魔法少女レイナ3~玲奈無残(サンプル)

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1 変身

 午前 6 時半。厳寒の街はまだ暗い。生徒会長などをしていたので早朝から動き始めるのには慣れているけれど、昨晩熱を出した身には辛い外出だった。服装をあれこれ考える余裕もなく、高校に通学する恰好--制服の上にコートとダウンジャケットを重ね着する--で出てきたのだった。
 昨夜はしっかり食事できたし、熱は下がったようだが、もちろん体調は万全ではない。そして、こんなときに限って淫毒の症状は普段より重い。
 身支度を調えている時からもういけなかった。ブラの生地に刺激されて乳首がたちまち充血した。パンストを履くときにはそれを手にした時点で早くも落ち着かず、まず右の足指に被せて足裏を通過させるとゾクゾクし、脹ら脛から膝まで繊維が這う感覚に声が漏れた。左脚ではその感覚は倍増し、さらに太腿から腰までたくし上げるときには、太腿から爪先までの性感に堪えられなくて、うずくまってしまった。
 勃起したクリトリスをパンティの生地が擦ってさらにこわばらせ、子宮のあたりがむらむらと燃える。普段なら迷わずオナニーをして鎮めるところだが、今日はそんなゆとりは無論なかった。タクシーを拾うまでの間、太腿を寒気に刺されていたせいで性感はいっそう増した。
 タクシーの中は暖かだ--
 私が辛そうな表情を見せているためだろう、運転手さんがミラーで様子を伺っている。タンポンを挿れナプキンを当ててはきたが、秘裂からは愛液が滲んでいる。そこから潮の香りがしているのではないかと心配になる。平静を装うのに苦労する。
 だが、今は淫欲の高まりに身悶えしている場合ではない。一刻も早く夏生を助けなくては--

 倉沢さんを預かっています。
 彼女を無事のまま返して欲しかったら、
 M 町 1 丁目の廃工場にひとりで来てください。
 俺の要求はきっとわかりますよね?可愛くして来て下さいね。
 警察に届けてはだめです。倉沢さんの家族に知らせてもいけません。
 従わないときは、倉沢さんの恥ずかしいところを校内にバラ撒きますので、
 そのつもりで。

 南雲慎二郎からとんでもない内容のメールが入ったのは午前 6 時。夏生が着ているブラウスやスカートは制服のそれだ。ということは、夏生は昨日帰宅途中で拉致された可能性が高い。するとすでに 12 時間以上も監禁されていることになる。廃工場の中はおそらく屋外も同然で、その酷寒の中、夏服のような恰好に剝かれて縛られていた。
 放っておけば凍え死んでしまう。だが 12 時間もの間、何もされずに放置されているとは考えにくかった。
 南雲のことだ。私に「可愛くして」来い、などと言ってくるくらいだから、要求というのは私の身体なのだ。私が逆らえないように夏生を人質に取ったのだろうが、この美少女を前にして若い男が手を出さずにいられるとは思えない。
 しかも、この縛り--
 両腕を後ろ手に縛り、乳房を上下から縄でくびり出したこの形は、ただ身体の自由を奪うためのものではない。女を性的に蹂躙しようという悪意がありありと見て取れる。携帯の小さな画面で私が見てもドキリとするくらいだから、夏生を縛りながら、そして縛り上げた夏生を前にして、手始めに夏生を犯そうと思ってもおかしくはない。「無事のまま返して欲しかったら」などと書いているが、信用できたものではない。
 もともと夏生も狙われていた、という可能性もある。夏生は可愛いから--
 写真を拡大して見ると、 1 枚目の写真ではスカートに白色の液体がこびりついている。それは状況からして南雲の精液だと思うのが自然だ。そして、 2 枚目の写真では夏生の太腿が濡れている。身動きを許されないために失禁したのか、もしかすると愛液が溢れたのかも知れない。身体を弄ばれ、性感を高められた結果だろうか--
 夏生が帰宅しないので、きっと捜索願が出ているだろう。電話してあげたいけれど、それは南雲が禁じている。今は現場へ急ぐことだ。
(…あれ…)
 2 枚目の写真を凝視するうち、気づいた。
 夏生の純白のブラウスに毒々しい緑色の液体が染みている。
 どす黒い緑色の液体。その色調やぬめり具合は、淫獣の毒液を思わせる。
(…まさか…でも…)
 そこに淫獣が?
(…あっ…)
 そこで妙な符合に気づいた。いま私が赴こうとしているのは、数日前スリアを逃がした場所に近い。いや、あの時の廃工場そのものかも知れない。
 夏生を襲っているのはスリア?--
 だとすると、なぜ南雲から呼び出しが来るの?--
 考えられるのは 2 つ。信じがたいことだが、
 南雲とスリアが手を組んでいる。
 あるいは、南雲がスリアに憑依されている。
 学校を休んでこんな計画を立てていたのか、とさっきまではショックだったが、淫獣に魂を売ったか、憑依されたのだとしたら頷ける。学校に来るどころではなくなるわけだ。
(…では…)
 これから私が対峙しなくてはならないのは南雲ではない。スリアだ。
(…ちょっと待って…)
 私が異界で「噂になっている」とスリアは言っていた。
 つまり、大勢の淫獣から興味を持たれている。陵辱の対象として--
 ならば、待ち構えているのはスリア 1 匹でなく、他にもいるのかも知れない。異界とのバイパスがある場所だ。こちらに詰めかけるのは造作もないこと。
(…エレナ?…)
 脳内で呼びかけてみても応答はない。異界へ戻ったままだ。
 ひとりで淫獣に立ち向かってはだめだと言われた。言われるまでもなく、相手が 1 匹でも私ひとりで勝てるはずがない。複数いればなおのことだ。
 だが--
 夏生が監禁され、あるいは複数の淫獣に陵辱されているかも知れないのだ。
 助けなくては。淫獣の狙いは私だ。夏生を身代わりにはできない。
 淫獣に犯されるのは、私だけで十分--
 自分に言い聞かせながら、つい、触手の群れに全身を嬲られる自分を思う。
 その感覚が呼び覚まされるのと、体内に染み込んだ淫毒が沸き立つのとが同時だった。
(…う…)
 ぎゅう、と心臓を絞られるような官能の高まり。声が出るのを必死に堪えた。
 心臓の拍動が激しくなる。子宮が疼く。体温が上がる。呼吸が苦しくなる。
 私は--
 生身の女子高生として淫獣の餌食になることに、期待を?--
(…ばか…苦しみ抜いたあげく、殺されるのよ…)
 それを考えれば、淫毒がまた煮え立つ。
 声が出てしまう--そう思ったとき、タクシーが停まった。
 料金を払って降りる。まだ暗い早朝、女子高生がこんな廃墟に何の用があるのかと思うのだろう。私の様子がおかしかったせいもあるのか、運転手さんは怪訝そうだった。
 立っているのがやっとだ。そこはやはり、スリアと戦った場所に違いなかった。
 果たして淫獣はいるのか--
 私にはそれを知る術がある。「ポケット」に淫獣センサーを納めてあるのだ。
 ポケットというのは、魔法少女のコスチュームや変身時に脱ぐ普段着などを収納しておく、空間内移動式ロッカーのようなものだ。“貴重品”には出し入れするための暗号を使うことができるようになっている。
 淫獣センサーは超のつく貴重品だった。異界では、最高位の魔法少女が発する信号をキャッチして、彼女らの拠点への自動誘導装置にもなるからだ。
 チャンネルが異なるだけで、最高位の魔法少女は淫獣と同じ種類の信号を出すという。そこが 私にはいまひとつ腑に落ちないのだが、エレナも、おそらく他の魔法少女たちも、疑問を持ったことはないらしい。
 今はその点をひとりで蒸し返している場合ではない。南雲かスリアに見られる前に、センサーを使ってみる必要があった。
 ポケットを開く暗号--
 どんな状況でも私が不自由なく使えるように、日本語文にしてあった。
「すべての魔法少女に平和を」
 そう唱えると目の前に光の点が輝き、やがて直径 10 cm ほどの球に膨らむ。そして中からコンピュータのマウスほどのサイズの黒いカプセルが現れた。
 半径 30 km くらいまでは高感度だというから、そばに淫獣がいれば即、感知するはずだった。教わったとおり左手の掌に載せ、右手でぐるりと撫でてみる。
 だが--何の反応もない。
(…そうなの?…)
 ほっとした。
 同時に、何か拍子抜けしたように身体の力が抜けた。淫欲も治まっていく。
 センサーに反応がないことを数回確認して、再び「ポケット」に納める。
 ひとまず、南雲は淫獣とは無関係のようだ。
 では--今回の行動は、南雲自身が思い詰めた上でのこと、となる。
(…こんなことになるなら…)
 南雲にもっと優しく接していればよかったのだろうか。
 執行部に入って来たころから、南雲が私を好きであるらしいことに気づいてはいた。だが私の気持ちとしては、それまでに私を好きだと言ってくれた男子たちと南雲との間に大差はなかった。彼のほうが年下だということもあって、異性としての魅力を感じなかったのだ。だから執行部の仲間以上でも以下でもない、という態度を取っていたのだけれど--
 南雲としては、相手にされていないという感覚だったのかも知れない。
 そしてあの日。私が 2 匹の淫獣に嬲られている間、南雲は告げてきた。

(俺、安部さんてほんと可愛いと思ってた。好きだったんですよ。執行部に入ったのも会長が安部さんだからだし。安部さんとやれたらいいなと思ってたけど、それ以上に、安部さんが誰かに犯られるところも見てみたかった。それも、大勢の男にマワされてね。だって、安部さんはもてるから…安部さんとやりたいって言ってるやつ、 2 年にも 1 年にも大勢いるんですよ。みんな安部さんの写真を持ってるし。そいつらにめちゃくちゃに犯されながら安部さんがだんだん感じてイッちまうところを想像して、いつもマスかいてました)

 あんなに屈折していたなんて--
 南雲が何を妄想しようと自由だし、それは私の存在が触発したことでもある。それが昂じて今回の行動に至ったとすれば、私も原因の一部には違いない。
 だからと言って、南雲の言いなりになど、なれはしないのだが--
 短い時間に南雲のことをいろいろ考えていると、
--いやあッ!--
 夏生の悲鳴が聞こえたような気がした。
 そうだった。一刻も早く夏生を助けなくては。南雲を心配するのはその後だ。
「…夏生っ!…」
 私の声が廃工場に響く。この中にいれば聞こえるはずだ。少なくとも、一緒にいるはずの南雲には。
「…南雲くんっ!…」
 その名を呼んでみたが、応答はない。
 廃工場の中は外より一段と寒い。コートの上にダウンジャケットを羽織っていても寒い。夏生はこんな所にブラウス一枚で監禁されているのだ。
 いや--もはやブラウスさえ、着ていないのかも知れない。
 私のローファーがコンクリートの床を叩く。
 もう一度夏生の名を呼ぼうと思った、そのときだ。
 何か、ぬめるものを踏んだ。
 いやな予感がした。あの秋の日、廃校舎で淫獣が分泌した毒液を踏んで転倒し、 2 人の先生に憑依した淫獣 2 匹に襲われたのだ。
 今日は転倒せずに済んだが、ローファーの爪先にこびり付いているそれは、今では確実にそれとわかる淫獣の毒液。独特の腐臭もする。
 ドクン!--
 淫獣がいる。
 なぜセンサーが感知しなかったかはともかく、近くにいる。
--きゃああッ!--
 再び夏生の悲鳴。今度はより鮮明だ。
 思わず、ヘアピン代わりに耳に挟んでいたミニチュアのロッドを手にした。
 今度は暗号は要らない。両手で握って念じると光の球が膨らんで私を包む。
 白い光の中、私の着衣が微粒子となって次々に消失していく。制服も下着も靴も--そのあと、私の裸体を戦闘服が包み始めた。
 私が単体--したがって新米だからだろうか、エレナと合体するときとは違った。ノースリーブのワンピースは若草色。肘までを包む手袋も同色。ストッキングは紺色で靴も同系色。カチューシャだけはいつもどおり黄金だ。
 エレナの言ったとおり、私が単独でも変身はできた。ただし、外見だけが魔法少女に変わっただけで、身体能力の変化は全く感じられない。それが証拠に、フルサイズになったロッドは重すぎて、とても片手では持てないのだ。まして、振り回したりはできない。
 生身の私そのもの。いわば、魔法少女のコスプレをしただけのことだ。
 反射的に変身を試みたものの、
(…こんなの、意味なかった…)
 自己嫌悪と同時に焦り、不安に苛まれる。
 こんな姿でいるところを淫獣に見つかったらどうなるか。
 私に戦闘能力があると思いこんで、魔法少女にするのと同じ攻撃を仕掛けてくるだろう。
 このままではいけない。元の制服姿に戻ろう、と思った。しかし--
 何ということだろう。変身を自力で解く方法がわからない。
 これまではエレナが合体を解除していたから、自分でしたことがないのだ。
 エレナと最後に話したときにも、本当に変身する場面が来るとはふたりとも思っていたかったので、教わることもできなかった。
 元に戻ろうと念じてみても、何も起こらない。
 なんとかしなくては。たとえ淫獣が現れなくとも、元に戻れないのは困る。
 そうしてうろたえていると--
「これはこれば、魔法少女レイナさん」
 聞き覚えのある声。そちらへ顔を向けると、南雲が立っていた。ただし--
 その身体は人間のものではなかった。

2 対峙

「よく来てくれましたね。しかも魔法少女のコスとは俺の指示どおり」
 身長およそ 5 m の、南雲の顔をした淫獣が近づいてくる。隆々とした筋肉を青黒い皮膚が覆っている。全身の瘤からは触手が自在に発射されるはずだ。前に見たスリアの身体であるのは間違いない。
「あの時は重なってたからわからなかったけど、こうして外から見ると実によく似合いますよ。可愛いし、エロチックだ。ムラムラ来るよ」
 顔だけが南雲--とは言っても、目はしばしば白眼を剥き、口は裂けて牙がはみ出している。
 魔法少女のコスプレをしただけの身としては、後退りするほかない。
「…南雲くん…一緒にいるのは、スリア?…」
「『スリア様』と呼んでもらおうか」
 南雲の顔が歪んで、見覚えのあるスリアの顔に代わった。
「…南雲くんに、憑依したのね?…」
「南雲が俺たちを呼んだようなものなんだ」
「…え…」
「お前がアトロシャとフェロシャに犯られたとき、南雲は重なってたんだってな。だから、そこに居合わせたのに、お前が悶え苦しむ様を外からは見ていない。それがつくづく残念だったようだ」
 再び南雲の顔が浮かび上がる。
「だから、もう一度淫獣を安部さんにけしかけてみたかったんだよ。淫獣を呼ぶ方法はないのか、必要なら俺が淫獣に身体を提供してもいいから、って考えてたら、スリアが来た」
「…なんてことを…」
「こいつはもともと心だけは淫獣そのものだったよ」
 再びスリアが現れる。
「だからな、人間のままお前への煩悩に苦しみ続けるより、身も心も淫獣と化して欲望を果たしたほうがマシだと考えたんだ。賢明だったんじゃないか」
「…南雲くんの人格はなくなるのでしょ。南雲くん?…それでもいいの?…」
「いいんだ」
「まあ、こいつが見たかったものを見れるまでは脳まで乗っ取りはしない」
 南雲とスリアの顔が交互に現れる。見ていると吐き気がしてくる。
「見たかったものってのが何だか、わかるよな。安部さん」
「お前が悶え苦しんで、エロ汁を噴きながらイキ狂うところだよ。けけけ」
 悪寒がして、両腕を身体に巻き付けた。いつ触手が伸びてくるとも知れない。
「ところで…と」
 南雲が言うと、その顔がややまともになり、身体も 2 m 程度に縮小した。それでも、 158 cm の私からは見上げるような大きさだ。
「体調が悪いんだそうですね。そんな恰好で寒くないですか」
 急に話題が変わった。
 魔法少女のコスチュームは寒気をある程度は遮ってくれる。だが露出している二の腕や顔は痛いほど冷たい。
「…私の体調のこと、どうして知ってるの」
「倉沢さんが話してましたよ。安部さんはいま受験前だし、体調も崩している。自分は受験は済んだし、元気だからってね」
「…だから?…」
「俺としては、最初に犯るのが倉沢さんでも安部さんでも、どちらでも良かったんだけど、倉沢さんに選ばせたんですよ。自分がこのまま生贄になるか、安部さんを呼んで代わってもらうかってね」
「いま『最初に』って言ったわね。私が来れば夏生は無事に返すはずでしょ」
 絶望しながら訊いた。きっと夏生はもう淫獣に襲われてしまっている。もともと南雲を信用などしてはいなかったが、手遅れらしい。
「彼女が自分で決めたんですよ。自分がどんなに辛くても、安部さんを絶対に呼んで欲しくないとも言った」
「私を守ろうとすれば、そう言うに決まってるじゃない」
「それがそうでもなかったんだな…くくく」
 白目を剝いたまま卑猥な笑みを浮かべる。
「ミス慈愛の誉れ高い倉沢夏生は、処女にしてレイプ願望、縛られ願望があり、輪姦願望まであった。自分で認めましたよ。美少女に生まれついた業なのか、筋金入りの淫乱だった」
「…そんな…」
 夏生ったら--以前の私と同じだったのか--
「可哀想に、自分を犯すのは人間だとばかり思っていたようでね。大勢の男にマワされるっていう受難劇のヒロインは自分だと思った」
「…夏生を大勢で…襲ったのね…」
 生身の少女が複数の淫獣に陵辱されては、命はもたない。
「くくく…そんな美味しい役どころを、よりによって親友の安部さんに持っていかれたくなかったというわけだ。願ったり叶ったりだったんですよ」
「…もう、いい…夏生はどこ?…生きてるの?…」
「生きてるも何も、お楽しみの最中でね」
 南雲に導かれてビルの奥へ入った。その広い空間には--
 緑色に輝く巨大なドーム。半径は 20 m ほど。
 中には夥しい数の淫獣と、それらに取り囲まれた夏生の姿があった。
「…なっ…夏生っ!…」
 呼んでも聞こえはしないようだった。光のドームは結界というものだろう。
 淫獣たちは結界の中にいるから、センサーでも感知できなかった--
 淫獣の巨体に前後から挟まれ、挿入されているのだろう。夏生の小さな身体が上下に激しく翻弄されている。左右の乳首が長い針に貫かれている。淫獣の指や爪に引っかかれたからか、全身は擦過傷でずたずた。しかも緑色の毒液と自分の汗や潮でぬめぬめと光っている。
「…いやあっ!…もう、もうっ…」
 悲鳴を上げながらも、全身を硬直させ絶頂を貪る夏生。
「俺を入れて 20 匹で、もう 4 巡目なんですよ」
 無茶だ--それでも、生きているの?--
「前も後ろも裂けちゃってるのに、毒液が効いて感じまくってるんです。痛くないはずないんだけど、快感が上回ってる。天性の淫乱で、“ど”の付く M ですね」
「…いくううっ!…」
 かぶりを振ると涙が散る。苦悶の極みだった夏生の表情が一瞬、恍惚に包まれる。この世のものでない快楽に正気を失っているようだ。
「さすがにもう、イクときにも潮は吹かない。一滴残らず絞り取ったからね」
 このままでは絶命するまで犯される。今も生きているのが不思議なのだ。
「…夏生を助けて…」
 今すぐ病院に運べば、一命を取り留める可能性はある。
「まあ、このくらいにしとこうかって思ってたとこですよ」
「止めるのはもちろんだけど、病院へ運んで」
「取引だな。そうしたら、どうする」
「…私がここへ来たのだから、もう条件は満たしているでしょ…」
 南雲は答えない。私にそれを言わせたいのだ。
「…私を、自由にしていいわ…」
「ほう…今度は自分の番だってことかい」
 初めは、淫獣に輪姦されて殺されるとまでは考えていなかったけれど--
「…私を犯したいのでしょ…」
 そう口にしたとたん、また淫毒が沸き立ってきた--
「…うっ、くっ!…」
 その場にしゃがみ込んでしまった。
「どうしました。具合でも悪いんですか」
「…な…なんでもない…」
「さっきまで青ざめてた顔が、赤く染まってますよ。淫獣にマワされることになって、昂奮してる?」
「…ちっ、違うわ…それより、夏生を病院へ…」
 すると--
「安部さんをここでマワすくらいじゃ、足りないな」
 予想外の答えが返ってきた。
「…どうして…」
「今度は自分がマワされたいってのは、安部さんの願望だろ」
「…そんなわけ…」
 そう言うよりも早く、淫毒がまた沸き立った。
「…あっ、うっ!…」
「ふふふ…アトロシャとフェロシャに盛られた毒液の作用か。いやらしい想像をすると煮えたぎるんだよな」
 見透かされている--
 南雲はスリアに憑依されて、淫毒の知識も持ったらしい。
「…そっ、それより、何が不足なの…」
「異界の連中が、安部さんに会いたがってるんですよ」
「…え…」
 大挙押し寄せた淫獣の群れに囲まれて怯える自分。そんな想像をすると、
「…ふう、うっ!…」
 痺れるような性感が全身を包んだ。
「これは面白い…まるで願望そのものだった、みたいな反応だな」
「…ち、違うわ…体調が悪いって、知ってるでしょ…」
 それにしても、淫毒の作用の何という凄まじさだろう。自分が陵辱される想像をしただけでこれほどまでに苦しんだことはなかった。まるで淫毒にまで意思があり、私の身体の抵抗力が万全でないところへ付け込むかのよう。
「息が荒いよ、安部さん」
「…放っておいて…」
「まあ、いい。これから安部さんには異界へ来てもらう」
「…え、えっ?…」
 異界から来るのではなかった--
「向こうで何が待っているかは追々わかる。言っておくが、楽しませてもらえると思ったら大間違いだぜ」
 ここには異界のバイパスがある。カレンが引き摺り込まれたように、私も連れ込まれるのか。
「それが倉沢夏生を助ける条件だ。まあ、覚悟しておくんだな」
 突然、足許に闇がぽっかり口を開けた。私は吸い込まれた--

(C) 2013 針生ひかる@昇華堂

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