春の贄−花の受難−

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1 甘美な時間

 シャワーがこんなに気持ちいいなんて、知らなかった−−
 このところ、帰宅の遅いお義父さんを待ちながら、お風呂に長く入る癖がついた。湯船にゆっくりつかったあと、髪を洗い、身体を洗う。その仕上げにシャワーを浴びるのだけれど、シャワーの湯を何気なしに脚に当てていたら、私の中で何かが高まってきた。
 自分の身体に、いたずらをしたい−−
 椅子に座り、膝を合わせ、その膝を中心にして、ふくらはぎから太腿まで湯を浴びせる。何度も往復させていると、止まらなくなった。
 私の脚は、思いのほか感じやすかった。声を殺すのに努力が要る。家にはだれもいないのだが、家の外にでも声が漏れてはいけない。
 いつまでも、こうしていたい−−でも−−
 それだけでは、また済まない気がし始めた。下腹の奥がむらむらと落ち着かなかった。もっと直接的で激しい刺激を、私の身体は求めていた。
 シャワーの湯は左右の太腿の合わせ目を自然と狙うようになり、やがてその間を−−秘部を舐め始める。わずかに陰毛が生え始めたそこを−−
「…うっ、くっ…」
 いつしか私は椅子を降り、床に膝立ちになる。左手はシャワーのノズルを操る。湯が噴水のように秘部を下からまとめて責め立ててくる。
 いつしか、私はある状況を頭に思い浮かべていた。
 裸にされて、仰向けに横たわる男の人の顔の上に跨らされている自分。その人の両手は私の腰のくびれのあたりをがっしりと押さえる。そして、彼の口は私のそこにむしゃぶりついてくるのだ。
 そんなことを考えてはいけないような気がしながらも、やめられなかった。なぜだか、想像するほどに下腹の奥の高まりが助長されるのだ。
 男の人の顔は具体的だったが、くるくると入れ替わった。中学校の、理科のS先生。体育のT先生。塾のM先生やU先生−−私のことを以前から意味ありげな目で見ている大人たちだ。
 下から吹き上げる湯は重力に負けて勢いが足りなかった。自然と右手が蛇口に伸び、湯勢を上げる。
「…あっ!…」
 開き始めた秘部のあわい目にまともに湯を浴びて、私は悲鳴を上げた。
 これまでも、指でそこに触れてみたことは何度もある。でも、こんな感じは初めてだ。
 そして−−お尻の穴まで感じるなんて、思いも寄らなかった。
 恥ずかしい。でも、やめられない−−
 右手は、乳房を揉んでいる。第二次性徴を経てもあまり膨らまなかった私の胸。でも、刺激すると確実に感覚は高まる。やがて乳首が固くなり、じんじんと痛いほどになる。
 そして−−
 もう一箇所、充血してこわばっているところがあった。秘部のあわい目にぽっちりと顔を覘かせている、木の芽。つまり、クリトリスという、神経の固まり−−
 そこをシャワーで狙うのは躊躇われた。どんな感覚がくるのか、怖かったのだ。
 でも、私の左手は容赦がなかった。
−−怖がらなくていいんだよ、花…
 そんな声が聞こえた気がした。
 そのとき、想像の中で、私はお義父さんの顔に跨らされていた。お義父さんのたくましい手が私の太腿をがっしりと押さえつける。舌が、唇が、私のそこをねぶってくる−−
 決して考えてはいけないことだった。でも、その想像を振り払うことはできなかった。左手はシャワーのノズルを操り、肛門から会陰、ヴァギナを経て、ついにクリトリスまで、隠微な動きで湯を往復させ始める。
 幾本もの湯の糸。その何本かが、私のクリトリスを捕らえたそのときだった。
「…いいッ!…」
 そこから電流でも流れたように私は激しく仰け反った。目の前が真っ白になり、膝立ちになっている両脚ががくがく震えた。そのままぺたんと座りこむ形に私の身体は崩れ落ちた。
(…き、気持ちいい…)
 生まれて初めて味わった感覚。
 これが「いく」という感覚にちがいなかった。
 何百メートルも全力疾走した感じ。激しい感覚に、呼吸が追いつかない。はあはあと荒く息をしながら、私は太腿にシャワーを挟んで、タイル張りの床にぐったりと横になっていた−−

「花、何か変だな。調子でも悪いのか?…」
 遅い夕食のとき、お義父さんが気遣って訊いてきた。
「顔色は悪くないけどな…むしろ、赤く染まって…熱があるのか?」
「…平気。何でもない…」
 お義父さんの顔をまともに見られなかった。何人もの男の人のあと、よりによってお義父さんに犯されている妄想で、私は生まれて初めての絶頂を経験してしまったのだ。
 なんとなく話をしたくないことが、思春期の娘にはあるのだろう−−そんな風に考えてくれているだろう。優しいお義父さん。大好きなお義父さん−−
 ごめんなさい。私、いやらしいことを考えていたの−−
「なあ花、お義父さんがいつも遅いから心細いだろう。ひとりで大丈夫か?」
 これまでに何度もくり返されてきた話。
 実のお父さんが7年前に亡くなったあと、お母さんは5年前に今のお義父さんと再婚した。私はお母さんの連れ子というやつだ。そのお母さんは、私を残して2年前に病気で亡くなった。以来、お義父さんと私は2人で暮らしてきた。血のつながりはないけれど、早いものでもう5年の付き合い。実の親子より仲がいいと近所でも評判だ。
 藤野という姓は、花という私の名前と相性がすごくいい。初めからお義父さんの娘だったみたいだと、亡くなったお母さんともよく話したっけ。
「…平気だよ。ひとりで過ごすの、嫌いじゃないし」
 ひとりでいるからできる、密やかな楽しみもある。今日はそれを知った。
 お義父さんは3度目の奥さんをもらう気はないらしい。市役所の総務の一職員だったのが市長の秘書のリーダーに抜擢されて、毎日朝から夜まで働いているし、父娘2人分の家事くらい私がこなしているから、奥さんがいなくてもあまり不自由はないらしい。
 それにお義父さん、お母さんのことを大好きだったみたい。
 そして私のことも、大好きなのかも知れない−−娘だけど、血のつながりはない−−だから、他の女の人と一緒になる気にならないのかな−−
 食事の片付けをするお義父さんを見ながら、そんなことを考えていた。食事を私が作った日は、お義父さんが片付けをする約束になっている。
 私は、見るともなしにテレビを見ている。
 さっきの、全力疾走したかのような疲れはなくなっていた。絶頂するとくたくたになってしばらく動けないのだと思っていたけれど、そうじゃなかった。意外に消耗しないものなんだ。むしろ、一度では物足りないくらい。あのまま続けていたら、あと何回かいっていたような気もする。
 続きをベッドの中でしてみよう。クリトリスを、触ってみよう。クレヴァスの中に、指を入れてみよう−−

2 煩悩

 その深夜−−花がベッドで再び自慰に耽っていたとき−−湯船に身体を横たえた藤野輝一郎は、やはり義娘を思いながら自分の一物をしごいていた。
 初めての出会いのころから、花は新しい父親である自分によくなついていた。当時は小学3年生。そのころから母親に似て聡明な印象だった。そして将来は母親以上の美貌の開花を予感させた。その花は中学2年生となり、眩しい娘に成長しつつあった。
 実の父に続けて母も亡くした悲しみは、幼い心には堪えがたい重さでのしかかっているに違いない。それを乗り越えるにはまだまだ時間が必要なはずなのに、明るく振る舞って見せる花は不憫であり、また健気だった。縁あって一緒に暮らしている自分を果報者に思う。
 母親が亡くなり、中学に進学するころ、花は輝一郎にとって義娘以上の存在になりつつあった。妻の面影を見るからではなく、花自身をひとりの女として愛するようになっていった。小柄ながら花は十分に魅力的に育ち、中学の制服がよく似合った。入学式で撮った写真が輝一郎の宝物になっていた。
 制服姿も可愛いが、このところ、義父としてはぎょっとする服装でいるのを見かける。おもに同性の友達と遊びに行ったり、塾に行ったりするときの格好だ。
 輝一郎は、花が衣服を含めて身の回りの品を不自由なく買えるように小遣いを与えている。輝一郎には何がいいのかわからないこともあって、洋服は自分で選ばせているのだ。ショートパンツが好きらしい花は、冬の寒いさ中でもお構いなしに脚を露出する。最近その脚をも演出することを憶えたようだった。紫のカラータイツや、濃紺のオーバーニーソックスがお気に入りのようだ。
 身長は148 cmしかない花だが、小柄な割に全体のバランスが良く、脚も長く見える。顔立ちも美形の部類で、幼さはまだ残るものの、十分に目立つ。そんな花が、見ようによっては挑発的とも思える格好で街を歩いているとしたらたら、なんとも危なっかしいのである。
 もっとも、花にしてみれば許容範囲内のお洒落であり、ちょっとした悪戯心の現れなのかも知れない。それも自分の素材の良さを十分に自覚してのことだろう。
 そして、そんな花に一番挑発されているのは、他ならぬ輝一郎自身なのかも知れない。
 花が成人したら、養女の縁組みを解いて妻にできるだろうか−−
 そんな儚い望みも持ってみるが、無理に違いなかった。なんといっても30歳の年の差がある。そして、自分になついているとはいえ、それは父親としての自分に違いない。輝一郎はそう思っていた。花がひとりの男として自分を受け入れるという保証は微塵もなかった。
 そんな望みに支配されるうち、花に対する愛情には劣情が入り交じった。いつしか、花の制服姿の写真で性欲を処理するのが習慣となっていた。
 そして今も、夕食時に顔を上気させていた花のことを思い、輝一郎は欲情を高めていた。
「花…ハナ可愛いよハナ…誰にも渡したくない…」
 数時間前、その湯船には花もつかっていた。花の全身を舐め、エキスを含んだ湯。それを輝一郎は手ですくい、何度も口へ運んだ。
 なんという変態だろうと自分を責めながら、やめられない。一物は完全に勃起している。
 妄想の中で、花の全身に舌を這わせる。かすかに膨らんだ乳房へ、か細い脚へ。
「花…お義父さんが気持ちよくしてやるからな…」
 花の太腿の間へと輝一郎の舌が進む。目を閉じ、そこにまだ見ぬ花の秘部を仮想して、舌を動かす。激しい感覚に花は抵抗するだろう。だが−−
 抵抗できないように、花の身体は縄で縛ってあるのだ。両手首を後ろ手に組ませ、両足首は左右に開いて、花は否応なしに自分の顔に跨る格好だ。
 やめて、お義父さん、許して−−14歳の身には過酷すぎる性感にのたうちながら、花は懇願する。
 やがて花はあえなく絶頂し、全身を痙攣させながら、エキスを溢れ出させる。それを一滴残らず飲み干す自分−−
 我慢も限界にくると、湯船から出て一物を一気にしごいた。
「…うむっ!…」
 ドピュ、ピュ。
 劣情に熱く煮えたぎる白濁が、浴室のタイルに爆ぜる。
 妄想の中で義娘を陵辱する背徳感、そして倦怠感に包まれ、輝一郎は再び湯船に横たわる。一日の疲労がどっと解放され、いつか眠りに落ちていく−−

3 利権の巣

 東海地方のL市は人口およそ40万。温暖な気候、肥沃な土壌と良港にも恵まれ農産物・海産物が豊富で、近世からは街道の要所として栄えてきた。東京と名古屋の中間に位置して第二次・第三次産業も好調だ。のどかな風土を反映してのんびりした人間が多いとされている。
 しかし、この中堅都市が最近になって大きな変貌を遂げた。
 市内の丘陵地帯で工場団地の開発が始まると同時に、ある大企業のハイテク工場の誘致に成功したのである。雇用は増え、転入してくる社員のための住宅地の建設も始まった。さらに人気上昇中のプロサッカーチームの移転が加わって、この時世には珍しく活況を呈していた。ここ数年人口は増加を続け、税収も伸びて、都市再開発が進んでいる。L市の繁華街の一画には大規模な歓楽街を立ち上げる計画が持ち上がり、土地の買収もじわじわと進められていた。
 それはL市内の景観を急激に変貌させただけでなく、土地の高騰による局地的なバブル景気は、のどかだった住民の性格も歪め始めた。土地転がしで濡れ手に粟の味を覚えるとそれに血眼になる者が増え、古来の産業で地道に稼ぐ者が激減していった。
 L市の行政が腐敗していくのにも時間はかからなかった。市長の取り巻きと副市長の一派とによる激しい利権争いが顕在化しつつあった−−

 再開発から取り残されたようにうらぶれた一角。ある雑居ビルの4階に源田の法律事務所はあった。築30年は経っている老朽ビルにはエレベータもなく、活況を呈する中心街にまだこんなビルが残っているのが不思議なほどだった。
 のどやかな春の夕方である。そのビルの階段をふうふうと喘ぎながら上ってきたのは、地元で建設会社を営む天城という。現在は3期目になる市議でもあった。天城はようやく4階まで階段を上りきると、辺りに人の目がないのを確かめ、源田の事務所の扉を開いた。中には連絡を受けていた源田がひとり、茶を入れて待っていた。
「相談ごとだって」
 源田と天城とは高校の同窓生である。昔から悪い遊びにも一緒に手を染めた仲で、お互い就職してからは飲み仲間だが、天城が市議に立候補したときから源田は知恵を貸してきた。いわばブレーンともいうべき存在だった。
「とんでもないことになったよ」
 他人の耳はないが、天城は何かを恐れるように小声で話す。
 聞けば、市長の井出からじきじきに汚職の提案を受けたという。前田土木という市の契約業者と、工場団地開発の契約を今回結ぶ際に、市への請求額を上乗せさせたらしい。その分を井出と天城で山分けしないかと言って来た。
 金の面でも派閥の点でも、井出は副市長の竹中に激しく追い上げられている。汚職の同士づくりも、次の市長選に備えての工作に違いなかった。
 天城は憔悴したかのような表情だ。もともと市長にも副市長にも借りはなく、それで派閥抗争にも巻き込まれずに済んでいたのだが、これで当事者となったばかりか汚職にも手を染める羽目になろうとしている。
 溜息をつく天城の前でじっと考え込んえでいた源田が、ようやく口を開いた。
「井出の話に乗ってみるか」
「えっ」
 天城は無難に事を済ませるための方策を練りに来たのである。源田の言葉はにわかに信じられなかった。
「もちろん、汚職の片棒を担げというのじゃない」
「何を言ってるのかわからんよ」
「つまりだ。井出に取りこまれたフリをしてみろということさ。手を組むのは副市長の竹中だ」
 井出に接近すれば汚職の証拠を握るチャンスが巡ってくるに違いない。それで竹中に恩義を売ることも可能になるというわけだった。
「それにしても、俺だけでそんなにうまく立ち回れるかね」
 不安顔の天城だが、源田の眼には確信が宿っている。
「心配するな。心当たりがある。少し時間をもらうが、任せておいてくれるか」

 桐山鉄幹の屋敷はL市の港湾を望む高台にあった。高い塀に囲まれ、木造二階建ての巨大な家屋が街全体を威圧するかのように聳えている。数千坪の敷地の周囲は深い竹林に覆われ、L市では最も目立つ建物でありながら、容易には近づけない様相を呈していた。
 今年60歳になる桐山は本名を幹夫というが、この屋敷を建てたころから鉄幹と自称していた。桐山家は代々漁師の元締めだったが、鉄幹の代からは工事現場への労働者の派遣など手広く手がけるようになっていた。それで成した財を元手に次は闇金融で荒稼ぎをし、今は不動産業で莫大な収益を上げている。L市中心街の再開発には隅々まで桐山の手が伸びていた。
 中肉中背ながら、数々の修羅場をかいくぐってきた桐山は威風堂々と精力がみなぎり、40代半ばとも見える若さだった。荒くれ者の多い“社員”たちも、桐山の前では子供同然に大人しい。
 桐山には古橋という秘書役がいる。スキンヘッドの巨漢で、秘書というよりは用心棒という風体である。その古橋に案内されて桐山の居室に通されるや、源田はぎょっとした。奥の間で妙齢の美女が後ろ手に縛られ、床に転がされて失神していたのだ。
「こっちへ来て座らんか」
 呆気にとられていた源田を桐山が呼ぶ。
「ひと汗かいたが、まだ欲しがるのでうちの若い連中に任せたら、あのざまだ」
 そう言われると、十数名の屈強な男たちが陰に引っ込んでいるのが見て取れた。
 女は、まだ乾かぬ涙に白い頬を濡らして、ぐったりとのびている。和風の美人だった。
「あの女、綾というのだが、<千鳥>の女将だよ」
 ブランデーらしき酒をふくみながら、桐山が言う。
「<千鳥>と言えば、あの由緒ある料亭の」
「市の利権に群がる連中の話は、大概は綾からわしのほうへ流れてくる。貴重な情報源だよ…ところで話とは何だ。耳寄りだと言ったな」
「左様で…昨日の夕刻、市議会の天城が私のところへ参りまして」
 幾多の危ない案件を処理してきた源田も、今回はさすがにひとりでは手に負えなかった。建設業界の人脈をバックにのし上がってきた井出市長はいまや県政界を牛耳り、暴力団との仲も公然の秘密だった。動き方を誤れば天城も源田も闇へ葬り去られかねない。
 一方、源田はまた旧知の桐山鉄幹が政界がらみの利権を狙っているのも知っていた。東海地方全域の闇社会に顔がきくという桐山を味方に付けることができれば、井出の息の根を止めることも難しくはない。蛇の道は蛇。毒には毒を。それが理に適っている。
「副市長の竹中は、井出市長の後釜に納まるつもりで子分をしていましたが、井出が居座ったまま当分引退しそうもないのに業を煮やしていますよ。この件を持ちかければ必ず乗ってきます。竹中に恩義を売っておけば、竹中を傀儡にして市政を操ることも」
 黙って聴いていた桐山がぎろりと睨んだので、源田は一瞬ひるんだ。
「面白い話だ。長期政権に腐りきった井出がついにシッポを出したというところだな。だが…」
「は」
「井出を陥れるなら、完膚無きまでにたたきのめす証拠が要るだろう。前田土木との一件だけでは退職に追い込むのがせいぜいだ。報復もあるだろう」
 考えが甘かったと悟り、源田はぎくりと息を呑んだ。
「ただし…この汚職、昨日今日始めたものでもあるまい。井出が業者と癒着して長期的に公金を横領した、動かぬ証拠が手に入ればいいわけだ」
 桐山はこの話に乗ってみる気になったようだ。
「しかし、たとえば前田土木を問い詰めたところで、何も言いますまい」
「とりあえず、副市長の竹中に会おうか。わしとあんたとで話せば、いい考えも浮かぶかも知れん」

4 弱点

 翌日の夕刻。料亭<千鳥>の離れである。源田に桐山、そして副市長の竹中が卓を囲んでいた。桐山の後方には秘書の古橋が控えている。
 もちろん、井出市長の横領の事実を知る人間を取り込み、証拠を提供させるための方策を練っているのだ。井出と業者を除けば、事実を知る者は限られている。
 酒を運んでくるのは、つい昨日、桐山邸であられもなく失神していた綾である。
「締め上げて吐かせるとすれば、やはり秘書でしょうな」
 竹中が口を開いた。
「締め上げるとは物騒ですな。傷害沙汰にでもなると面倒だ。まあ、穏便に行きましょう」
 そう言ったのは、その「締め上げ」を任されるはずの桐山だった。
「市長の秘書は?」
「何名かおりまずが、横領の手口にまで通暁している可能性があるのは、秘書室長でしょうかな。44歳になる藤野という男です」
 市政については<千鳥>の女将・綾から桐山の耳に入る情報もあるが、現場の人事については竹中が掌握している。
「なんだ、中年男ですか」
 源田が落胆ぎみに言う。妙齢の女であればと期待していたのである。
「もとは一介の職員でしたが、総務部長から能力を見込まれてのことらしい。実際、よくできる男のようです」
「秘書が男でも、その周辺に泣き所があれば、そこをつつけばいいのではないですかな。腕に物を言わせることもない」
 桐山が言う。
 つまりは、言うまでもなく、藤野輝一郎の妻なり愛人なり、大事な女を人質に取ればいいということである。藤野が吐かなければ、その眼前で陵辱してしまえばよい。
 いや−−藤野が吐こうと吐くまいと、陵辱はしてしまう魂胆だ。
 そこまで言わずとも、この連中の間では説明は無用だった。
「女房はいるのか」
「2年前に死んでいます」
「やれやれ」
 妻がいれば、獲物はその妻ということになるはずであった。
「他に女は」
「堅物のようでして、そういうのは全然」
「うーん」
「娘がいますがね…ただ、まだ中学生でして」
 それを聞いて、桐山は目をギョロリと光らせた。
 60歳になる桐山だが、女の“守備範囲”はきわめて広かった。綾が29歳。その辺りを中心に、上は40代まで、下は10代から、弱みを握った女に大抵自ら手をつけては配下の者に回してきた。一度陵辱すれば気が済むほうである。
 過去の最年少は高校2年生。債務者の娘であった。
 桐山は、自らの欲望を満たすほか、陵辱の一部始終をビデオに撮ることにもぬかりはない。この手の映像にいくらでも金を出す人種がおり、裏で流通させればそれなりの収入にもなっていた。最近は“生贄”の低年齢化が進み、大人同然の高校生などよりも、中学生や小学生の美少女の陵辱映像にとんでもない値がつくようになっていた。
「中学生も悪くないんじゃないですかな。うちにも好きそうな奴がけっこうおりますよ」
 桐山が振り返り、古橋に目配せをする。古橋もまたほくそ笑んでいる。

 翌々日、同じ<千鳥>の離れである。ただし、この日は実行部隊のみということで、副市長の竹中は外れている。源田に桐山、秘書の古橋の3名だった。
 秘書室長・藤野輝一郎の娘、藤野花について調べ上げるのに時間はかからなかった。
「藤野は2年前に死んだ妻とは再婚で、娘はその妻の連れ子です。名前は花」
 報告は古橋だ。
「ハナ…か」
「中学2年になります。写真がここに」
 藤野花は濃紺のブレザーにスカートの制服姿。紺のハイソックスに、黒のローファー。友人と一緒に学校から帰るところらしく、リラックスした笑顔が輝いている。聡明さを思わせる額と瞳の輝き。肩まである黒髪はセンス良くまとめられている。身長は150 cm にも満たないだろう。
「ああら、可愛いこと」
 酒を運んできた綾が横から割って入る。
 小柄だが美形。数年後に開くはずの美貌を内に秘めた蕾といったところだ。母がいない分、しっかり者に成長しつつあることも伺える。
「なかなかの玉じゃないか」
「将来性を感じさせますな」
 桐山と源田が口々に言う。若いというよりは幼いのだが、化粧の要らぬ輝きはこの年頃ならではだ。
「藤野も可愛がっているだろう」
 桐山が古橋に問う。
「おそらく…いちおう厳しい父親らしいですが、愛情いっぱいだという評判で」
「厳格を装いつつ、内心では溺愛しているのかも知れんな。義理の娘ということなら…」
「は」
「藤野の頭の中では一線を越えている可能性もなくはない。それがあってもなくても、人質としては十分だろう」
 桐山が目を細める。藤野輝一郎の決定的な弱みを掴んだ手応え−−
 どす黒い企みを考えついたようだ。
 この美少女を拉致して陵辱する様を見せつければ、藤野はひとたまりもないだろう。もともと市長に義理はないはずなのだ。
 さらにその一切を映像に納めておけば、ひと儲けできる。
「娘の行動を調べて、今度の週末に拉致しろ。その前に藤野も呼んでおけ」

 土曜の夕刻である。土曜いっぱい市長の外出の供をした藤野輝一郎が市庁舎のオフィスに戻ると、副市長の竹中が待ち構えていた。
「やあ、藤野さん。休日もフル回転とはご苦労さま」
「これはどうも」
 市議会での市長派と副市長派との対立はもちろん承知している。一介の市職員である自分には直接関わりのないことだが、副市長相手の立ち居振る舞いには当然気を遣う。
「折り入ってお話したいことがあるのだが、これから時間をいただけますかな」
 週末くらい義娘とゆっくり過ごしたいと願っても、外せない仕事が唐突に入るのは珍しくない。秘書室長に抜擢されて収入も上がったのは有り難かったが、因果なポストに就いたものだった。
「何でしょう」
「実は…」
 広い秘書室には他の職員の姿はない。周囲に耳がないのを確認してから、竹中が切り出す。
「前田土木に発注した開発なんだが、請求額が不当に大きいという報告が入りましてな」
 前田土木と聞いた瞬間、嫌な予感がした。契約の時期にそこの社長と市長との密談の場に自分も居合わせた。いや、居合わせたとはいっても自分は別室に待機させられていたのだが−−良からぬ相談ごとであった可能性がおおいにあった。
「これを市長に問い質す前に、場所を変えてあなたに一度帳簿など見てもらいたいのだが」
 輝一郎は、一応は市長を守る立場にある身だった。選挙を前にして、副市長としても事を穏便に済ますために自分に接触してきたのかも知れない。そう思いを巡らせた。
「…承知しました。それで、どこへ参ればよろしいので」
「下に車を待たせてあるから、乗ってください。指定の場所に向かうよう指示してある」
 急ぎの事務を片付けると、輝一郎は竹中の言う車に乗り込んだ。見慣れぬ顔の運転手が無言のまま発進する。

 その数時間後−−
 塾からの帰路、藤野花はいつものように友人らと自宅近くの公園を通り抜け、出口で友人らと別れた。その直後だった。
 物陰から現れた4名の男たち。花を取り囲むや、手早く薬を嗅がせて黒塗りのワゴンに連れ込んだ。小柄な中学生の女子ひとりに対して大人の男4名の力は圧倒的に過ぎる。悲鳴を上げる隙も与えず、藤野花の拉致はあまりにもやすやすと実行されたのだった。

5 監禁

 藤野輝一郎が案内されたのは、L市郊外にある屋敷だった。
(ここは、たしか…)
 闇金融と不動産業で財を成したという、通称・桐山鉄幹の邸宅。
 副市長の自宅にでも行くのかと予想していた輝一郎は、思わぬ展開に身構えた。
 副市長が“闇の世界”の人間と通じているとは迂闊だった。その本陣に自分は呼びつけられたということだった。ただでは済まない予感がした。
 出迎えたのは、妙齢の美女。60代だと聞く桐山の妻にしてはあまりにも若い。愛人に違いなかった。
「藤野様ですね。どうぞ、こちらへ…」
 導かれるままに歩くと、木造家屋には似つかわしくないエレベータがある。それで地下へ−−
「地下室があるのですか」
「内密のお話ということでしたので…」
 美女は言う。
(いくら内密とはいえ、物々し過ぎる)
 そもそも、数千坪の邸宅だ。庭で話したとしても外部には聞こえまい。
 少々のことでは動じない自信のある輝一郎だが、不穏な空気に緊張する。
 市長の横領について、その手口と証拠を聞き出されるのか。その上で副市長の懐に入り、市長秘書という立場を利用して暗躍しろとでも言われるのだろうか−−
 市長選挙が近い。市長の椅子なるものにそんな工作をする価値があるものだろうか。平凡な価値観しか持たない輝一郎には想像を絶した。
(いったい、何をしろというのか…)
 まさかとは思うが、返事によっては暴力をふるわれるかも知れない。
 市長の秘書をしているのは任務だからに過ぎず、それ以上でも以下でもない。市長が替わればまた一介の市職員に戻るだけである。そうすれば今の激務から解放され、義娘と過ごす時間も取れるだろう−−
 そんなことに思いを巡らせていると、桐山鉄幹と思しき人物が現れた。
「藤野さん、でしたな」
「思いがけずお招きいただきました、藤野です」
 60代とは思えない、鍛え抜かれた体躯。服を脱げば刀傷の2、3はありそうだ。殺気のようなものは感じ取れないが、ただならぬ迫力に凡人は圧倒される。
「まあ、こちらへどうぞ」
 コンクリート壁の一画に応接セットがあり、そこへ導かれた。見れば冷酒に、高価そうなつまみも置いてある。
「いかがですか。お嫌いではないでしょう」
「いえ、今日は業務として来たつもりですので、遠慮させてください。ときに、副市長はこちらへ?」
「竹中さんはいずれ来るはずですが、話は私からしようと思う」
(やはり…)
 この人物が黒幕なのだ。市長もその筋の人間と関係があり、輝一郎も接触したことがあるが、彼らよりも桐山のほうが数段上手なのが直感でわかった。
 だが、だからといってこちらからぺらぺら喋ってしまう義理はない。
「…お待ちください」
 少なくとも、副市長と話すために来たのであって、副市長をすっ飛ばしてその黒幕と直接やりとりする筋はない。
「私は、副市長が話したいというので参りました。生憎ですが、副市長が現れるまでは待たせていただきましょう」
 桐山がふふ、とほくそ笑んだのが不気味だった。
「では、ともかく一献いかがです」
 傍らに先だっての美女が座ってきた。グラスを用意しようとしている。
「申し訳ありませんが、どうぞお構いなく」
「あまり突っ張らないほうがよろしいぞ」
「突っ張るも何も…」
 桐山の秘書であろうか、中肉中背の桐山とは対照的なスキンヘッドの巨漢が近寄り、桐山に耳打ちした。
「わかった」
 何事かが始まる気配だった。どうやら、副市長が到着したというのではなさそうだった。
 不意に、腕を取られた。先ほどの巨漢だ。
「…ぐおっ…」
 両腕を背中にねじり上げられて、輝一郎は呻いた。
「何をするっ…」
 傍らの美女がすかさず縄を渡す。巨漢が輝一郎の腕を縛り上げていく。
「これから面白いものをお見せする。大人しくしていてもらうためだ。悪く思うな」
「何ですと?…」
 すでに自由を失った上半身でもがきながら、輝一郎は叫ぶ。
「どうぞ、お楽になさって…」
 美女が輝一郎のネクタイを緩めた。
「そろそろいいようだな。ご覧いただこうか」
 スキンヘッドの巨漢−−古橋がさっとカーテンを開けると、一面ガラス張りになっている。そして、そこに−−
 輝一郎にとって信じられない光景が飛び込んできた。
「…はっ、花っ!…」
 愛娘が両手首を後ろ手に縛られ、もがきながら2名の男に引き立てられてきたのだ。
−−いやッ!…何するんですっ…放してっ!…
 マイクが仕掛けてあるのだろう、花の悲鳴が聞こえてくる。
「マジックミラーになっていて、向こうの様子は丸見え、丸聞こえだ。向こうからこちらの様子はわからない。安心して鑑賞できる」
「何をするつもりだっ!…」
「さあ、何が始まるのか。それは見てのお楽しみ」
 輝一郎がガラスに突進しかけたのを、古橋が足払いにしする。やはり後ろ手に縛られている輝一郎はそのまま転倒、ぐうと呻く。はずみで肩をどうにかしたようだった。
「…よっ、よせ。やめてくれっ」
「お嬢さんが何をされるのか、おわかりになるんですかな」
 花はジャケットを脱がされていた。クリーム色のブラウスに濃紺のショートパンツ、そして刺激的な紫のオーバーニーソックス。小柄なわりにすらりと長い脚の、そこだけはくっきりと露出している太腿の上部はむっちりと白く、エロティックに演出されている。
(花、お前はよりによって、またそんな挑発的な服装をして…)
 ガラスの向こうには20代後半から30代と思しき男達がひしめいている。その数は、10人や20人ではない。
「お嬢さんの写真を見て志願してきた好き者ばかり。25人いるはずだ」
 桐山が言う。
「しっ…志願って何だ」
「お嬢さんに大サービスをな」
「お嬢さん、処女ですわよね…処女のまま、女の悦びを教えてさしあげるの」
 美女−−綾が口を開いた。
「何だって」
「お義父様にも、いい思いをしていただくわ」
 綾の指が、ワイシャツの上から輝一郎の胸をなぞり、ズボンの上から股間に触れてくる。桐山に仕込まれているのか、男の官能を心得たタッチだった。

6 生贄

 怖くて、歯の根が合わなかった。
 公園の脇で襲われ、眠らされている間に連れ込まれた。ここがどこなのか、わかるはずもない。きっと、音が外に漏れない場所−−どこかの地下−−
 そこに私は閉じこめられてしまった。
 何が始まるのか、考えたくなかったけれど、わかる気がした。
 後ろ手に縛られていた縄をいったん解かれ、改めて両手首を前で合わせて縛られた。それが天井にあった滑車にかけられ、私の身体がぐんと吊されたところだった。
 目の前には、大勢の男の人。やくざなのか、凄みのある顔つき。金髪の人、顔のあちこちにピアスをしてるいる人、腕にタトゥが入っている人−−上半身は裸だったり、Tシャツ1枚着ているだけだったり。それが私を取り囲んで、舌なめずりをしているのだ。
 いったい、何人いるの−−
 この全員が、私を?−−
 まさか…私、まだ、経験もないのに−−
「お嬢ちゃん、14歳だって?…可愛いんだなあ…」
 おとがいに手をかけられて、上を向かされた。私は女の子の中でも小さいほうだ。爪先が辛うじて床に着く高さに吊られているが、男の人たちの顔はみな、はるか上方にある。
「お嬢ちゃんみたいな可愛い子が、そんないやらしい服を着てたら、危ないんだよ…」
 はっ、と思い出した。ブラウスはともかく、ショートパンツにオーバーニーソックス。最近お気に入りの格好だったが、脚を強調し、太腿だけは生でさらしている。こんな小柄な私でも男性の視線を集めるはずだった。それを承知で着ていたのは悪戯心もあってのことだが、こんな状況に置かれると心細いことこの上ない。
 恥ずかしくて、脚を擦り合わせ、身体をよじると−−
 両足首を左右から掴まれた。
「…あっ!…」
 見れば、左右の足首には縄がかけられていく。靴は脱がされていた。
「…何…なにをするんですっ!?…」
「いいことさ」
 私の周囲に、男の人たちが集まってくる。正面の壁は大きな鏡だ。そこに、手首と足首を縛られ、「人」の字に吊された私が映っている。男の人たちはみな私の背後や左右に陣取っているので、私の全身が鏡に映っている。
 は、恥ずかしい−−
 正視に堪えられず俯いていると、両脚に人の指を感じた。目を開けると−−
 私の左右の脚にそれぞれ7、8人が群がっていた。
「…あっ、いやっ!…」
 カラータイツやオーバーニーソックスで露出してきたけれど、脚を触られるのはもちろん初めてだ。それも、こんな大勢−−
「…いやあっ!…」
 恐怖はかき消えていた。脚を襲ってくる感覚に、叫ばずにいられなかった。
 足首をむんずと掴まれ、ふくらはぎをさわさわとさすられ、また揉まれる。ソックスの生地の上からだが、それがかえって感覚を微妙にしているようだった。爪先立ちになってこらえている足指は、その間に指を入れられてくすぐられる。
「…いっ…いやっ…ああっ!…」
 太腿にも当然のように指は這う。内側にも、外側にも、いったい何本の指があるのだろう。膝の上で5本の指を開閉してくすぐってくる人もいる。
 ショートパンツとソックスの間の太腿の、生の部分には唇がいくつも張り付いている。ふくらはぎや膝にも舌や歯が這い始めた−−
 シャワーの湯で遊んでいたときとは比較にならない感覚。足首を縛られているうえ、大勢に群がられていては、身悶えることもままならない。
 ショートパンツのボタンが外される−−
「…や、やめてっ…いや…」
「いやじゃないだろう。ここを早くどうにかしてほしいんだろ」
 ジョキリ。
 私のお気に入りのショートパンツ−−ハサミが入って、無惨にも剥ぎ取られてしまった。
「…あっ、あうっ!…」
 パンティの上から、指が秘部をなぞってきた。
「おやおや…なんだかここが湿ってるぜ」
「脚を責められて、感じちゃっているのかな」
「…そっ…そんな…」
「まだ自分の身体のこと、よくわからないだろう。どうされると気持ちいいのか、おじさんたちが教えてやるよ。たっぷりとな」
 そう言われる間にも脚への責めは続いている。
「…うううっ!…」
 不意に乳房を揉まれた。背後から大きな手が伸びてきて、左右の乳房を掴む。
「可愛いオッパイだねえ…」
「オッパイ揉まれるのも、初めてなんだろう?」
 もちろんだ。
「…あっ、うっ…」
 乱暴に揉まれると、息が苦しい。
 ジョキリ。
 今度はブラウスだった。やがて私はブラとパンティ、ソックスだけの半裸にされてしまった。その全貌が正面の鏡に映し出されている−−
「それじゃ、オッパイから見せてもらおうな」
 ブラの中央にひんやりとした金属の感覚。
 無情にもハサミが入り、左右の乳房がぱっ…と現れた。小さな私の乳房−−
「可愛いオッパイじゃないか」
 左右の乳房のすぐ前に、それぞれ男の人の顔があった。
 左右ともぱっくりと咥えられた。
「…うううーっ!…」
 激しい感覚に仰け反る。だが、乳房だけでなく、背中といわず、脇腹といわず、男の人がむしゃぶりついてきて、上半身も身動き取れなくなった。
「…いいいっ!…」
 乳首を舌で転がされたかと思うと、軽く噛まれた。
 腋の下に舌が来て、チロチロとくすぐってくる。
 脚への責めも、ずっと続いている。
「…やめてっ…、もう、やめてっ!…」
「やめるわけないだろう。次はいよいよワレメちゃんだよ」
 何を言われたのか、わかった。金属の冷たい感覚が、下腹に来た。
 ジョキリ。パンティにハサミが入り−−
 それは、するりと抜き取られた。
「…ああ…」
「ほほう」
 見られている。自分でも、まだよく見たことのない秘部を−−
 大勢の人に−−
「少しだが、もう生え始めてるじゃないか」
「…いやあ…」
「ここはどうなってるのかな」
 そこへ指がきた。1本だけだが、中に入ってきた。
「…うあっ!…」
 痛みはなかった−−だが、そのとき−−
 ぽたり…
 体内から何か滴り落ちたようだった。
「おお、もう溢れちゃってるじゃないか」
「何だと…まだ子どものくせに、愛液が洪水か」
「これだけ全身を可愛がられたら、無理もないがな」
 恥ずかしさにかぶりを振る私。
 あっ、あっ、と悲鳴にもならない声を上げて、涙で顔をぐしょぐしょにして、縛られた身体をくねらせる。あまりの感覚に、びくっ、びくっと全身が強ばる。
「花ちゃんはビンカンだねえ…」
 私のうなじにべっちょりと唇を押しつけている人が、今度は耳たぶを噛みながら囁く。
 私の名前は、もう知られているのだ−−なぜ−−
「我慢しているごぼうびに、もっといいことをしてあげよう」
 太腿をぐいと開かれる感覚に、私はそこを見た。
(挿れられる?!…)
 そうではなかった。太腿の間に男の人の顔があり、私の秘部へ近づいてくるのだ。そこを凝視しながら、舌なめずりをする。口許が唾液でたっぷりと潤っている。
「…何…何をするの…」
「言っただろう。すごくいいことさ…くくく」
 その顔が、私のそこに沈んで−−

「は、花ぁ…」
 マジックミラーの反対側で、輝一郎もまた、身悶えていた。
 手首と足首を縛られたうえ、20数人のケダモノに群がられて全身を責められている少女。その少女は無論まだ処女で、おのれが愛情と劣情の対象にしてきた娘だった。
 ケダモノたちの現在の目的は明らかだった。綾が言ったとおり、花に処女のまま女の悦びを味わわせようというのだ。すでに愛液は滴り落ちるほど溢れている。そこへ−−
 いまや、クンニリングスが始まってしまった。
 荒々しい手が花の腰をがっしりと捕らえ、鼻が、唇が、花の柔肉に密着する。
−−はうっ…あっ!…ああっ!…
 激しい感覚に、花の全身が硬直する。男がまず軽くキスをしてから、舌先でクレヴァスをなぞり、滴る愛液をすくい取り、舐め上げる。続けて、花びらに自分の唇をぺちょっと覆い被せる。
−−うううッ…いやっ!…
−−いやじゃないだろう。
−−これから女の子の悦びを教えてもらうんだよ。
 幼い乳房を弄びつつ、うなじに舌を這わせつつ、男たちが言う。女の悦びといっても花にはまだわかるまい。いまのところ、ひたすら辛いだけだ。全身汗まみれである。
−−ひイ…いっ…あううッ!…
 花の額に脂汗が浮かんでいる。初めてのクンニリングスは、快楽を通り越した拷問のような性感なのに違いない。悶え苦しもうにも、全身にケダモノが群がり、花の身体の各部を押さえつけながら、相変わらず性感帯を貪っている。
 ぴちゃぴちゃ…と、舌遣いの音が露骨に聞こえてくる。
 ヴァギナから肛門へ、ときに内腿へと舌を這わせながら、男は花をゆっくりと追いつめてゆく。
−−ここで固くしこっているのは何だい。
 クリトリス。もちろん、花に答えさせるためではない。周囲の男たち、そしてマジックミラーを隔てた桐山ほか一同にに伝えるためだ。
 男が舌先を尖らせてその周囲を刺激すると、
−−いイイッ!…
 花の上半身が大きくバウンドする。構わず、下からこすり上げるように舐める。
 花の太腿を、液体がとめどもなく伝い落ちている。男の顎からも滴り落ちている。量からして、それは男の唾液や汗ではありえなかった。花の秘部から溢れる愛液だった。
 ねっとりと雫をつくって、床を濡らす夥しい量の愛液−−
 花の苦しみがいかほどかを物語るに十分だった。
−−いたいぃっ!…
 突然、花がかっと目を開き、のけぞった。涙が宙に散る。
「クリトリスを噛まれたのかしらね」
 輝一郎の股間を弄びながら、綾が言う。
「やめてくれ、花はまだ…子どもだ」
「子どもなものですか…あんなによがっちゃって」
「むしろ、これで止められたらお嬢さんも困るだろう」
−−うっ!…あっ、そ、そこはいやっ!…
 クンニリングスの反対側−−尻の間にひとり、顔を埋めた。
「ついにアナル舐めまで始まったぞ」
−−いい、いやっ!…あっ、うっ!…
「あんな声を聞かされてると、とても14歳とは思えないわ。ね…お義父さま」
(まずい…)
 愛娘が悶え苦しむ姿を見せつけられながら、堪えきれずに勃起してしまう男の一物。
 美少女ひとりが凶暴なケダモノの群れに貪られる構図は、花が小柄なだけに一層無惨で、嗜虐心をそそるものだった。これで性欲を刺激されない男はいない。
「お義父さまも、大変なことになってるのじゃなくて?」
 カチャカチャと音がして、綾が輝一郎のズボンのベルトを緩める。次いでジッパーを下ろすと、ブリーフのスリットからいきり立ったペニスを取り出した。
「よっ…よせっ…」
 それは早くもカウパー氏腺液をにじませている。
「ふはははは!…こんな年端もいかぬ少女が犯されているのを見て興奮しているのか!…しかも、血縁はなくとも自分の娘なのだろう」
「ケダモノの証拠よねえ」
 綾がさわさわとペニスを撫で、睾丸を甘く揉んでくる。
「うっ…」
「あら、だらしなく感じちゃうのね…花ちゃんは、もっと酷いことをされながら、あんなに頑張ってるのに…ふふふ」
「娘が性感責めに堪えきれず絶頂するのと、貴様が射精するのと、どちらが早いか」
 桐山の言葉に続けて、綾がペニスをしごき始めた。
「よせっ…やめてくれっ」
「もしもお前が先に射精してしまうようなことがあれば、娘の処女はいただく。ここにいる全員でな」
「ばっ、馬鹿な…花はまだ中2だぞ」
 花のすすり泣く声のトーンが変わってきた。これまで誰にも触れられたことのなかった乳房を、太腿を、手管に長けた男たちに蹂躙され、さらに秘部を前後から舐め尽くされているのだ。性感をいやが上にも高められるのは無理もない。
 このままでは、本当に絶頂させられる。まだ、14歳だというのに−−
−−あっ、うっ!…痛いっ!…
 またクリトリスを噛まれたのだろうか。
 いたいけな少女には、相手が一人でも耐え難い苦しみであろう。それが20人がかり、しかも縄で自由を奪われてのことなのだ。
(過酷すぎる…)
−−あう!…あっ、ぐっ!…だめ…
−−何がだめなんだい?
−−言ってごらん。
−−あう…お、おしっこが…
−−それはね、たぶんおしっこじゃないんだよ。出しちゃっていいからね。
−−いやあ…
 花の脚がぴくぴくと痙攣を起こす。
「やめてくれぇ…」
 しばらく食い入るように凝視していたが、輝一郎も限界だった。愛する花が、全身を貪られて絶頂を迎えようとしている。見ているだけでも昂奮は抑えきれないが、今は自分も射精させられようとしているのだった。
「花ちゃんより先にイッてはだめよ。そうしたら花ちゃん、25人に輪姦されちゃうのよ。花ちゃんはもうイク寸前よ。ほおら我慢して」
 もともと花を縛って犯す妄想を抱いていた輝一郎だ。残酷な目に遭わせるのは、少なくとも妄想レベルでは望むところだった。それがいま現実になり、さらに信じられない人数で花を輪姦すると聞かされて、輝一郎の性欲は沸騰しつつあった。
「…やっ…やめてくれ…」
 綾がヌチャヌチャとペニスをしごく。右手が本体をしごき、左手の指は亀頭をつまみながら、そのエラに絶妙なタッチで刺激を与えてくる。眼前で美少女が犯されていなくとも、その技巧だけであっけなく射精に導かれそうだ。もはや輝一郎には、花が絶頂する瞬間まで持ちこたえる自信はなかった。
−−だめっ…もう、だめっ!…お義父さんっ!
 自分に助けを求める花。その切ない声は、いまわのきわが近いことを告げていた−−
 それが、あっけなくも輝一郎の堪え性を失わせた。
「うああ」
 ドピュ、ドピュ、ドピュ。精液が盛大に噴き上がった。その直後だった。
−−いやああっ!…
 びゅう!びゅっ!びゅっ!
 激しい悲鳴とともに、花が悦びの潮を吹き上げたのだった。
 花はそのまま気絶した。

7 訊問

 ぐったりと気を失っている花。吊られていた縄がいったん解かれ、改めて両手を後ろ手に縛られようとしている。全裸に剥かれているが、オーバーニーソックスだけは脱がされずにいるのが、かえってエロチックだ。
「このまま始めさせますか」
 古橋が桐山に問う。花の絶頂よりも輝一郎がわずかに早く射精してしまった。約束では花の処女を奪うことになっている。
「そうだな…いや」
 輝一郎は、やはり後ろ手に縛られたまま、放心したように這いつくばっていた。彼の一物から床にぶちまけられた白濁は、慣れた手つきで綾が拭い取っている。
「犯ってしまえばそれきりのことになる。あれだけ責められたからとはいえ、14歳の身であの絶頂ぶりはなかなか素質があるようだ。処女のまま、もう少しじっくり責めさせてみるか」
「承知しました」
 古橋が傍らの電話機でミラーの向こうに伝える。男たちは互いに目配せしあうと、意識のない花をベッドの上に運んだ。その周囲に、またしてもわらわらと男たちが群がっていく。
「やめてくれ…もう、放してやってくれ」
 無駄とは知りながら、輝一郎が言う。
「ふふふ…ケダモノの分際で何を言っておる。これからが面白いのだ」
 たったいま、気絶するほど激しく絶頂させられたばかりだというのに、まだ快楽責めを続けようという魂胆らしい。成熟した女ならいざ知らず、14歳の少女がそんな責めに堪えられるはずがない。
「冗談じゃない、花が死んでしまう…頼むから許してくれ」
「平気よ。あんなに小柄だけど、花ちゃん、けっこうタフなんじゃないかしらね」
 綾がなだめるように言う。
 ベッドの上では、ひとりが仰向けに横になっている。その上に−−花が跨らされた。
(そ、それは…)
 自分が妄想の中で花を犯していた、まさにその通りの構図が眼前に実現して、輝一郎は驚くと同時に思わず歯ぎしりした。
(それは…俺が…)
 俺がしたかったんだ−−

 鋭い感覚に、私は意識を取り戻した。
「…あ…」
 その感覚は秘部からのものだった。私は−−男の人の顔の上に、跨らされていた。
「…いやっ…」
「目が覚めたか」
 シャワーを使って初めて絶頂を経験したあの日以来、たびたび想像しては昂奮を高めていた、まさにその姿勢を−−私はとらされていた。
 しかも、ご丁寧に両手首は後ろ手に縛られている。
 そして−−想像の中では相手はひとりずつだったが−−いま、ここにはたぶん20人を越える、大勢の人がいるのだった。
「またオツユが垂れ始めてきたぜ」
「…いイッ!…」
 舌先でクレヴァスをなぞり上げられた。びくりと身体を浮き上がらせたが、すぐに引き戻された。ごつい手が私の腰をとらえる。ソックスだけは履かされている脚の、膝を、ふくらはぎを、足首を、何本もの手が押さえつけ、先と同じようにさすってくる。
 クレヴァスを中心に、肛門からクリトリスまで、舌先がちろちろと往復する。
「…うっ…ヒッ…いやあっ!…」
 押さえつけられた脚がぴくぴくと震える。
 上半身も、また放っておかれはしなかった。乳房にも、背中にも、うなじにも、指が、舌が、まとわりついてきた。吊られていたときと同じ−−いや、男の人の唇の上に秘部をもろに晒し、舐められ放題になっているだけ、先ほどよりも辛い。
「ここがまだコチコチになってるじゃないか。いけない子だな」
 男の人はそう言って、クリトリスの先端に歯を当ててきた。そして−−
 歯で、何かしてきた。
「…ひい!…」
 クリトリスが、外気にさらされる感覚。神経の固まりが剥き出しにされたようで、心細い。いや−−怖い−−
「クリちゃんの皮が剥けたぜ」
 男の人は、指で器用にそこを押さえながら言った。
「身体に似合わず、ぽっちりと大きめのクリトリスだな」
「…こっ…こわい…」
 それが皮に包まれていることを、知らなかった。自分でもそこをよく見たことはないのだから。
 皮を剥かれたあとは、いったいどうなるのだろう−−
 何かが起こる予感に、私は怯えた。それは、すぐに始まった。
「…いいいッ!…」
 剥き出しになったクリトリスに直接歯が当てられ、その歯が−−噛んできた。
「…いたッ…いっ…痛いッ!…」
「いまに良くなるから」
 その微妙な力加減が、私を追い詰めてくる。
 そこを噛み切られはしまいかと、怯える私。その心配はないようだったが、歯が動くたびに、その激しい感覚と恐怖に私は仰け反った。
「…ひいいっ…」
 あまりの感覚に、不自由な体でのたうつ私。クリトリスはますます充血していくようだ。
「…いやッ!…痛いのっ…ゆるしてっ…」
「そう言いながら、顔が赤くなってきてるじゃないか。乳首もコチコチだ」
 クリトリスを噛む責めと交互に、クレヴァスや肛門を舌がなぞってくる。
 私の中で、また高まってくるものがあった。
「…ひい…いッ!…いや…あ…」
 かぶりを振る私。秘部への辛い責めに堪える間も、全身への責めは続いている。
 そして−−
 クリトリスを甘く噛んでいたその歯が、今度はクリトリスの軸方向に動き始めた。
 しゃくしゃく。しゃくしゃく…
「…ひッ、いやッ…あっ…やめてっ…」
 激しい痛みを甘美な感覚が包み込んで、私を追い詰めてくる。
「またいくのかい」
「…だめッ…またっ…また出ちゃう…」
「いくんだろう。『いく』っていってごらん。自分で言えるまで、止めてもらえないよ」
 身体は硬直するのが自分でもわかった。
「…いやあ…あっ!…あぁいくッ…いくッ!…」
 びゅうっ!びゅう!びゅっ!
 2度目だというのに、またしても大量の液体をしぶかせて、私は達した。
 何百メートルもの距離を、全力で走ったような苦しさ。
 酸素を求めて、必死に呼吸する私−−
「今のようになるのを『いく』というんだよ。出たのはオシッコじゃない。花はいくときに潮を吹くようだな」
 私の耳を噛んでいる男の人が言う。
「…う、うそ…潮なんて…」
 私を跨らせている男の人は、私がしぶかせた液体にまみれたままの顔を再び沈める。
「…ひっ…い、いや…もう、いやあ…」
「まだまだ、いいことをしてもらうんだ」
 唇がクレヴァスにぺちゃっと張り付き、液体を舐め取っている。二度目の絶頂のあとも、性感は治まらない。
 むしろ−−ますます高まっていくような−−
「…あぐ…やっ!…いやっ!…」
「きれいにしてもらってるんだろう」
「まだまだ、何度でもいくんだよ…ひひひ」
 不意に、肛門に指を感じた。
「…うっ…」
 その指は、何かを塗り込めてくるようだ。
「…そっ…そこはいや…」
 不自由な上半身をねじって、その手のほうを見た。むろん、見えはしない。
「花はここも感じるんだろう」
 吊られていたときは、前後から舐められた。今度は何をされるのだろう。
「見てみな」
 目の前に、得体の知れない器具。直径数ミリから十数ミリといった小球が、10個ほども連なっている。
「これを、お嬢ちゃんのアナルに挿れるからな」
 アナル−−たしか、肛門のことだ−−
「ローションをたっぷり塗ったから、スムーズに入るはずだぜ」
「…いっ…いや、やめてぇ…うっ!…」
 最初の小球が入ってきた。
「気持ちよくしてやるから」
 ずぶっ…
 小球が、ひとつずつ入ってくる。私の直腸に−−
「…あっ…や、やめてっ…」
 痛みはない。だが、そこに外から何かが入ってくるという経験はなかった。あるとすれば、熱を出した時の座薬くらい。
「…いっ、イイッ!…いやっ!…」
 小球は、いくつか入ったあと、今度は逆に引きずり出される。直腸の内壁を引きずり出されるようなその動きが、肛門に切ない感覚を与えてきた。ぶるぶると全身が震えた。
「花はこれも始めてなんだろう。それにしちゃ、感じすぎだぜ」
「まるで、これまでもひとりで楽しんでたみたいだな」
 シャワーでのオナニーのこと?−−
「花はオナニーをしてるんだろ」
「…そっ…そんなことっ!…」
 私の恥ずかしい秘密を知られたような気がして、思わず叫んだ。だが−−
「大当たりだったようだな」
 しまった−−必死に否定すれば、そのことを認めたようなものだった。
「花は14歳・処女にして、もうオナニーをしまくっていると」
「アナルもいじって楽しんでたというのかね」
「…ちっ!…ちが…」
 いけない−−また、大きな声で−−
「これも図星だ」
 全身の性感帯を責められながら、恥ずかしい秘密を知られていく私−−
「恥ずかしがることはない。お前がその歳ですでに相当の好き者だとわかれば、腕によりをかけて料理してやるまでよ」
 アヌスの小球がまた入ってくる。
「…うあっ…」
 そして、再び引きずり出される。その繰り返し。
 秘部のクレヴァスやクリトリスへの責めも休みなく続いている。
 もちろん、脚や乳房にも−−指が、舌が、唇が這いずり回って−−
 どこをどうされているのか、もうわからなかった。
「…いやっ!…だめっ、またっ…」
「またいくのか?…『いく』って言うんだぞ」
 間もなく、私はまたしても追い詰められて−−
 目の前が真っ白になった。
「…だ、だめッ…いく…いくっ!…」
 そう叫ぶと、がっくりと崩れ落ちた。

 男たちは、花の太腿の間に代わる代わる滑り込んでは秘部を貪り、花の鳴き声と体力・気力を搾り取った。20人もの男たちに全身を貪られ、アヌスへの小球の抽送と、技巧を尽くしたクンニリングスを受け続けて、花は何度も精を放った。
 さすがに液体をしぶかせることはなくなったが、絶頂の回数はすでに10回を越えているはずだった。紫のオーバーニーソックスが花の汗と男たちの汗、花のしぶかせた愛液で、じっとりと湿っていた。シーツもまた同様にぐしょ濡れだった。花は疲労困憊し、荒い息を吐いていた。
「頼む…頼むから、もう許してやってくれ」
 マジックミラーの反対側で、輝一郎が懇願する。この快楽地獄から一刻も早く花を解放するため、桐山の質問にはすべて答えなくてはならなかった。
 市長の汚職の相手の名。密談の日時や場所。輝一郎は密談に数回同行しており、そのすべては手帳に控えてあった。そして−−輝一郎は過去にやはり数回、かなりの額の金を市長から預かり、市長自身の銀行口座に振り込む作業までさせられていた。文字通り几帳面な輝一郎はその日付や金額までも記録している。質問の最後には、
「もう、これに全部書いてあるから、見てくれ」
 そう言って、市長の汚職の証拠がぎっしり詰まった手帳を手渡すことになったのだった。
「初めからこれを見せればいいものを」
 ミラーの向こうで何度も精を放つ美少女に視線を送りながら、桐山が言う。
「14歳の処女に快楽責めはどうかと思ったが、どうして大当たりだったな。いいビデオをが撮れたはずだ…間違いなく、いい値がつくだろう」
「何だって…」
 思えば、陵辱のシーンをビデオに撮るくらいのことはしているはずだった。
「こういう映像には、いくらでも金を出すやつがいるんだよ…ふふふ」
 とうとう精根尽きたのか、花は全身への酷い責めに反応しなくなった。半ば失神した状態で、ベッドに横たえられる。
「さて」
 桐山が古橋に目配せする。
「そろそろご対面といくか」
 古橋が壁の隅でスイッチらしきものを操作すると−−マジックミラーが上方に移動し始めた。見物席にいた桐山、古橋、綾、そして輝一郎は、花と25人のケダモノに合流する。

8 生き地獄

 何の音だろう−−
 電動音に続けて、重い物が動く震動。横たわって目を閉じていた私は、抱き起こされてその音の方を見た。
 一面が鏡だった、その壁がなくなっていた。そして、信じられないものを見てしまった−−
「…いやああっ!…」
 顔を背けながら、思わず叫んだ。
 お義父さん−−どうして?
「…花…」
 まさかと思ったが、そこにいたのはやはりお義父さんだった。
「…いや、見ないでっ!…」
 裸にされて、縛られて−−犯されている自分の姿。お義父さんにだけは、見られたくなかった。
「お義父さんはずっと見ていたんだよ。鏡の向こうでな」
 お義父さんもまた、縛られていた。その縄尻を捕らえている人−−眼光の鋭い、威圧感のある男性が、そう言った。
 マジックミラー。そうに違いなかった。
 私がここに連れて来られてから、服を剥ぎ取られ、全身を責められて−−
 絶頂させられた−−10回も−−
 その一部始終を、見られていた。お義父さんに−−
 でも、どうして?−−
「まあ、わけは後でゆっくりわかってもらうとして、そろそろ始めるとするか」
 始める−−
 この期に及んで何が始まるのか、咄嗟にはわからなかった。でも、すぐに気づいた。
 私は、レイプされるのだ。
 こんな大勢に−−
 肩をつかまれ、押し倒された。
「…い、いやっ!…」
「あんなに楽しんでおきながら、何を言っておる」
 お義父さんを捕まえていた人が、近づいてきた。私は肩を押さえられ、別の手に左右の足首をつかまれて、脚を開かされた。
「待ってくれ。頼む、やめてくれ。花はまだ幼いんだ」
 お義父さんの声。
「あれだけ絶頂して潮まで吹く女の、どこが幼いものか…なあ」
 好色そうな目で睨まれた。見れば、お義父さんよりずっと年長のようだ。でも、老人という表現は当たらない。年齢に似合わないたくましさは妖怪のようだ。
「…ひ…」
 着物を脱ぐと、その股間にいきり立つものが現れた。
 物心ついてから初めて見る、男性の性器。
 あんなに大きくて、グロテスクなものなのか−−
 あんなものが、私の中に?−−
「…い、いやっ…そんなの…」
 入るはずがない。そう思った。
 先ほどからの責めのおかげで、私のそこは十分にぬめりを帯びている。だが、そんなものをやすやすと受け入れられるはずがなかった。オナニーのときに自分の指を1本入れるだけでも勇気が要り、実際、その第1関節を入れてみただけで怖くてやめてしまった。
「…あっ…」
 そこへ不意に液体を注がれ、ひやりとした感覚に仰け反った。ローション。
「滑りを好くしておけば、スムーズにいくはずだ。もちろん、痛いだろうがな。この世のものとは思えない痛みだろうよ」
 私の両脚の間に、その人は入ってきた。腰をつかまれた。
 周囲から私の肩や足首を押さえつける手に力が入る。逃げられない−−
 くくく…と、押し殺した笑い声が周囲から漏れて、私の恐怖を煽った。
「…助けてっ!…お義父さんっ…」
 無駄とは知りながら、叫ばずにはいられなかった。
「花っ!…」
 男性器が、私のそこを貫こうと、狙いを定めている。
 もう見ていられなかった。あまりの恐怖に、私は仰け反った。
「…う…」
 私の秘部のクレヴァスに、熱い肉塊が触れる感触。見なくとも、体積の大きさがわかった。
 来る−−
 すい…と、押し広げられる感覚。
 同時に、凄まじい痛みがそこを襲った。
「…きゃあああっ!…」
 さらに、それは容赦なく貫いてきた。
「…ああっ!…いた、痛いっ!…」
 痛い−−ナイフで刺されるようだと聞いたことがあるけれど−−
 とても、そんな生やさしいものではない。そこを引きちぎられるような−−ナイフで切り裂かれる、といったほうが正確だ。
「ふふ…小さな身体で、ちゃんと受け入れたな。どうだ、突き通された気分は」
 これで動かれたら、死ぬ−−
 恐怖に私の身体は固まっていた。
「お前たち、しっかり押さえておれ」
 私を押さえつけている手にいっそう力が入る。
 と−−恐れたとおり、私の中のそれは前後に動き始めた。
「…あああっ!…」
「狭いのぉ…」
 初めはゆっくりだったその運動は、やがて速度を増す。
「…いたっ!…痛いっ!…やめてぇっ!…」
 私の下腹に、奇怪な生き物が侵入して暴れ回る。そんな錯覚が起こった。
「痛がってはおるが、だんだんわしの物を締め付けて来おるわい…可愛いぞ」
 私がどんなに苦しんでも、動きは止まらない。冷酷そのものだ。
 その男も額に汗を浮かべている。それが私の顔の上に滴り落ちている。
「…やめてぇ…」
 叫ぶ気力もなくなり、泣きながら訴えるくらいしかできなくなった。
 すごく長い時間、そうやって犯されていた気がする−−
「そろそろ出すぞ」
 出すというのは−−精液を−−
「…だめっ…出さないでっ…」
「わしのは孕まないようになっておる。心配するな」
 どういうことなのかわからなかったけれど−−抵抗のしようもなかった。
「むっ…」
 私の中で、それは爆ぜた−−彼の精液が注ぎ込まれたのだ−−
「…いやあ…」
 すっかり力を失って、ただすすり泣くだけの私。
「処女にしては心地良かった。楽しませてもらったぞ…」
 それが抜き取られるときにも、激痛が走った。

 それでは済まなかった−−
 すぐに次が来たのだ。
 今度はスキンヘッドの巨体だった。その性器は、先の人のものをひと回りもふた回りも凌いでいる。赤黒く光り、血管が浮き出て、脈打っている。人間の身体の一部だとはとうてい思えないものだった。
「…む、無理っ…たすけ…」
 一度引き裂かれた傷口が、さらに切り裂かれる−−
 私を押さえつける手が増えたようだった。その力の入りようで、男の人たちが残酷な昂奮を覚えているのがなんとなくわかった。
 14歳の中学生を集団でレイプする−−残酷で、異常な昂奮−−
 巨体がのしかかってきた。私の顔の上には彼の胸があった。たくましい胸板だった。小さな私とは、とうてい釣り合わない巨体。
「…いやっ!…」
 ずい、と一気に貫かれた。
「…きゃああっ!…ああっ!…」
 気が遠くなった。死んだほうがましった−−

 2人目から後は、みな私の胸や顔に射精をしていった。私を妊娠させる気はないらしい。その代わり、私の上半身は生臭い白濁にまみれていった。
 私は、あまりの痛みに半ば気絶したような状態で、代わる代わる犯されていった。お義父さんがそこにいたことは、すっかり忘れていた。
 どのくらい時間が経ったのだろう−−
 途中で、止血のためといってクリームを塗られた。不思議なことに、その後は痛みがあまり気にならなくなった。鎮痛の作用もあったのだろうか。いずれにせよ、私が20人以上もの男性に連続で犯されながら、痛みでショック死したり気が狂ったりしなかったのは、そのクリームのおかげだった。
 それどころか−−繰り返し挿入されていくうち、私は傷ついたはずのヴァギナでも感じるようになってしまっていた。それはどうやらクリームに何か特別な薬が入っていたためらしい。薄れる意識の中で「催淫クリーム」という言葉が聞こえてきたのだ。
 それで−−私は精根尽きていたはずだったのに−−たった数時間前まで処女だったのに−−輪姦されながら、またしても絶頂させられていた。何度も、何度も−−

 再び気を失っていた私は、抱き起こされて目を覚ました。
「花ちゃん、いよいよ今日のラストだよ」
 まだあるのか−−とうに絶望したあとのことで、抵抗もしなかったが−−
 そのラストがお義父さんだったのには、さすがに驚いた。
「花…すまない…こんな酷い目に遭わせてしまって…」
 お義父さんは後ろ手に縛られたまま、椅子に座らされていた。
 下半身は−−裸だった。
 そして、これまでの男の人と同じく、お義父さんのそれもまた勃起していた。
 お義父さんまで−−私のことを−−
「お義父さんまで、お嬢ちゃんを犯したいらしい。酷いよな」
「花…許してくれ…」
 お義父さんの男性器は、たくましくそびえ立っている。
 お義父さん−−私が犯されているのを見て−−昂奮したのね−−
 やっぱり、私のことを好きだったんだ−−
 やはり後ろ手に縛られている私は、両脚を抱きかかえられ、その上に跨らされた。
「…うあっ…」
 私の中に、お義父さんのそれが突き刺さった。痛みは感じなかった。
「うう、花っ…」
「血縁はないとはいえ、父と娘の相姦図だ。きっちり撮らせてもらうからな」
 撮るって−−
 ビデオに撮られていたんだ−−このシーンも−−
 座らされているお義父さんの上で、私は上下に揺すられる。
「は、花っ…お義父さんはもう、だめだ…」
 お義父さんが私の中で爆ぜようとしている−−
「だらしないお義父さんねぇ…でも、中で出しちゃだめよね」
 そこにいるただひとりの女性が言った。不意に私の身体がお義父さんから離されると、私はお義父さんの前に跪かされた。
 そして、髪をつかまれて−−お義父さんのそれを、口にふくまされた。
「おっ…は、花っ!…」
 ドピュ、ピュ。
 お義父さんのそれが弾けて、私の喉まで精液が噴き上げられた−−

エピローグ

 市長の密談の現場に副市長の竹中と桐山が踏み込んだのは、その1週間後だった。
 大胆にも市長室で業者と密談し、取引が終了した直後である。同席していた天城は小型の録音機を背広に忍ばせ、会話の一部始終を録音していた。狼狽する市長に、竹中はさらに輝一郎の手帳を見せつけて引導を渡した。
 市長が逮捕されるまでに時間はかからなかった。次の市長選挙までの当座は、副市長の竹中が市長を代行する。
 その竹中を囲むゴルフの場に、天城と源田の姿もあった。
「あっけないものでしたな」
「藤野輝一郎の手帳がやはり大きかった」
 ひそやかに言葉を交わす。
「その藤野、どうしていますか」
 天城が竹中に訊く。
「私の秘書をやってもらっていますよ」
「藤野を側に置いておくと、何かと便利でしょうからな…そうそう、藤野花のビデオはご覧になりましたか」
 問題の映像は数十枚のDVDに焼かれ、その一部は桐山から源田へ、天城へ、竹中へ、すでに行き渡っていた。
「ええ…14歳だということだが、幼いながら大した美貌だ。大勢を相手に存在感十分でしたな。素質があるんじゃないですか」
 顔をにやつかせながら竹中が言う。
「今後を儚んで自殺を図られたりするとまずいので、学校や塾との往復から食事まで、綾…<千鳥>の女将が一日中面倒を見ているそうですよ。今では落ち着いて、すっかり気を許しているようです。桐山氏の奴隷という境遇が一致しているせいかも知れません」
 源田が説明する。
「女どうし、一緒に風呂に入ったり、ベッドを共にしたりして、綾があっちのほうもいろいろ教えているらしい」
「母親代わりというわけか。藤野は?」
「娘と交わってしまった以上、気まずくて顔を合わせられないらしい。いちおう仕事はしていますが、惚けたようになっていますよ」
 天城が答える。
「今度、会ってみますか」
 しばらく置いて、源田が竹中に問う。
「あの娘に?…会うとは?」
「傷が癒えたころに、桐山邸でまた可愛がることになっているそうで…」
「そうですか。それはぜひ。私、ファンになりましたよ。あ、いや…」
 竹中が思案顔になる。
「面が割れてはまずいか」
「その点はご心配なく。参加者全員、面が割れてはまずい者ばかりなので、仮面をしてやるんですわ」
「それなら安心ですな」
「みんな目当てはあの娘を犯すことですから。横に誰がいるかなど、お構いなしですよ」
「それもそうだ」
「ビデオを見た連中の問い合わせが殺到しているようでしてね…」
 源田は好色そうな、かつ残酷な薄笑いを浮かべている。
「アナルのほうはまだ未開発ですからな。今度はそっちの処女をいただくことになるでしょう…人数も増えるようです。どうやら50人は下らないらしい」

(C) 2008 針生ひかる@昇華堂

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