来た。
「…ひいいっ!…」
 電動歯ブラシの動きに導かれて、私の身体の芯を電流が走った。
「…いくっ!…」
 びゅうううっ!…
 堺の顔に大量の愛液を浴びせながら、私は溜まりに溜まった官能を爆発させた。
「…いくっ…いくう…うむっ…」
 絶頂の波が何度も私を震わせ−−
 私はそのまま気絶した。

 それから、何度絶頂を繰り返しただろう。
 絶頂し、潮を吹いては半ば気絶する。それでも、バイブと捻り棒、そして電動歯ブラシに責め苛まれて、意識を取り戻す。そして次の絶頂を迎える。
 −−その連鎖の中で、10回、いや20回、昇り詰めただろうか。時折水分を補給されながらも、ついに私が力尽きて覚醒しなくなると、快楽責めはようやく終わった。
 もう、夜が明けているのだろうか−−
 いったん縄を解かれ、意識を失ったまま身体を洗われた私は、新しいガーターのストッキングを付けただけの姿で、改めて後ろ手に縛られた。
 輪姦が始まっていた−−
 55人がかり。いつ終わるとも知れない人数だ。
 体力も、悲鳴も、涙も、愛液も搾り取られて、精根尽きた私。
 そんな私に、夥しい数の男たちが、再び挑みかかってきている。
 今は同時に二人。前後から、ヴァギナとアヌスの両方に挿入されていた。
 私はもはや抵抗しない。縛られているせいもあるが、体力も、気力も失っているのだ。
 そんなふうにぐったりと力を失った私を犯すのが、彼らにとってはまた極上の快楽らしかった。
 まず私だけを死ぬほどいかせておいて、そのあと自分たちの性欲の解消に進む。それが彼らの流儀なのだ。
 こうして、おそらくは土曜いっぱい、犯されるのだろう。
 日曜は、一日休ませてもらえるのだろうか。
 堺くんだって、仕事がある。また一緒に働くのだ。
 月曜からはまた、ニュースを読まなくては−−
 スカートを履いて、脚を見せて−−北海道じゅうの男たちの性欲を刺激しながら−−
「…あっ…」
 そう思ったとき、官能が高まった気がした。
「真野アナ、どうしたんだい」
「もう死ぬほどイッてるってのに、また高まってきてるのか?」
 前後から私を挟んで犯している男たち−−
「お望みとあらば、またイカせますか…くくく」
「そのほうが犯りがいもあるってもんだ」
 後ろの男が、私の太腿を抱え上げる。膝の裏を支え、脚を割り裂く。
「おい、先に」
「よしきた」
 ズブブ…
 前の男が深々と貫いてきた。
「…あううっ…」
「おおっ…その顔、たまらねぇな…」
 仰け反り、眉をひそめる。それがエロティックだというのだろう。
「イクときはそう言うんだぞ…ほおら」
「…あぐっ!…」
 後ろの男も抽送を再開した。
「…ひっ!…いっ、いやっ…」
「なーんだ、やっぱりアナルも感じるんだな」
 前後から突き立てられて−−
「…いくっ…」
 またしても昇り詰めた。
「おおお…いいなぁ…も、もうだめだ…うおっ」
 ドピュ、ドピュ。
 私の中で欲望が爆ぜる感覚。前の男が射精に至ったのだ。
「おおっ」
 続けて後ろの男。
 彼らはみなコンドームをつけている。それは−−
 後始末が容易だということもあろうが、私を妊娠させたくはないということのようだった。たびたび私を呼び出しては陵辱を加えるつもりなのか−−
「桜子ちゃん、タフだなあ…これなら、北海道中の男にマワされてももつんじゃないか」
「くくく…週替わりで募集するか?」
「毎週100人ずつでも集めてよ…ひゃははは」
 北海道中の男に?
 毎夜、私が挑発している男たちを、募集?
 私の妄想が始まり、またしても官能は高まっていく−−

−−以上、真野がお伝えしました。良い週末をお過ごしください。
 なお、この週末、私がお相手するのはQ市とL市の男性です。
 年齢の制限はありません。会場はSBCの地下室です。
 コンドーム着用が義務づけられております。
 縄、バイブなど、小道具類の持ち込みは自由です。
 先着100名様までですので、お早めにどうぞ−−

(C) 2008 針生ひかる@昇華堂

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